陰キャ女勇者（幼馴染）とジョブなしの俺

第22話

「戻りました、あの……異変は特になかったんですけど」

「え、えーと……そちらの熊は？」

「夕飯です、それで報酬とか報告とかって細かいところはどうなっているんですか？ちゃんと聞かずにいってしまって」

「登録書が魔法契約になってるので討伐記録とかは勝手に記録されます……現金を組合から卸してきます……」

　やっぱ振込形式にしたほうがいいか？ため息交じりにトボトボと台車を持っていく爺さんを見ながらそんなことを思ったが口座を作るだけでばかみたいな時間がかかりそうな未来を感じて諦めた。

　そもそもちゃんと組合施設があれば金庫から金の一つでも出てくるだろう。潰れて廃墟化したからこうなってるだけだ。だから現金でいいだろう。

「今日は何食べる？ステーキ、煮込み？」

　エリスは自由だな、陰キャじゃなくて不思議ちゃんになってないか？

「蓄えたから引きこもろ？」

　ダメ人間になってるな。

「台車に山積みです、どうぞ」

「……」

「内訳必要ですか？発行しましょうか？自分で確認する場合は別料金でカードを発行しますが」

「じゃあ……一応2名分お願いします」

「じゃあ、こちらです。名前を書いておけば大丈夫です、支払金のリスト化ができる意外は特に使えませんので」

　こう、なんかもっと便利なやつないのかね？冒険者のやつってもっとこう……なんあかあるだろ！とやんわり聞いたところ。

「誰がどこまでできるかはこちらが把握しておけばいいので……それに勇者様に等級を聞くほどアホなら見捨てればいいんじゃないですかね？」

　それもそうだ、勇者だけど等級が低いからイキっておくかってやつはいないだろうし……俺は……舐められそうだな。

「冒険者組合でガラが悪い人に絡まれたらどうするんですかね……？」

「絡むような人いるんですかね？問題起こせば等級なんて簡単に落ちますし……喧嘩を売って殺された場合は事件にならないので。喧嘩を売られて殺された場合は事件になるますけど」

「じゃあ……気にしなくていいいんですね？」

「そもそもしないでしょうし……そんな治安が悪い場所はまともな住民は逃げてるので良いのでは？」

「そうですか」

　会話しながらカードのリストを見たが何がなんだかわからんな、モンスターの名前とかそもそもよくわからん。

「ああ、そうでした。異変の解決ありがとうございます」

「異変？そういえば何だったんですか」

「熊の化け物がいる噂があったんですが……」

「はい」

　これか……。

「これ食べられますよね？」

「多分……見たことはないですけど」

「ないんですか……」

　おお！これはワイドベア！クレイジーベア！みたいな感じで博識なやつがチヤホヤされてなんかやっちゃいましたかみたいな流れではないんだな。

「ただ討伐したのが大金なので食べられるんじゃないですかね？売値も高いですし」

「売れるんですか？」

「ええ、なんで売れるかは知りませんが……薬になるか美味しいかのどっちかでしょう」

　この手のやつって、ここが売れるとかこの部分が美味とかそういう情報がないのか？まぁ、見たことないって言ってるからな。突然変異の強化モンスター的なやつじゃないんだろう。魔物だしな……これ魔物なの？

「さぁ……？別に魔物意外も売れるものは表示されますし……鴨とか……」

「変なところで万能だな……」

「熊を売るなら買い取りますよ、内臓の買い取りもあるみたいですが、」

　胆嚢とか薬になるんだっけ？こっちでもなるかは知らないけど。

「苦そうだからいらない……」

「心臓と肝臓と大腸以外の内臓は売ります」

「レバー苦いから嫌い……」

「俺は好きだからいいんだよ」

　爺さんは渋々と言った感じで解体を始め……本を開いて読み始めた。

「熊の解体はしたことなくて……」

「この辺にいないのですか？」

「だから異変だったんですけどね……それに解体担当はこの状況ですし……死んでるかも……」

「解体する魔法とかないんですかね？」

「あるかもしれませんけど大図書館も焼け落ちましたし……」

　数時間も爺さんの熊解体ショーを眺める続けると通りがかりの人が爺さんの机に投げ銭をして帰っていった。マグロとかあんこう解体ショーみたいなノリで人が集まってくる。

　エリスはもうつらそうだ、解体ではなく人混みのほうで。エリスは鹿くらいなら軽く解体するからな。今更熊の解体ではどうもならん。

　爺さんが解体を終えると両手を上げアピール、熊の頭を観客に掲げて称賛を得る。何やってるんだコイツ。

「いや、久々に気分が良かったですね！」

「そうですか」

「都市のみなさんもあれだけ暗かった表情が嘘のようです、さすがは勇者パーティですね」

　なんで四天王を倒したときより熊狩って解体したときのほうがそれ実感されるんだよ。