第42話 大山脈3

「何だか薄暗いね。」


さっきまでは明るかったのに,急に暗くなった。


別に曇っているってわけでもない。


地平線にたくさんの連なった山々の山頂が見えてきた。


大荒野は空を遮るもののない岩と砂しかない荒地。


空には雲一つない快晴なんだけれどな?


馬車は軽快に走り続ける。


時々サンドホッパーやステップリザードが飛び跳ねて行く。


馬車の上に影を落としていたものが馬車を抜いて前方に出たようだ。


さっきからプレッシャーを与えていた大きな魔力が少し弱まる。


ゴーレム馬が速度を落としてやがて止まる。


「やっと止まった。」


そう言って馬車の進行方向にやたらとでかい影が降り立つ。


「勇者様が乗っているんだろう?迎えに来たんだよ。」


でっかいドラゴンがなんかかわいい声で喋っている。


「おまえ、でかいよ。」


オレが言うとでっかい小首を傾げている。


「おまえはちっちゃい。」


ドラゴンはそう言ってきゃあきゃあ笑う。


なんか見た目とのギャップが激しすぎるし全然笑えない。


ドラゴンはポンっと少女に人化する。


やっと見た目と声のギャップがなくなった。


「僕はバハムート、ムートって呼んでいいよ。」


そう言って当たり前のように馬車に乗って来てパエリにくっついている。


「ムート久しぶりだね。」


「リルは先に勇者様と会ってたんだね。」


フェンリルとは知り合いのようだ。


「僕達は勇者のペットだからね。」


「ペット?」


ああ、そうだこいつらはゲームの進行で転移ポイントも道もないところを移動するための乗り物として登場するやつだ。


ステータスも高いからいきなりレベルの高いイベントに突っ込んでしまった時にも重宝する。


勇者エリアがかまってくれないからパエリの方に来たんだろうか?


そしてこいつもオレだけに懐かない。


オレがご飯を食べさせているのになんでだー。




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