第22話

 翌日、寺院の一室を臨時の作戦本部として開設。さっそく、作戦会議となった。

 寺院側はタケトとナタリア、スチュワートが出席。王国側はフィリシア、ラング宰相、エドワース副団長、そして、聖女エリーネが顔をそろえている。


「――それでタケト、昨日の話についてくわしく教えてくれる?」


 昨日の話――晩餐会でタケトが言った、「パイロットが乗っていなければ、AFはただのガラクタ」のことだ。


「巨神もそうだけど、敵のゴーレムは操縦者パイロットが搭乗して動かしている。だからパイロットが搭乗していない時を狙うんだ」


 出席したメンバーはむずかしい顔をして互いの顔を見合う。


「言っていることはわかったけど、具体的にはどうやって?」 

「敵のベースキャンプを狙うんだ」


 敵のAFは常にパイロットが搭乗しているわけではない。戦線にベースキャンプを作り、作戦実行中以外は、そこで待機している。


「つまり、ってことね」

 フィリシアがバッサリ言うので、タケトは苦笑いする。(まあ、そうなんだけど……)


「しかし、そんなまどろっこしいことをしなくても、赤いゴーレムで敵の基地を襲えばイイのでは?」

 そう言ったのはラングという王国宰相の男性だった。


「いや、この作戦に巨神を使いません」

「えっ? どうして?」


 タケトはこう説明する。

「AF――巨神は大きすぎるから、隠すことができない。当然、巨神が向かっていることを早い段階で敵に覚られる。それでは、敵に守りを固められてしまう」


 当然、相手もAFを準備して待ち構えるから、パイロットが搭乗していないAFという最大の弱点を狙うことはできない。そうなってしまうと、戦闘は拡大し被害は大きくなる。


 そもそも王国の領土。できれば、最小限の被害で奪い返したい。


「たしかに、そのとおりね」

 戦闘が激しくなれば、一般市民にも犠牲者が出るだろう。フィリシアもそれは避けたいと言う。


「――それに、巨神はマナ切れを起こすと動かなくなる」

 たった十分でマナ切れを起こす巨神では、そもそも長距離を移動することは不可能だ。


「巨神で敵陣に攻め込む作戦は現実的ではない――ということね」


 ため息をつくフィリシアに、「だけど、対人戦なら強力な攻撃魔法を扱う、この世界の人のほうが分がある」とタケトは断言する。


 相手にAFを動かす時間を与える間もなくベースキャンプを制圧する。この作戦のキモはそこにあるという。


「――ということで、とにかく情報がほしい」

 敵がどこにベースキャンプを張っているか?

 敷地はどのような配置になっているか?

 一日の行動は?


「そういった情報をできるだけ正確に、多く集めたい。殿下の配下にそういったことができる人はいかせんか?」


「フィリシアでいいわ」

「――えっ?」


「私、殿下とから王女とか言われるの好きじゃないの。まあ、それはともかく、わかったわ、エドワース、騎士団の中から人選してもらえない?」

「かしこまりました」


 エドワースという金髪長髪、どっから見てもイケメンという若者がフィリシアの前でひざまずき頭を垂れる。


「え、えーと、フィリシアさん。それじゃ具体的に入手してほしい情報についてですが――」

「あー、そういうのはエドワースと直接話をして。私は興味ないから」


「――えっ?」

 いや、興味があるとか、ないとかの話ではないのだけど……


「それよりも――」

 赤い髪をなびかせて、フィリシアはタケトに向かって歩いてきた。


「――えっ?」

 長いまつ毛がほんの数十センチほどまで近づくと、こう言ってきた。


「私に、ゴーレムの操り方を教えて!」


「――へっ?」


「私も、ゴーレムを操りたい!」

 キラキラした瞳がより見開く。


「い、いや、だけど、ゴーレム――巨神は一体しかないから――」


「あのゴーレムは巨神の遺跡から出てきたのでしょ? なら、きっと、他にもたくさんのゴーレムがこの大陸に眠っているはずよ!」

「――えっ?」


 以前、ナタリアも同じことを言っていたが、巨神の姿をした遺跡は各地にあるらしい。コルネイ王国内にも多く見つかっているそうだ。


「王都、コルネードの近くにも巨神の山があるわ。きっと、そこにもゴーレムが眠っているはずよ」

 彼女は、それを目覚めさせ、戦力にしたいと言う。


「――わかった。それじゃ、交換条件としよう。ボクも教えてほしいことがある」

「教えてほしいこと? なにそれ?」


「乗馬を教えてほしいんだ」

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