第21話

「ところで――」

 静粛な中、フィリシアがそう声を出した。


「タケトはどうやって、あのゴーレムを操れるようになったの?」

「――えっ?」


 AFの操縦方法と同じだった――


 そう言いかけたのだが、タケトは寸前で押し留める。

(そんなことを言ったら、地球国家連合との関係を疑われる)


 自分は前の世界で地球国家連合と敵対していた――そう説明しても、素直に信じてもらえるとは思えない。

 敵のスパイと勘違いされ、拘束されるのがオチだ。


(拘束だったら、まだイイ。いきなり殺されるかも)


 フィリシアは親兄弟を地球国家連合に殺されている。当然、恨みは底知れない。

(なにせ、生身の攻撃でAFの装甲にキズを付けるほどのバケモノだぞ。AFに乗っていなければ、正直、この世界の人間に勝てる気がしない……)


 別の世界からやって来たと説明する?

 いや、そんな都合のイイ話を信じるとは思えない。


 いったい、どう説明すればイイ?


「どうした? タケト?」

 黙り込んでしまった相手に対して、不審そうな表情で見ている。

「え、えーと……」

 どうする? どうやってごまかす⁉


「タケト様は、神より巨神の操り方を教えてもらったのです」

「――へっ?」

 タケトのとなりにいたナタリアが、そう答えた。


「ほう、そうなのか?」

「えっ? あ、はい! そうです」


 そうなのかぁ⁉ そんな説明で納得するのかぁ⁉


「神より教えてもらったぁ?」

 フィリシアの顔が怖い。直視できない。


「なるほど、そういうことだったのか! さすが、軍神ね!」

「――へっ?」


 信じてもらえた――のかぁ?


「そ、それはそうと、フィリシアさんもスゴいですよね? あのAFの装甲にキズを付けてしまうなんて」

 とにかく、話題を変える。


「えーえふ?」

 しまった――

「い、いえ、ゴーレムです! あの堅牢けんろうなゴーレムを剣でダメージを与えるなんて――」


 フィリシアは「ああ……」とつぶやいて――


「あれは、王族に伝わる勇者のスキルよ。聖剣にマナを充填じゅうてんし、それを一気に敵へたたきつける奥技なの」

「ゆうしゃ? おうぎ?」


 またファンタジーな言葉が出てきたと考える。


「しかし、それでもあのゴーレムは倒せない。やはり、ゴーレムを倒すためには、ゴーレムしかないのね」

 フィリシアは悔しそうな顔をした。


「――いえ、そんなことはありません」

 タケトがそう返答すると、全員が彼を見た。


「それは、本当なのか?」

 フィリシアのとなりにいた男性――たしか、ラング宰相とか言っていた――が驚いた表情でそう確認するので、タケトはうなずいた。


「AF……ゴーレムには致命的な欠点があるのです」

 欠点という言葉に、全員が反応する。


「それは⁉」


「ゴーレムは操縦者パイロットが乗っていなければダダのガラクタ――そういうことです」

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