第42話 エルフ王すら興味を抱く魔王の存在

――エルフの国side――



若く雄々しいドワーフの王が、魔王に愛を乞いだという話は、青天の霹靂だった。

相手は104歳の老婆だと聞いていたからだ。

そこで、しっかりと聞き取り調査を行うと、なんと104歳の老婆ではあるのだが、見目麗しい美魔女のような女性だったというではないか!!


艶やかでミステリアスな黒髪に黒い瞳は美しく、目元には泣き黒子があり、ふっくらとした小さな唇は吸い付きたくなるほど。

その上スタイル抜群で、若い頃はさぞかしモテたのではないだろうかと語られたのだ。



「なんと、それならばドワーフ王が愛を乞うのも頷けるというものよ」



ドワーフ王には我がエルフの国から嫁候補を数名送ったが、誰一人として受け入れて貰う事が無かった。

一体どんな絶世の美女かと記憶を読み取る魔法で見せて貰うと――。



「――なんと美しい」



このエルフ王ですら、魔王様の美しさに胸を打たれた。

何というミステリアスな女性であることか……。

ヒールをカツカツと鳴らして歩く姿の妖艶な事か。

それでいて豪快、だが繊細さもある。

パーフェクトレディとはこういうのを言うのだと瞬時に理解が出来た。



「はは……これはドワーフ王も愛を乞いでしまうのは致し方ないな」

「陛下……」

「私には君だけで十分だよ」

「そうですか……」



いくら政略結婚であったとしても、妻となった相手を大事にしようという気持ちに嘘偽りはない。

子が出来にくいエルフでありながら王子と姫にも恵まれた。

二人の子宝に恵まれて幸せの筈なのだ。

ドワーフ王とは遠縁となるが、少なからずドワーフ王にも我がエルフ王と同じ血は流れている。

だが、ドワーフ王の好みが魔王様とは……。



「通りで送りつけたエルフ達には見向きもしない筈だ」



送りつけたエルフ娘たちは皆従順そうな娘たちを選んだ。

寧ろ、エルフ娘たちと言えば従順であれと言う育たれ方をするのだ。

だが魔王様のように自分で切り開いていくタイプの女性と言うのは中々にいない。

ドワーフの娘は若干その毛はあるが、それでも極僅かだ。

故に、ドワーフ王が魔王様に熱を上げるのも頷けてしまう訳だ。

少なくとも、私のタイプではないが、あの見た目で従順ならば大いにありえたな。



「しかし、酒屋ですか……。ドワーフの方々はお酒が好きですからね」

「確かに言えている。そういえば魔王城に移り住んだエルフ達は随分と今は食糧事情も落ち着いて過ごしやすいと報告書が来ていたな」

「まぁ……あの人数を食べさせていけるだけの力が魔王様におありだと?」

「食べ物が消えても湧いてくるらしい」

「まぁ!!」



事実かどうかは分からないが、少なくとも報告書にはそう書いてあった。

今は何とか自給自足で賄えているエルフの国だが、それでもいつ飢えに悩まされるかは分からない。

大飢饉でもこようものなら……。



「一度、魔王様に相談してみるか……」



エルフの国では、200年に1度大飢饉が起きる。

それが来年の筈だ。

もし、食料が湧いてくるというのが本当ならば、命を繋ぐためにも手助けをして頂きたい。

この大飢饉は最初ドワーフの国から始まり、次にエルフの王国、最後に獣人国にて起こる。

ドワーフの国は最先端の技術で野菜栽培に成功している為問題はなさそうだが、我が国では増えすぎたエルフ族の一部を魔王城で引き取って貰ったくらいだ。

これ以上甘えるのも……と思ったが、これは私が行って説明するべきことだろう。



「誰ぞここに書簡を」

「はっ!」

「魔王城の魔王キヌ様に手紙をしたためる。来年の大飢饉に関する頼みごとをする予定だ。君たちやお義父様お義母様、そして子供たちを飢えさせはしない……」

「あなた……」



こうして私は魔王キヌ様に対し書簡をしたため、近々エルフの国よりお伺いを立てることになる旨を伝えると――キヌ様からの返事は。



【エルフの国も行ってみたかったんだよねぇ! ちょっと数日待ってておくれ、キャンピングカー飛ばしてくるからさ!】



と言う、不可不思議な手紙が戻ってきて、三日後本当に魔王キヌ様がお越しになり、エルフ城は大慌てになったのは言う迄もない。




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