第28話 家族と使用人と敵
田中真紀子さんが、西暦二〇〇一年に外務省幹部に向かって発言したとされる「人間には家族と使用人と敵の三種類しかない」という言葉は有名だと思う。
僕には、使用人をもつ家族がその人たちに対して、どういう感情を抱いているものなのかが全然分からない。この発言からは、家族でもないし、敵でもないらしいことが分かるだけである。
文藝評論家の江藤淳の家に女中がいたことは間違いないらしい。
僕が『裏声で歌え君が代』の作者として知っている丸谷才一は、Wikipediaを見ると、父が開業医とのことである。おそらく、彼の家にも女中がいたのではないだろうか。これはもちろん、戦前の「開業医」という記述を見ての想像に過ぎない。僕の偏った見方かも知れない。
実は今回は、「坊っちゃん」(夏目漱石)に触れるのである(これは「坊っちゃん」について、カクヨム内でコメントのやりとりをしたことがきっかけの文書である)。
江藤淳が亡くなって数年経ってからだが、丸谷才一が「清」は坊っちゃんの生みの母親であるという説を提唱していたらしい。
僕が思うには、丸谷才一にとっては、「坊っちゃん」と「清」があんなにも仲が良いことが不可解だったのではないか。
江藤淳にとっては、そんなことはどうでもよかった。彼は幼くして母を亡くしており、女中にも大変世話になっているはずである。
江藤淳が丸谷才一に対して批判的であったことを、僕も知っている。しかし、別に、江藤淳の見方・味方に立って、丸谷才一を悪く言うつもりで書いている訳ではない。
二人には使用人観にも違いがあったのではないか、と思うだけだ。
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