第44話 曾婆様が留守の間は俺がダンジョンを管理する

――カナデside――



曾婆様が他国に行っている間、城とダンジョンを任されたのは俺だった。

取りあえずは大きな問題もなく過ごしつつ、冒険者が落とすお金も予想以上。

このまま問題なく行ければ――と思っていた矢先、冒険者同士の諍いが起きた。

玉のでる台を奪われたと喧嘩になったのだ。

此れにはリザートマン達警備隊がすぐに動いたが、争いごとを起こせば【魔王城ポイント】が一気に激減する。

激減すればまた必死に貯めねば上には行けない。

リザートマン達警備兵を殺したり、殺人を起こせば即退場だ。



「何事です」

「冒険者同士が喧嘩しまして」

「此奴が俺の台を奪ったんだ!」

「トイレに行ってたんならちゃんとこのカード置いてけよ!」

「忘れてたんだよ!!」



【このカード】と言うのは、トイレ離籍等で台を離れる際に置いておくカードの事で、それがある台には人がいる為座ってはならないとなっている。

とはいえ、おかなかった方が悪い。



「忘れていた方が悪いですね。規則は規則ですから」

「ッチ!」

「皆さんもトイレに行く際などは必ずカードを置くように。魔王城ポイントがガッツリ減っていいならご自由にどうぞ」

「へ、減るのか!?」

「リザートマン達が出た時点で減りますよ」



此れにはザワッとなる冒険者達、特に問題を起こした冒険者は【魔王城ポイント】を見てガッツリ減っているのを見たのだろう、顔面蒼白だ。

いくら忘れていたでも、それが命取りになる事を学んだようですね。



「今後は争いなど起こさぬように」

「「はい……」」



意気消沈した二人には申し訳ないが、二人のポイントはガッツリ減った。

思わず口がにやけそうでしたが、キッチリと仕事をしている顔を貼り付けて事に当たる。

すると――若い女性の冒険者が俺に声を掛けてきた。



「あの……その白の羽織ってことはキヌマートの上層部ですよね?」

「ええ、キヌ様は俺の血縁者です」

「やっぱり!!」

「似てると思ってた!!」

「若いのに上層部ってことは、将来有望!?」

「やばい~~~!! 彼女とかいますか!?」



これが勇者が言われて鼻の下を伸ばしていた逆ナンと言うやつでしょうか。

俺は全く心が靡きませんが、「婚約者なら二名ほどいます」と告げると「あ~~」と女性たちは声を上げた。



「そりゃそうよね、キヌマートの次世代を担う子だもんね」

「キヌ様の息子さんってこと?」

「可能性はあるんじゃない?」

「うわ――……婚約者になりたい」

「ほんとそれ」

「婚約者二人で手一杯ですよ。それでは失礼致します」



そういうとその場を颯爽と去っていく。

問題は解決しましたし、確認事項はまだ他にもある。

売り上げ部門だ。

金貨の雨が降るこの売り上げ部門、まぁお金が入ってくる財務部と言えばいいでしょうか。

そこの扉を開くとドラゴン達が目を金貨にさせて仕事をしていた。



「どうです、売り上げの方は」

「カナデ様!」

「もうウハウハですね!! 新たにドワーフ部門も作ったんですがそっちも凄くって!! キヌ様からエルフ部門もって言われて作ってるんですけど、そっちも今から始動見たいです」

「そうですか。ドワーフ部門も相当儲かっているようですね」

「何なんですかもう! 金貨しか降ってきませんよ!!」

「ははは!」



ドラゴン族たちは目を輝かせながらお金の管理を任されている為必死に働いている。

不正は今の所起きていないが、魔王相手にそれをしようとする者もいないだろう。

カツカツと靴を鳴らし魔王城にある自室に戻ると、水を一杯飲んでから鏡を取り出す。


これは国王から貰った鏡だったと思うが、とてもレアな魔道具らしい。

何故こんなレアなものを手渡したのかは分からないが、使用する魔法陣に魔力を流せば見たい光景が見えてくる。

まずは曾婆様は――どうやら何時もの荒い運転で魔王城に帰宅中の様子。

三日もあれば帰ってくるでしょう。

曾婆様の顔を見るに晴れ晴れとしているし、商談は上手くいったと言って過言ではないでしょうね。

帰宅後豪快に笑いながら旅の話を語る姿を見るのが楽しみだ。


さて、問題は勇者たち。

ゴミがいつまでも魔王城にいるのも問題だったので、後でホームに戻そうと思っていたら曾婆様がサックリやっていて、テントは燃やしてあったりと、中々にゴミ処理に対してしっかりしておられた曾婆様。

あの後、数回に分けて勇者たちの様子を見ましたが――裸で木に吊るされていたので心がポッキリ折れた勇者キョウスケは、以前ほどの勢いはなくなっている。

というのも――。



『レベル60程度で偉そうな顔すんなよな!!』

『魔王城にいるカナデ様とか100近いよな』

『お前等カナデ様達と比べたら雑魚中の雑魚だかんな? ザーコザーコ』

『俺達だって70近くはあるってーの! お前等ちったぁまともにレベル上げくらいしたらどうだ? 勇者なんだろ勇者!!』



と、町の住民や冒険者達から針の筵で、部屋に閉じこもって出てこなくなったのだ。

ザマァないなと思うが、素っ裸で外に放り出されている間、何度もクスクスとあざ笑われ、男の勲章すら貧弱だと言われ続けた結果が――引き籠りだ。

たかだかそれくらいで引き籠るなんて馬鹿馬鹿しい。

そろそろ何かしらの動きがあってしかるべきですが……さてさて、どうなりますかね?




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