第4話 脱出

「夏輝、大丈夫!?」


ドアを開けたのは俺の姉である春海はるみだった。助けに来てくれたのか!


「どうやって入ってきたの?」


冷花の目から輝きが消えた。冷花が、バールを置いてから春海の方を睨む。


「普通に、鍵使って入ったよ」


春海が冷花ん家の鍵を持ってるのは、冷花も把握してるはずなのに、分からなかったのは、怒りのせいだろうか?


「出ていってよ……」


冷花が俯きながら言う。春海が冷花に近づいていく。


「……出ていけ!」


冷花がバールを持つ。それを春海に振りかざす。春海は何事もなかったかのように避ける。実は、春海は元ヤンで、身体能力はある。


「冷花ちゃん、落ち着いて!」


冷花は落ち着くことなく、もう一度バールを振りかざす。そして春海は避ける。


「私以外、夏輝の周りにはいらないから……消えて」


冷花は何度も何度もバールを振りかざす。春海は避け続ける。


「冷花ちゃん……落ち着かないなら仕方ないね」


春海が冷花を投げ飛ばす。勢いよく頭を打って意識を失っているが、冷花なら死なないだろうという謎の安心感があった。


「夏輝、今のうちに逃げるよ」


春海が縄をほどいてくれた。ドアは開けっ放しになっているので逃げれる。春海がドアを閉めた。


「これで大丈夫だね。じゃあ私は予定あるからバイバイ!」


春海は去っていくが、大丈夫だろう。まさか、鍵がないのにドアを開けるなんて出来るはずがないよな。


***


あれ?夏輝がいない?私は目をこすり、身体を起こす。完全に意識を失っていて、逃げられた。ドアが閉まってる……どうしよう?


その不安は一瞬にして消えた。簡単にドアなんて開けられるじゃん。バールを使えばいいだけ……


***


冷花から逃げた俺は、近くの公園で一休みしていた。そんなに人もいないので、ブランコに座っていた。


……油断していた。後ろから首に抱きつかれた。俺は恐怖で震えている。


「……見~つけた!もう逃がさないよ」


その声の主は、振り向かなくても分かる。でも、どうやって出てきたのだろうか?


「どうやって出てきたか、気になるでしょ?」


心が読めるのか?聞いてみよう。


「もしかして心が読めるのか?」


俺は恐る恐る聞いてみた。


「当たり前じゃん。夏輝のことはなんでも分かるって前も言ったよね?」


本当に怖くなってきた。


「それでどうやって出てきたかだっけ?それはね……バールを使ったの。バールの先端をドアノブがある方のすき間に差し込んで、バールを外側に倒し力をかけるようにするだけで開くよ」


そんなことを知ってるということも怖い。


「まぁ出てこれたし……これでまた、夏輝と一緒にいられるね」






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クールな幼馴染を助けたらヤンデレ化したので逃げます 黒花 百合 @kuroyuri0519

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