第47話 堕天使?



えらいもんを見てしまった。


まばゆい光が収まってムール達はホッと息をついた。


この遺跡の洞窟は訳の分からないところにつながっているみたいだ。


洞窟を出ると入った時からそんなに時間は経っていない。


まだ明るい。


「ムール、お腹空いた。」


パエリは相変わらずだ。


ムールはインベントリからキッチンとダイニングのセットを出して昼食の用意を始める。


何故か魔獣っ子達がテーブルセットを持ってきてムールのダイニングセットにつなげて座って待ち構えている。


そりゃそうだよね。


この子たちにとっては客人の食卓などは珍しいイベントみたいなものなんだ。


それじゃあ、こういう時はカレーライスだよね。


サーフラが「なんで?」って顔をしているけれどちゃんとした理由はない。


寸胴の中のカレーはみるみるなくなって行く。


急にバキバキと音を立てて空に黒い裂け目が広がって行く。


「なんだあれ?」


と言う間もなく黒い影の様な物が飛び出してこっちに向かってくる。


ジュネの剣筋をするりとかわしてパエリの剣もかわす。


サーフラが魔法障壁を張るけれど

これもうちやぶってムールに向かってくる。


ムールは前面に低反発障壁を張って迎えうつ。


その黒いやつはやんわりとムールの張った障壁に受け止められて地面に転がる。


子供みたいだ。


慌てて立ち上がって腰に手を当てて胸をそらしてなんか威張ったポーズを取っている。


「誰?」


ムールが声を掛けると待ってました、とばかりに表情をにっこりと崩してムールの方に向き直る。


「俺か?俺はアスタロト、天使だぞ。」


男の子みたいな話し方だが見たところ容姿は女の子だ。


「で、アスタロト様はどうして降臨なされたのですか。」


天使様や神様を怒らせていい事がある訳ないので言葉を選んで問いかける。


「うふふ。降臨ってほどでもないけどね。」


ムールの言葉にアスタロトは少し機嫌を良くしてくれたようだ。


言葉は大切だね。


「おまえ達、回廊の扉を壊してケルビムやセラフィムと会っただろう。」


ただ怒られただけだけどね。


「あれでちょっとだけ次元に弱いところができたんだ。」


「せっかくのチャンスだし退屈だったし、なんかいい匂いがしていたから突き破って来たのさ。」


アスタロトって前世だと堕天使とか大悪魔だったんじゃないかな。


「ふーん、おまえ転生者か。悪魔だとか天使だとかは関わった人族の都合で俺たちの本質とは関係がないんだぜ。」


えーっ、心が読めちゃうの?


「おまえ面白いな、創造神の加護がついている上にさっきセラフィムにマーキングされているぞ。」


そう言いながらアスタロトは皿にカレーを盛って食べ始めた。







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