第44話 大山脈5
この大山脈の向う側に魔王城があると言われている。
人族では誰も行った者がいないし詳しい位置はわかっていない。
500年程前に魔王フーハ ズーネヨマが隠蔽魔法と結界で人族との関わりを絶ったらしい。
竜人族や獣人族、エルフの里も同様に隠蔽されていて通常勇者一行以外の人族がそこに行くことはできない。
その昔、隠蔽されていなくて共生していた頃は人族以外の種族は亜人と呼ばれて差別対象だったし、里や村を襲って奴隷商に売る人族がいた。
魔王はけっして人族と他の種族が共生することは出来ないと判断したんだ。
もちろん全然人族の里に他の種族がいない訳じゃないんだけれど。
とても少ない。
人族は1人1人は他の種族よりも弱くて寿命も短いのだけれど繁殖率が高くて圧倒的に数が多い。
そして数が増えると権力志向を持つようになり弱者を攻撃する性質が強く出る。
集団になると人族は性質が変化してしまうんだ。
大山脈の周辺でもサンドワームは出没する。
「エイベルー。なんか獲れた。」
「やったー、アイゼイヤ。それサンドワームよ。美味しいよ。」
バーベキューをしようと言う事になって広場に準備を始める。
集まっていた子たちが狩りを始める。
サンドホッパーやステップリザード、ラウンドサラマンダーなどの獲物がたちまち集まる。
サーフラがコンロや火種を、ジュネがお肉を捌く。
なかなかみんな手慣れている。
沢山の焼き網のどれからなのか醤油の焦げるいい匂いがする。
「こっちにおいでよ。焼肉のタレを作ったんだ。」
魔王がいる。
焼肉のタレだって、なんというものをこの世界で作るのだ。
パエリが小瓶に入った焼肉のタレを魔王からもらってお肉につけている。
美味しいんだろう、お肉を口に入れた途端にパエリの目が見開いた。
「ドラゴンの素材って何と交換したらいいんだろう?」
ムールがそう言うとパエリの前にいた金龍のザウアーラと赤龍のピボが首を傾げている。
「いっぱいあるし、私達にはいらないものだから持って行っていいよ。」
人化している彼女たちを見ていると女の子の抜けた爪やら歯をもらって帰るって変態っぽい感じ。
まあ現物を見ると人化している彼女たちからは想像もできないぐらい大きな爪や鱗だったりするんだけれど。
サーフラがマジックポーチから服や靴を出して見せると
「なにそれー。」
「かわいいー。」
「私も欲しいー。」
と広場は大騒ぎになった。
「サーフラ、グッジョブ!」
ムールはサーフラを連れてテスカの街に行って服や靴を沢山買い込んだ。
パエリもジュネさんも着る物に無頓着だから女の子の服はサーフラお嬢様に選んでもらう方がいいからね。
その後広場はファッションショーの会場みたいになった。
みんな思い思いの服を着て見せ合いをして楽しそうだった。
魔王が親指を立てて「いいね。」をして去って行った。
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