第4話

B(木こり)「あ、斧を泉に……」

A(女 神)「シュウゥゥゥ……ガシィィンッ! ガシィンガシィン! シュワワワワワァァァァーッ!」

B(木こり)「それ、女神登場の音? ……原型なさすぎて、もはやロボットの合体みたいになっちゃってるわよ?」

A(女 神)「ジャキィンッ! ジャキィン、ジャキィン、ジャキィン! クルクルクルクルクルゥ……キラァーンッ!」

B(木こり)「もう、いいから! さっさと出てきなさいよ⁉」

A(女 神)「……ち」

B(木こり)「あ! 舌打ちしたわね⁉ 女神のくせに!」

A(女 神)「はいはいはい…………ほわんほわんほわん、ほわわぁーん」

B(木こり)「で、出てくるときは結構普通!」


A(女 神)「じゃ、気を取り直して行きまーす。……あなたが落としたのは、金曜の尾野先生の宿題ですかー?」

B(木こり)「あら?」

A(女 神)「それとも、銀曜の大野先生の宿題ですかー?」

B(木こり)「ここに来て、斧を外してきたわね? つまりそれって、私が準備していないような大胆な『からめ手』を仕掛けることで、経験値の差を埋めようということかしら⁉ なるほど、考えたじゃないの⁉ と、いうか……銀曜日っていつよ?」

A(女 神)「あるいは、鉄曜日の小野塚先生の……」

B(木こり)「鉄曜日も無いでしょ⁉ …………なぁんてね!」


B(木こり)「ふ、ふ、ふ……策に溺れたわね⁉ そうやって存在しない曜日を言うことで銀と鉄を選べなくして、金曜の尾野に誘導したいのでしょうけれど……そもそも尾野の数学の授業では、いつも宿題なんか出ない! よってこの場合の正解は……『私は何も落としていない』よ!」

A(女 神)「え?」

B(木こり)「……え?」

A(女 神)「えーっとぉー……」



A「あるけど」

B(木こり)「……ん?」

A「いや……尾野先生の、数学の宿題……あるよ? ゴールデンウィークだから特別に、って」

B(木こり)「い、いやいやいや……。そ、そんな分かりやすい嘘で、私のことを動揺させようとしたって……」

A「確かに、数学の授業のときには何も言ってなかったけどー……。帰りのホームルームのときに、担任経由で伝えられて……みんなからめっちゃブーイング上がってたじゃん? あれ、聞いてなかったの?」

B(木こり)「……」

A「もしかして……そのときから、このわけわかんないゲーム考えるのに夢中になってて……宿題のこと聞き逃してた、とか?」

B(木こり)「そ……そう、かも……」

A「じゃあ……いつまでも『木こり』なんてやってないで、今からでもやり始めたほうがいいんじゃない? 先に言っとくけど、私の宿題写させてとか言われても、無理だからね?」

B(木こり)「う、ううぅぅ……」


B(女神?)「ほわんほわんほわーん……。私が不毛な時間を使って無駄にしたのは……果たして、金の週でしょうか? それとも、銀の週でしょうか?」

A「うまいこと言っても、宿題は見せてあげないよ?」


B(木こり?)「いいえ……私が使った時間は、けして無駄ではありませんでした……。だって、だって……どんなに不毛なことをして過ごしても、それは、いつか大事な思い出になるのですから……。高校時代のゴールデンウイークは……金の週でも銀の週でもなく、かけがえのない……『青い春』なのですから」

A「現実逃避してないで、さっさとやるっ!」

B「……はい」



おしまい。

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