Prince #5 1999

 大きな変化の本アルバムは一曲目からその現れがみられる。

 ヴォーカルが女性と男性2人とプリンスの3名がとっている。

 それも彼は地声だ。


 しかもプリンスのアルバムのうち一番シンセアレンジの曲が多いもので、最もニューウェーブ色の強い印象を受ける。


 しかし、結果から言うとこのアルバムの楽曲でもシンセサイザーやキーボードアレンジを全部除いたとしても十分聴き応えのあるものだとわかる。


 アルバムは11曲で演奏時間は70分と33秒。

 9分越えが一曲、8分越えが2曲、7分代が一曲と言う長尺のものが多く、アナログでは2枚組だ。


 一曲目はこのアルバムと彼と彼のバンドメンバー起用の変化を表したファンファーレ的なものだが、2曲目では非常に印象的サビのシングル曲然としたLittle Red Corvette の彼の裸体をくねらせた地声ヴォーカルが目に浮かぶよう。


 D.M.S.R. なる曲だが Dance Music Sex Romance の略。

 曲としてはラップ的であり、D. がDanceとあるとおりリズム良く踊りやすい楽曲だ。

 これもシンセサイザーでアレンジされている。          パーティー的演奏の活気で盛り上がる。


 最も長い曲の Automatic は曲名どおり最もシンセサイザー導入されたニューウェーブ的曲で、その屋内パーティーから外へでないような気持ち悪さぎりぎりのところで人の感性を舐めまわす。

 これも彼ならではのリズム感あふれるビートは素晴らしい。


 長尺の曲にヴォーカルなり、語りなり、演奏なりの導入と言う試みはこの後しばらく続くことになる。こう言うのは彼の職人気質に由来するのだろうか。


 Free と言う曲はネタバレで言うと2作後の Around the World in a Day の支配的な曲調へと至るロッカーバラードだ。

 この曲は裸体くねくねと違って女性コーラスをバックに雄大な心のこもったバラードの熱唱を聞かせる。


 Lady Cab Driver ではまたセクシーな楽曲だが、これはシンセの目立つそれでなく、本来のプリンスの持っているビート感あふれるグルーヴの曲だ。

 このグルーヴはソウルともロックともつかない、アフロビートか何か民族音楽的な独特なものを感じさせる。

 このドラムとパーカッションのアレンジには感心する。

 これが次作のヒット曲 When Doves Cry へも引き継がれる。


 この曲にエレクトリックギターが聞こえてくるのも一筋縄に行かないことを平気でやってのけることを示している。


 All the Critics Love U in a New York では軽い方へ抜いたビートの曲でも独特なグルーヴがみられる。この空気感が凄い。


 アルバム最後の曲 International Lover は以前からみられた感じのバラードで、ヴァースの部分はファルセットヴォーカルの流れを持つ唯一の曲だろう。


 シンセアレンジに心を奪われていて気付きにくいところで Something in the Water ( Does Not Compute )の絶妙な曲調の空気感は作曲の能力の高さと音楽の知識の豊富さを物語っている。

 曲名を上げて述べていないものについても同じことが言えるだろう。

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