第43話 大山脈 4

「エイベル、エイベル。」


「どうしたのアイゼイヤ。」


「なんか来た。」


エイベルはアラウネでアイゼイヤはグリフォン。


人化して少女の姿をしている。

2人は大山脈の麓の洞窟に住んでいる。


洞窟と言って古代遺跡だったのかちゃんと内装されている。


カラスみたいにどっかから拾い集めてきたのだろうか色や光沢の綺麗なものを並べて女の子っぽいかわいい部屋作りをしている。


龍や魔獣もそういうガラクタが大好きだからね。


当然その中にはアーティファクトや魔核、貴金属の鉱石や宝石が混ざっていたりする。


「ムートが迎えに行った勇者一行様じゃないのかな?」


エイベルは地平線上の馬車に額の8つの複眼を向ける。



大荒野と大山脈の狭間、大山脈の麓にある古代遺跡の洞窟群の前に沢山の子供達が集まっている。


出迎えているつもりみたいだ。


姿こそかわいいお子様だけれどそれぞれが発する魔力量は半端ない。


SSクラスのドラゴンや魔獣が人化しているのだろう。


人族でもSSクラスの冒険者かこわいもの知らずの盗賊ぐらいしかここにたどり着くことなどないだろう。


ドラゴンや魔獣にとっては安息の地ってところだ。


それにしても人族の勇者や剣聖が来ているのに緊張感がぜんぜんない。


「見て見てこれかわいいでしょう。私が作ったの。」


などと手作りのアクセサリーなどを見せて来る。


勇者一行が古代遺跡に着いた頃には遺跡前の広場はテキ屋さんの屋台が並び、フリーマーケットのようになっていて「勇者御一行様熱烈歓迎」なんて垂れ幕まである。


今にもパエリやジュネが馬車から飛び出していきそうだ。


「すっごく楽しそう。」


「沢山のかわいいのがいっぱいいるね。」


いやいや、あの子達かわいいだけで済まないからね。




「アイゼイヤー。ザウアーラは?」


「まだ寝てる。」


「今回勇者はドラゴンの素材が欲しくって来ているはず。ザウアーラとピボを起こさなきゃ。」


ザウアーラは金龍、ピボは赤龍。

爪や鱗など日常で生え替わるいろいろな素材を持っている。


「ドラゴンの素材を手に入れるって言うのは討伐して剥ぎ取るって言う訳じゃないんだね。」


ジュネがムールに言う。


「大昔はそうだったみたいだけどね。」


「とっても希少な存在だし、あんなにかわいくて人懐っこいのに討伐なんか出来ないだろう?」


それに素材はくれるしね。


「みんな勇者が大好きなんだよ。」



何故かこの世界では人族以外の種族に勇者は人気がある。

変なの。


「ムール、お金ちょうだい。」


パエリが手を出してくる。


買い食いしたり、アクセサリーとかを買い漁るつもりだなとは思うんだけれどなんか反射的にお金を渡してしまった。


嬉しそうにサーフラの手を引いて屋台に走って行く様子に見とれている。


オレはお父さんか?


ジュネがじーっとオレを見ている。


おまえもか。


オレは黙ったまま何枚かの銀貨をジュネに渡す。


ジュネがにっこりする。


ジュネさんって大人だよね。


まあ、いいか。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る