第8話
タケトはナタリアの「自分たちを救ってほしい」という願いに応えられないと言った。
その言葉に、ナタリアだけでなく近くにいた聖職者の男性たちも動揺する。
「どうしてです⁉ タケト様ほどのチカラがあれば、私たちの願いも受け入れられるはずです!」
並々ならぬ思いで懇願するナタリアだが、タケトは頭を横に振るだけだった。
「キミたちがどれだけ窮地に立たされているのかはわかっているつもりだよ。でも、やはりそれはキミたちの問題で、ボクの問題じゃない」
「そ、そんな……でも、先ほどは戦ってくれたじゃないですか⁉」
タケトは「それは……」と、一度言葉を詰まらせたあと――
「それは、敵が突然襲ってきたから、応戦しただけ。本来、ボクに戦う理由はない」
タケトは学徒兵として戦場に出た。だが、あれは宇宙移民が地球国家連合の圧政と重税に苦しんでいたから。そこから抜け出したいという思いからだった。
しかし、今回は違う。確かに『敵』は自分を襲ってきた。それは自分がこの世界の人間だと勘違いしたからだろう。地球人だから襲ってきたわけはない。そして、タケト自身も彼らと戦う必然性はないのだ。
そんな相手に、命をかけて戦えない——
「で、でも――」
悲痛なまでに彼女は食い下がる。
「でも、タケト様は巨神を乗りこなせます。私たちはそれができません」
「だから、ボクがそれを教えるよ」
「――えっ?」
別に自分でなければ、彼女たちの言う『巨神』を操縦できないわけではないはず。自分ができるのは、それをこの世界の人に教えることだけ。「アナタたちの敵と戦うのは、アナタたちの中から選んでほしい――」そう、タケトは説明した。
「し、しかし——もし、私たちの中から巨神を操れる者が現れなかったら――?」
「ごめん。そこまではボクも責任持てない」
「――なっ!」
目を見開き、タケトを見るナタリア。絶望感を隠し切れない。
さすがに、そんな顔をされると罪悪感にかられてしまうのだが、自分は間違っていないとあらためて思いなおす。
「キ、キサマ! これほどナタリア様がお願いしているのに、なぜわからぬのか!」
ナタリアの後ろにいた男――たしかスチュワートと言った――がいきなり怒鳴って来たので、タケトも面食らう。
「いや、そのう……」
しかし、ナタリアが彼を制止した。
「スチュワートさん、やめましょう。タケト様の言う通りです。これは私たちの問題なのでした。それを
ナタリアはスチュワートという男に、タケトから巨神の操縦を教えてもらう者の人選をお願いする。男はまだ納得のいかないという表情を見せながらも、「――わかりました」と口にした。
「それではタケト様、食事が終わりましたら、お風呂にお入りください」
「――えっ? お風呂?」
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