第26話 時代劇・水戸黄門

 都会で、それも教養のある家庭に育った人は大変そうである。

 僕は、そうではない家で育った。

 旅行は全然したことがないし、外食もまともにしたことがなかった。何かイベントというか記念日にということも、大きな何かはなかった。

 だからこそ(?)覚えていることがある。

 小学校に入る前だと思う。

 クリスマス前後に、いつも寝起きしている場所ではない所に父も母も僕も行っていて、戻ってきた。壁だか柱だかにジャンパーとか引っ掛けている所(釘を打ってあったのかな?)にナイロン袋が引っ掛けてあった。

 それで、こんなのあるぞ、という訳である。

 ナイロン袋の中には或る玩具が入っていて僕は、お父さんだろう、と。しかし、父は、俺は知らない、という訳である。

 別に仲良かった訳じゃない。まあ、或る時期には色々もあった。

 あったが、こういうことも、こうやって思い出される今日のような夜がある。

 父にとっての娯楽はテレビ時代劇の「水戸黄門」であった。

 子供の頃、両親の好みもあって、お笑い番組というのを見ることが少なかった。それで、時代劇はそれなりに観ていた。時期がズレるかも知れないが、北大路欣也さんの「銭形平次」とかね。あのテーマ曲は口ずさみたくなる。

 しかし、「水戸黄門」に対しては、世間でマンネリと言われていたのと同じように、あまり僕はいいと思っていなかった。

 いまは、違う。

 再放送を観てきたことで、最初の方のシリーズの「水戸黄門」が全然「マンネリ」ではなかったことに気づいているからである。

 元々は、八兵衛だって、ただの食いしん坊ではないのであった。

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