第7話 世界の成り立ち①


2日目は施設の外に出て車のような乗り物の車窓から街並みを見学した。

ちょっとした事件に巻き込まれたが、アリスが上手く解決してくれたので、ここでは良しとしよう。


3日目はメビウスの中にあるゲームセンターのようなアミューズメント施設でひたすら様々なゲームをやらされた。時折着用しているスーツの例の緑のラインが発効しているようだった。アリスは傍らで僕のゲームプレイを凝視していた。


ゲームの種類は様々で、シューティングゲーム、パンチングマシーン、コイン落とし、RPG、イライラ電流棒?のようなものまで。元の世界でも存在していたゲームに類似していた。

3日目の午前中、あっこの世界でも朝昼晩、午前、正午、午後の概念はほぼ同じようだ。このゲームは3日目の午前中に行われたが、思った以上の疲労度で、その後夕方頃までは自室にて例の椅子で回復&午睡に励んだ。かなりこの世界にも慣れてきた感覚がある。


元の世界と大きく違う点はやはり『魔力』だ。魔力はあらゆる物に活用されている。火力、風力、原子力、元の世界での動力はこの世界では動力源ではなく、魔力こそ唯一無二の動力として活用されている。魔力とは何かをアリスに聞いてみたが、理解に苦しんだ。この世界においては、水や空気と同じように自然に存在するものらしく、説明すること自体が困難な様子だった。そして、どうやらその魔力は僕自身にも備わっているらしい。



そうして、3日間はあっという間に過ぎた。



「それでは、先生、いえ、スミス様のラボへ行きましょう。」

メビウス内の光景にも徐々に慣れてきた。ある程度道の検討も着くようになった。自室への帰路も最近では一人だけだ。

今歩いているこの通路も前にも一度歩いたので不安などはもはやない。

長く伸びる白い通路を進むとスミスのラボの前に到着した。

壁が一部消失し入口ができる。この仕組みも発現者であるアリスの魔力が動力源となり、壁が特定の場所に転移し、動力が切れると元の場所に戻る仕組みのようだ。同じような構造物で、一時的に飛散して再構築されるタイプも存在するのだという。



「いや~~~、もう3日経ったのか??早いねぇ。」

清潔感ゼロ、清涼感ゼロ、女子の天敵、の雰囲気が漂っている。スミスの体臭だろうか、無臭空間のはずが・・・・ひどい匂いだ。


「先生、いえ、スミス様、お風呂入られましたか?」

「え?、風呂?入るわけないでしょう?時間なんていくらあっても足りないじゃない?」

「レイ様、ちょっと失礼を」

そう言って、スミスの耳を引っ張り、ラボから追い出してどこかへ連れて行った。


(また一人か・・・前回は一人きりでえらい目にあったからな。流石にあのゴブリンは片付けられているのか)

ラボには生き物の類は一切なくなっていた。


この3日間で得た知識をもって、ラボ内に置かれている様々なものを見てみると、改めて気づきが多かった。マザーズの団員と接触したことが契機となったのか魔力の波動を感じられるようになった。魔石などは特に顕著に発せられている。ピリピリとした肌の感覚、神経に刺激が伝わるような感覚、空気感といってもいい、なかなか形容し難いが。





30分くらい経ったろうか


「いや~、失礼失礼。研究に夢中になるといつもこうだよ。飲まず食わず、風呂入らずなもので」

シャワーでも浴びたのか、きれいな身なりになって帰ってきた。しかしよほど没頭していたのか目がくぼみ頬がこけている。


「君はこの3日間アリスとともに様々な物を見てきたはずだ。アリスには重要な部分、これは君という人間に未知の側面があったからだが、口出ししないように命令していたので、革新的な部分の予備知識はほぼないだろう。ん~そうだね・・・君の感想を聞かせて欲しい。」


(感想?)


「・・・・僕がもと居た世界とは違う異世界に居るようです。基本的な部分は似通っていますが、例えば構造物の類や、それになによりも魔力が存在しているというところが、大きく異なっています。最近ではこの魔力を感じ取れる感覚が備わってきているようです。」


「ふむ。魔力を感じ取れるようになったか、か。私やアリスも魔法が当然扱えるわけだが、同じように感じ取れるかい?」


「そうですね・・・・。あまり感じ取れませんね。あ、でも・・・集中すると感じられますね。大きな波のように打ち寄せてきます。」


眼を閉じて、感覚を研ぎ澄ますようにすると、感じ取れるものがある。一見表面は冷たい殻のようだがその奥に胎動する声明のような躍動を。


スミスとアリスは顔を見合わせた。お互い共通認識があったようだ。


「まず何を話そうか。君自身が聞きたいことは多いと思うが、私もアリスも触れなくてはならい事柄があってね。それを先に話そうか、むしろ我々にとってはこちらの方が重要だからね。」


『なんのことだろうか?』


「君には見えないのだろうが、私やアリスには見えるんだ。」


「見えるって何がですか?」


「君の背後にいる天使だよ。」


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