第48話 上級ダンジョン 1



大山脈から転移魔法でサーフラお嬢様の実家であるテスカの街のワーリク侯爵邸に帰って来ている。


お嬢様をずっと旅に連れて歩くわけにもいかないからね。


お嬢様は平気みたいだけど。



さっきからオレの横でずっと寸胴の中のカレーを覗き込んでいる子供は、なぜかついて来てしまった。


アスタロト様だ。


白銀の髪に、内側から光るような白い肌。

そして赤い瞳。

7歳から9歳ぐらいに見える小柄な体を細かなプリーツのついた貫頭衣のようなもので包んでいる。


背中の翼は3対。


セラフィム様と同列の天使様なのだろうか?


「いい匂いになって来たね。」


にっこりと笑う横顔はまさに天使のようだ。


こいつは俺じゃなくてカレーが気に入ってついて来たんだろうな。


「このプルプルしたものは?」


アスタロト様はプリンにも関心があるみたいだ。


「ムールはこの世界で何をするつもりなんだ?。」


心が読めるだろうに質問はするんだ?


「心が読めちゃうと言っても表層だけだよ。意識している事、思い浮かべている事しかわからないぞ。」


そんなもんなんだ。


ムールは答える。


「オレ自身には目的はないんだ。勇者召喚に巻き込まれただけだし。」


「その勇者も魔王を討伐しなくちゃなんて考えていなさそうだし。」


パエリは何を考えているのかわからないけど、オレはこの世界の人族に肩入れするつもりはない。


そして、魔王もオレ達と同様に転生者みたいだし。


今はこの世界を現実として受け入れて楽しむ事を考えている。


剣と魔法のファンタジー世界ってワクワクしちゃうだろう。


思いに耽っているとアスタロト様はニコニコしながら3つ目のプリンを食べている。


アスタロト様にとっても退屈しのぎになればいいんだけどね。


少しの間はここにいてまた旅に出かけるつもりだ。


中級ダンジョンのマスターに上級ダンジョンに入る紹介状ももらった。


ゲームでは知っているけれど現実として感じる上級ダンジョンがどんなところなのか楽しみだ。


めざとくパエリがプリンを嗅ぎつけてフェンネルとバハムートを連れて走ってくる。

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