第9話 世界の成り立ち③

第9話 世界の成り立ち③


「順番が逆になってしまったが、本来の順を追って説明しよう。君の世界の常識とかけ離れていると思う。出会った時、年齢を聞いたが、それは事実を受け入れられる柔軟性があるかどうかを確かめたくてね。過去にも異世界からのジャンパー(跳躍者)が居た。ジャンパーは珍しいものだが、災害に巻き込まれることによっても発生する。主に魔力が絡んでいてね、この場合は魔力災害による遭難者の扱いとなる。一定の年齢を超えると異世界の事実を精神的に受け入れられないこともあるし、異世界の魔力に適合できないこともある。前者の場合は精神を病むし、後者であれば病気になり最悪は死に至る。」


「僕は適合できているということですか?」


「そうなるね。というか君はこの世界、我々は『イース』と呼んでいるが、そう、このイースの生まれだ。」


??何を言っている。僕は東京生まれの都会っ子だぞ。幼少期の記憶もある。


「昨日だったか、様々なゲームをしてもらったが、あれはいわゆる君の肉体的な診断をおこなったんだ。そこで君はイースで出生していることが判明した。」


「いや僕は生粋の東京人なのですが・・・」


「経緯はわからないが、何らかの意図があって、生まれて間もなく君が住んでいた星へジャンプしたんだろう。ちなみに我々は君たちの星のことを『アルス』と呼んでいる。昨日のゲームでは君の魔力の波長を測定するものも含まれていてね。それがイースのものと合致した。星によってこの波長は異なるので、間違いないよ。・・・君はこの星に来て、それまでの違和感が解消された感覚はなかったかい?」


「あ、ありましたよ。活力に満ち溢れているような感覚。僕はズレと呼んでいましたが、それが消えた感じはしました。」


「ゴブリンを倒せたのがその証拠だね。おそらくアルスに居た頃の君では死んでいた。」


「・・・・・」


「アルスやイースのことを話したが、星々とこの世界についてもう少し話をしよう。」

「パラレルワールドって聞いたことあるかい?」


(なにかのアニメであったな)


「はい、聞いたことはあります。平行世界でしたっけ?」


「そう、平行世界のことを指している。実際は7つの世界が存在している。」


「7つ?」


「君が元居た世界が一つ。そして今いる世界がまた一つ。他にも5つの世界が存在する。」


「世界には名前が付いていてね。君の元居た世界はアルス、今いる世界はイースとなる。」


「パラレルワールドはそれぞれが似た世界だが所々が異なる。また7つの世界は円形に位置しており、対局の世界とは一番その性質が異なる。ちなみにアルスとイースは隣に位置し、最も近しい性質を持っていると言える。」


「私が『ジャンパー』と言ったのを覚えているかい?」


「はい、別名:跳躍者ですね。。」


「ジャンパーというのはこのパラレルワールドを行き交うことのできる能力者のこと言う。」


「実際に君はアルスから来たのだから、ジャンパーであることは間違いない。」


(僕がジャンパー??)


「しかし、通常は『転移星石』と呼ばれる物体が必要となるが、君の場合それを有していない。」


「ここで重要なのが、転移星石を持たずして転移できることは『特異点』という存在を示唆している。」


そういえば、ジャイが特異点って言ってたか。

「本来7つの世界には同一人物が3人居る。言い換えれば、私もアリスも、他の6つの世界にいずれかに別の人間として3人存在している。しかし特異点と呼ばれる者は7つの世界にたった1人の存在だ。」


「ジャンパーは何度か見たことがあるが、特異点は非常に珍しい。私もこれまで出会ったことがなかった。私の・・・そう、師匠である前任の研究者はその分野に精通しててね。記録をこの3日間あさっていたのさ。」


「実はこの7つの世界は破滅の危機に瀕している。」


「破滅の危機とは?」


「君が倒したあの緑の生き物。俗称でゴブリンと呼ばれる異形のものだが、あのような類のものが世界に出没し、世界を壊しはじめているんだ。それだけではなく、異世界からの侵略者も存在する。」


「我々はそれらを排除し、世界の均衡を保つため生まれた組織に所属している。」


「転移星石というのはとても貴重な魔石で通常では手に入らない。しかも使用回数にも制限がある。だから簡単に何度も異世界を行き交うことはできないんだ。しかし・・・」


(あーあ、また自慢話が始まるよ)


「しかーーーし!!私は造り上げた!!このメビウスを!!そして、君も見ただろう!!メビウスの中心にあるあの転移路を!!あれはメビウスの輪と繋がる道なんだよ!!そしてそこを滑走する時空間列車!!あのデザイン僕が1週間かけて徹夜でデザインしたんだよ!!もうその時の興奮と臭さは尋常じゃなかったね!!ガハハハッ!!なんたって、時空を切り裂くデザインだからね、そんじょそこらの構造物とは違う!!秀逸なのさ!!渾身の力作!!だってね、素材からして違うのさ、一級品の魔石をふんだんに先頭へ搭載し滑走する。その姿まさに稲妻さ!!」


「あの、スミス様・・・」


「あー、いやいやすまんね。つい興奮してね。そうそう、・・・なんだっけ?」


「世界の破滅がなんかとか・・・・」


「あーあ!!そうそれ!!えーと、つまり僕らが世界の秩序とバランスを保つ役割を担ってるってわけさ!!はあ、はあ、ちょっと涼んでくるわー」


「はあーーーー」

あからさまにため息をつくアリス。


「ったく、せっかくまともに話していると思ったのに。・・・申し訳ありません。ここからは私が説明させて頂きます。」


「先ほど話に出てきた魔石ですが、レイ様も既にご覧になっていらっしゃいますよ。そちらをご覧ください。」


アリスはラボにある宝石を指さした。


「あれらは魔石の原石になります。あなたの居たアルスではごく微量にしか存在しませんが、他の世界ではこれらの魔石が大量に存在します。また生物はその魔石の影響を受け、魔法を発現することができます。」


「こんな風に」


(!!!)


するとアリスの指先に水玉が出現した。

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