第43話 閃光王子 九
監禁されていた部屋のベッドで寝ていたメイは突然入って来た男達に起こされた。
「ひゃ! な、何!?」
「移動だ。さっさと立て」
「え? そんな急に……むぐ」
猿轡を噛まされ、腕を引っ張られて乗せられた車は工場を後にした。
ジャズのライブ演奏が行われているバーで、アサヒは壁にもたれかかり、一人静かにウイスキーのグラスを傾けていた。ピアノとベースの静かな低音にスネアドラムのブラシによる優しいアクセントが効いていて、赤いドレスを着た女性ボーカルの伸びのある声が甘い雰囲気を作り出す。アサヒのグラスの氷が溶けてカランと小さく音を立てた。
バーテンダーがアサヒの所に来ると頷いて合図し、アサヒのグラスを持って行った。アサヒが葉巻の煙を避けながらカウンターまで行ってマスターに指でトントンと合図すると、マスターは小さな紙切れをグラスの下にそっと挟んで水を出した。水を飲み干すと紙を受け取りアサヒは店を出た。
アサヒは電波塔にケーブルを繋ぐとアルベルトに携帯電話をかけた。
「よう。仕事をもらったんだがな。どうやらそっちと関係がありそうなんだ。そろそろ動きがあるかもしれない。飛行船で周ってた方が良いかもな」
「そうか。すまないな、もし先にレオンに辿り着いたら頼むよ」
「任せておけ」
新聞ではレオン達の記事が一面に載り、テレビでも報道され注目を浴びた。
「元フェルト国王、アルベルト・ファルブルさんの長男レオン・ファルブルさんと、ヴェイン公国グリード・ヴェイン公爵の長女、メイ・ヴェインさんの行方が分からなくなっている事が分かりました。ビルギッタ警察は事件に巻き込まれた可能性があるとして捜査を開始しています」
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