感情色

あきカン

第1話

ある国では、自分の気持ちを色で表現する人々が数多くいました。

たとえば、紙に赤色を塗ればその人は怒っていて、青色を塗れば悲しみを表現しています。


そのため、よく赤色を使う人は怒りっぽい人だと認識され、青色を使う人はネガティブだと思われていました。

それ以外の人々は、大抵のことには大きな感心を抱かなかっため、白い人々と言われていました。


そんな中、赤色の人々と青色の人々

が喧嘩をしました。赤色の人々は紙に大きく赤色を塗り、青色の人々はただただ泣きながら紙に青色を塗りました。


喧嘩は止むことがなかっため、白い人々がそれに介入しました。しかし彼らは自身が赤色で青色でもないと思ったため、新しい色を作りました。


「正義の黄色」そうして白い人々から黄色い人々が生まれました。


それからしばらく平和が続き、新たに「穏やかの緑」と「朗らかな橙色」が生まれました。

緑の人々は畑仕事が得意で、たびたび赤色の人々の住む領地に足を踏み入れては勝手に畑を耕していました。

そこで採れた野菜を赤い人々に渡すと彼らは戸惑いながら、また別の色を産み出しました。

「感謝の朱色」そして赤色の人々から、どんどん朱色の人々へと変わっていく人々が現れはじめました。


そしてまた、別々の色を使い分ける人々が現れました。自分が怒りやすいものと、そうでないものとの違いが少しずつわかりはじめ、人々の間で細かく色使いに違いが現れるようになりました。


そのようになったことで、今まで以上に人々が自分の感情を表現できるようになりました。

そしてそのなかで、特に近しい色使いの男女は引かれ合い結婚することもありました。しかしある重要なときに色の違いが起こり、夫婦はすぐに離婚しました。


そして数年が立つと、ほとんどの人々のキャンバスは真っ黒になっていました。

上から色を塗っても塗っても変わることはなく、キャンバスを変えると今までの感情を全て忘れてしまい、意志疎通に支障をきたす事例が急増しました。


その国はかつて、多様かつ表現力の高い言葉を使っており、人々の意志疎通がほぼ完璧に行われておりました。しかしその反面、対立も多く、毎日国中には罵倒の言葉が飛び交っていました。

そこで国王は言葉を発するのを国民に止めさせ、色だけで感情を伝えることを命じました。


最初は順調だったそれも、感情が増えるにつれ徐々に難しくなっていき、やがて国全体が黒いキャンバスで溢れかえるようになったのでした。

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感情色 あきカン @sasurainootome

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