第7話
この世界のことを話してほしい――
ナタリアは少し
「ここはガルパという大陸にあります。大陸は二つの大国と、いくつかの小国から成り立っていました」
二つの大国。そのひとつは大陸中央に位置するコルネイ王国。そして、もう一つは大陸西側一帯を支配していたビザン帝国だった。
その二国は毎年のように交戦していたらしい。
「二国とも強力な騎士団と魔導士を
――えっ? 今、なんて言った?
「ちょ、ちょっと待って! 魔導士って、魔法使いのこと?」
タケトは身を乗り出し、そうたずねる。
ナタリアは少し意表を突かれたような、ヘンな表情を見せるのだが、気を取りなおし「はい」と応えた。
「魔導士が参戦することは、めずらしいことでもないと思うのですが――」
彼女は、魔法が戦争で使われることに驚いているのかと勘違いしたらしい。もちろん、タケトが慌てた理由は別の理由だ。
「やっぱり、この世界には魔法があるんだ」
ナタリアは目をパチクリする。
「タケト様がいらっしゃった世界には、魔法がなかったのですか?」
タケトが「うん」と応えると、逆にナタリアがビックリする。
「魔法がなくて、どうやって生活していたのですか?」
この世界は魔法が重要な位置を占めているようで、魔法のない生活なんて考えられないらしい。
タケトは「魔法がないぶん、科学がとても発達していて、人々の生活を支えていた」と説明したのだが、彼女にはどうもピンとこないようだ。まあ、それは折々説明することにしようと考える。
脱線してしまったので、話を戻す。
「二カ月前、大陸西のビザン帝国内に謎の軍勢が突如現れました。彼らは巨大なゴーレム兵器でたくさんの町を
「――ゴーレム?」
ナタリアは「先ほどタケト様が戦っていた相手です」と説明する。
(ああ、なるほど……ゴーレムね)と納得した。
「一カ月ほどで帝国の領土半分を支配すると、彼らは帝都を攻撃。帝都が陥落したあとは、数日で帝都は滅亡しました」
大国が一カ月ほどで滅亡するほどの戦力を有する謎の軍勢。大陸中がその報に恐怖したのは、想像に
「そして、謎の軍は大陸中央のコルネイ王国にも攻め込んできました。王国軍も激しく抵抗しましたが、やはり、ゴーレムの破壊力は凄まじく、二週間ほどで王都近くまで占領すると、今度は王都を焼き尽くしました」
そして数日前から、この近くまで『謎の軍勢』が姿を見せるようになり――
「ついに本日――それからは、タケト様の知っているとおりです」
タケトは「はあ……」と気の抜けた返事をした。
「だけど……その……魔法とかがあるのなら、それで対抗できなかったの?」
「もちろん、二国とも騎士団や魔導士が持てるチカラを全て振り絞って対抗しました。それでも、あの巨大なゴーレムには歯が立たなかったようです」
魔法にどんなモノがあるのか、タケトはまだ理解していない。ただ、もしファンタジーで良く表現されている火属性などの物理的な魔法攻撃が主であれば、よっぽどの大火力でないとAFの装甲にダメージを与えることはできないだろう。
それにしても、あの機体――ナタリアが『ゴーレム』と称した、あの強大兵器。あれは自分の知っている、地球国家連合主力AFの特徴に酷似していた。それは偶然なのだろうか……
タケトが黙り込んでしまうので、ナタリアは「なにか、気になりましたか?」と声をかけてきた。
「え? あ、うん、ありがとう。状況はだいたい、わかったと思う」
タケトがそう伝えると、ナタリアは「でしたら」と続けて――
「私は神に仕える身。なので、このカラダをタケト様に
「――えっ?」
タケトは赤面する。
「ちょ、ちょっと、急に何を言い出すの⁉」
「ですが、それ以外のことはなんでもいたします」
「――えっ?」
「私以外も、この町にいる全員がタケト様に従います。ですから――」
全員が従う? どうして――
「ですからタケト様、どうか私たちをお救いください」
そう頭を下げるのだった。
タケトは少しだけ黙ったあと、こう声にした。
「ごめん、やっぱりボクはキミの願いに応えられないよ」
「――えっ?」
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