第41話 ドワーフ王との商談と、愛を乞われる

ドワーフ王国はなんとも無造作にモノが置かれていたり、スチームパンクの世界を彷彿とさせる国だった。

そこをハイエーナのキャンピングカーが走っても違和感がないくらいで、ドワーフ達は「すげぇ」「どうやって動いてんだ」と車に興味津々だったが、城に到着すると車を消して中に入っていく。

全身ぴっちりラインの服装にカツカツとヒールを鳴らして歩くアタシに、ドワーフの男たちは目を見開いて立ち止まっていたが、謁見の間まで到着すると重々しいドアは開きアタシは中に入った。



「魔王様、遠渡はるばるよくぞ来られました」

「ああ、ここまで来るのに二日しか掛かってないよ」

「ははは! 魔道具ですかな?」

「アタシのスキルだね。それで【女の貸し】ででも欲しいっていう酒場の件だがね?」

「無論それで構いません!! 聞けば魔王領では酒をいくら買っても補充される素晴らしい店があるそうじゃないですか!!」

「あるね」

「是非、是非大きな酒店でそれを作って欲しいのです! 一つの店で構いません!」



食い気味に来るね。

ドワーフはカナデのゲームの知識だと酒に目がないんだっけ……なるほど。



「卸すのは酒だけでいいのかい? 酒に合うソーセージやチーズ、そういう嗜好品は要らないってことだね?」

「そ!! そんなものまであるのですか!?」

「あるねぇ……それも欲しいというなら、貸しは高くなっちまうねぇ?」

「是非、是非それもお願いします!!」



本当にドワーフ族ってのは酒に弱いんだね……。だが他の奴らが入り込めない隙を埋めるのにはアタシの作る酒屋は魅力的だろうさ。

何せ、異世界の酒は美味いからねぇ……ヒヒヒ。



「いいだろう。広さはかなり広いエリアが欲しいねぇ?」

「すでに用意してあります。おい、魔王様をご案内してさしあげろ」

「は、はい!!」

「無論ワシも一緒に行きますよ。レディ一人歩かせるなんてことは致しません」

「おやおや、レディーファーストかい? 気分いいねぇ?」



そういうとドワーフにしては背の高い国王に手を取って貰いレディーファーストで歩いていく。

なんでもこの国王はエルフとの間に生まれた国王らしく、背が高いらしい。

その上まだ結婚をしていない40代なのだとか。

アタシも見た目が40代に見えるから猶更好みに当てはまったのかねぇ?

こちとら104歳だが。



「しかし魔王様は大変美しい。艶やかな黒髪に目元の泣き黒子。妖艶でふっくらとした唇……さぞかしオモテになるだろう」

「何を言ってるんだい。アタシはスキルで若返って見えるが、104歳のババアだよ」

「ははは! このように美しい104歳でしたら、ワシは十分許容範囲ですぞ」



ストライクゾーン広いねこの爺!!

そう思ったが顔には出さず、妖艶に微笑んで歩いていく。

確かに40代にしてはスタイルもばっちりの体してるからね。

男どもの目の色が変わるのは良く分かるよ。


それは兎も角として、案内されたエリアは大きな工場が2つは入りそうな土地があり、ここに酒屋を作ってほしいってんだから凄いねぇ。

レジは全部で10台は会った方がいいだろう。こう、大型スーパーで考えた方がいいね。

その上で売っているのは酒がメインでソーセージや添え物は冷蔵庫で買えるようにした方がいいだろう。


ここ最近冒険者がドンドンお金を落としていってくれたからこの広さは作れるが、その後はこの土地でドンドン金を湯水のように使って貰わないとねぇ。

ニンマリとほほ笑み、スキルを使って一気に【拠点】で【大型スーパー】を形作って線が綺麗に出来上がると、ドン!! とあちらの世界ではどこにでもある大型スーパーの出来上がりだ。

中身も考えて作ったので中に入ると、自動ドアが開き一面にビールからウイスキーやウォッカ、ワインと言った酒がずらりと並んでいる。

レジは全部で20個用意出来た。



「後は従業員を用意すればすぐにでも酒は販売できるよ」

「「「「「うおおおおおおおおおおおおおお!!! 酒じゃあああああああ!!」」」」

「従業員を雇えばね!!」



そう【一喝】スキルを使って言うと、ドワーフ王ですらしょんぼりした。

しかし、すぐに手配は進み、その日のうちにレジ担当が出来て店を急遽オープンすることになったのだが、流石ドワーフ王。ケース買い箱買いは当たり前だった。

こうして一旦ドワーフ城に戻ることになったのだが――。



「いや――実に、実に素晴らしい酒屋だ!! あのような店をポンと作れるそのスキルや羨ましい!!」

「そりゃどうも」

「どうじゃろうか? ワシと結婚してその力をドワーフ王国の為に残さんか?」

「いやだね。アタシはこう見えて曾孫もいるんだよ?」

「んー。ワシはこれから魔王様に只管愛を囁く日々が続きそうじゃ」

「よしとくれ。酒の力がないとそれだけの愛情が用意できない男なんて願い下げさね」



そう振ると、ドワーフ王は「それだけでは無論ないのだがな」と口にし、ワインを飲んで「これは美味い!」と口にしている。



「キヌ殿は本当に美しいのだ。仕草も洗練されていて実に素晴らしい。そなたのような母親を持つ子は幸せであろう」

「どうかねぇ……」

「再婚……と言う手もありますぞ?」

「この年で再婚はしたくないね。それに、40台のアンタじゃアタシにとってはまだまだ若造だ」

「手厳しい」



そうアタシが再度振ると、お酒が飲めないトッシュを見て「ところで」と口にする。



「あのものは獣人族のようですが、キヌ様とはどのような関係で?」

「師弟関係だよ」

「師弟関係ですか。しかし銀の狼獣人等、もしや……」

「おや、それを貸しの代わりに使うかい?」

「ははは、貸しにしておきましょう。あまりにもデカすぎる」

「んふふ」



そう、トッシュの事は余りにもデカすぎる。

早々口に出来ない事でもあるのだ。

獣人族が動くまではね……。



「ま、獣人族がギャースカ行って来た時は、貸しを使わせて貰うよ?」

「その時は、全力を持ってキヌ様を守りましょう」

「ははは! 是非お願いするよ?」



そういって酒を煽り飲み切ると、「いい飲みっぷりでいい女だ!」と上機嫌になるドワーフ王と笑い合い、その日は城に泊まってから翌日魔王城まで帰ることになった。

ドワーフ王は最後の最後まで膝をついて愛を乞うていたが、アタシは靡くことなく帰ったことで、ドワーフの民たちの間では「あの国王が愛を乞うほど素晴らしい女性が魔王様なのだ」と囁かれることになり、それはエルフの王国にまで届くことになる。




===========================

読んでいただきありがとうございます!

現在毎日更新中です!


続きが気になるや、応援してる等ありましたら

星や♡よろしくお願いします(`・ω・´)ゞ

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る