第43話 魔王からの忠告

エルフの国から訪問の連絡があった時、丁度暇をしていた事もあってトッシュと一緒にエルフの国へと向かった。

三日かけて到着すると驚かれたが、突然の訪問だっただろうに歓迎してくれて嬉しかったねぇ。

エルフの手土産は何がいいか分からなかったから、トッシュに聞いた所、「作物の苗や種はとても喜ばれると聞いたことがあります」との事だったので、野菜関連の種を山のように用意した。



「何を手土産にしたらいいか分からなくてね。異世界の野菜の種の詰め合わせだが、どうだろうねぇ?」

「ほう、異世界の野菜の種ですか……。とても強い生命力を感じますよ」

「良かったら貰っとくれ。この程度ならいくらでも贈らせて貰うよ」

「かたじけない」



こうして野菜の種は大変喜ばれたので良かったが、なんでも200年に一度、大飢饉が魔族領を含めてドワーフ王国から始まり、魔族領にくるのだそうだ。

無論人間の領土にもそれは及ぶ。

それは前々に宰相のモーダンから聞いていたので納得はしていたが……。



「うちは住民エリアには【スーパーマーケット】置いてるからねぇ。大飢饉や飢饉とは無縁だねぇ」

「その【スーパーマーケット】とは? ここだけの話、あなた方の所に送り出したエルフ達からも聞いていたので、とても興味があるのです。食べ物が湧いて出てくるとか書いてあって……」

「なるほど……飢饉に備えるなら【スーパーマーケット】は確かに効果的だね。異世界の食べ物にはなるが、枯れることなく商品がなくなることなく、確かに商品は常に補充されるからね」

「「「「おおおおおおおおおおお」」」」

「それがお望みかい?」



そう勝気な笑顔で口にした魔王様に「是非、我がエルフ国の大きな問題でもあります」と伝えると、暫く考え込んだ素振りを見せてから――。



「じゃあ、見返りに何をくれる。もうエルフはいらないよ」

「それは……」

「それとも、アンタ達エルフ族も『貸し』にしておくかい? でも、この貸しはデカいよ?」

「国民の命に代えられません……是非、『借り』を作って『貸し』にしたいと思います」



そう私の命を変えてでも魔王からの貸しを返せと言われても返せるのだとハッキリ伝えると「命までは要らないよ」と苦笑いされてしまった。



「ただ、獣人族に彼是言われた時にはちいっとばかり手助けして欲しいね」

「獣人族ですか?」

「ああ、獣人族さ」

「ふむ、確かに今も正妃や側妃様にお子が出来ないので心配はしておりますが」

「心配しなくとも、正妃や側妃にお子は今後も出来ないよ」

「と言うと?」

「トッシュ」

「はい」



そういうとトッシュは帽子を脱ぎ銀の狼の耳を出した。

これにはヒュッと息をのんだエルフ王にアタシは笑顔で「こういう事なんだよ」と伝えると頭を抱えて「なる程です」とため息交じりに息を吐いた。



「なるほど、獣人王は隠し子がいたのですね」

「その通り。しかもトッシュの母親は神格持ちだったそうだ」

「確定で王子ではないですか……トッシュトリス、君は獣人国の王太子だったのか」

「いえ、奴隷として売りに出されて」

「は?」

「そこをキヌ様に助けていただき、こうしている所存です」



思わぬ言葉だったのだろう。

トッシュの言葉にエルフ王は頭を抱え「暗躍したものがいるという訳ですな」と口にして呆れ、真っ直ぐ前を見ると「いいでしょう。獣人族が何か言ってきた場合、エルフ国も口添えしましょう」と約束してくれた。


「悪いね、その代わりしっかりと大型スーパーマーケット作ってあげるからさ」

「大型ですか」

「この国のエルフくらいは賄えるんじゃないかね? 小さな村までは賄えないが、飢饉が始まれば国に国民は集めるだろう?」

「ええ、そちらにエルフを送らせたので、小さな村のエルフ達はこの国に集まりつつあります」

「なら問題なさそうだね。早速広いエリアを用意して貰っていいかい? サクッと作って後はレジ、支払いを出来るようにしてくれると助かるね」



こうしてエルフ王もついてくるというので案内された噴水広場近くの大きな公園は、エルフの王国なら幾つもあるらしく、一つくらいは潰しても問題はないという事だったので、これ幸いにと潰させて貰う事にした。

ドワーフ王国にあったスーパーよりも、大きい産直が入っているようなスーパーマーケットを想像し、一気に作り上げていく。

形が出来上がると、ドン!! と【大型スーパーマーケット】を作り上げ、全員が「おおお」と声を上げる中、自動ドアを開けて中に入れば涼しい空調に、棚のいたるところに野菜や肉、果物と所狭しに並び、牛乳や飲み物も完備。

お菓子類も一応用意しておいたが、甘味もあって問題はないだろう。



「どうだい、これが【大型スーパーマーケット】だよ。商品が無くなれば勝手に補充されるから問題はない」

「なんと……いや、実際見てみないと分からないものだな……これは凄い」

「貸しだからね、ちゃんと返して貰わなと困るがね?」

「無論です!! これで来年の飢饉では多くのエルフが助かる……なんとお礼を言えばいいか!!」



そう興奮した状態でアタシの手を取るエルフ王に、手をペちりと叩き「ドワーフ王もだがアンタも女性に早々触るもんじゃないよ」と言うと苦笑いしていた。



「失礼した。つい興奮してしまってな!」

「全く。だがこれで食糧問題が解決したいのなら、後はレジに人を配備すればすぐに今日から使えるよ」

「有難い」

「ああ、このスキルはアタシが居なくなったとしても曾孫が受け継いでるからね。何の問題もないよ」

「おおおおお。時期魔王もこの力を! 将来は安泰ではないですか!!」

「ヒヒヒ。自慢の曾孫だからねぇ」



そういって豪快に笑っていると――。



「時に、曾孫殿は男性か、女性か?」

「男性だね、嫁候補が多くて困っちまう」

「ほう」

「まぁ、モテるのも頷ける見た目をしているから仕方ないね、ヒヒヒ」

「では、友好の証として我が娘をとは……どうだろうか?」

「友好の証で送られてくる娘なんてかわいそうで見てられないね」

「そ、そうか」



どうやら友好の証で娘を送りつけてくるつもりだったらしい。

そんなのダメに決まってるだろう。女を道具としか見ていない典型的だ。



「いいかい、女や娘を道具のように扱う国は亡ぶよ」

「なっ!」

「ふふ、気を付ける事だね」



そういって妖艶な笑みを浮かべるとエルフ王は顔を赤くしつつ「心得た」と口にしたため、その日は歓迎の食事会をして貰ってから翌日少し観光してからキャンピングカーに乗って魔王城へと帰る事になったのだけれど――その頃魔王領のダンジョンと勇者はと言うと?




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