第2話

B(木こり)「ああ、斧を泉に落としてしまったわ」

A(女 神)「ほわんほわんほわんほわーん」

B(木こり)「……その効果音、あなたもやりたかったのね?」


A(女 神)「あなたが今落としたのは、この金の斧ですかー? それとも、こっちの銀の斧ですかー?」

B(木こり)「いいえ、そのどちらでもないわ」

A(女 神)「じゃあ、こっちの普通の鉄の斧ですかー?」

B(木こり)「……」

A(女 神)「あれ、無視?」

B(木こり)「……」

A(女 神)「ねえ、ちょっと?」

B(木こり)「……今、鉄の斧どうやって出したの?」

A(女 神)「は?」

B(木こり)「最後に出した、鉄の斧のことよ」


A(女 神)「そ、それはもちろん、泉の中から……」

B(木こり)「いえ、そうじゃなくて。最初、あなたは金と銀の斧を持って泉から出てきたわけでしょう?」

A(女 神)「うん、そうだけど……?」

B(木こり)「つまり、左右の手にそれぞれ金の斧と銀の斧を持った……二刀流の成金バーサーカー状態だったわけよね?」

A(女 神)「言い方!」

B(木こり)「そんな両手がふさがっている状態で、『こっちの普通の斧ですか?』って……え? あなたの中の女神って、手が三本あるの? もしかして、ヒンドゥー教の神なのかしら?」


A(女 神)「ち、違うから! え、えっと……そ、それはもちろん……あ、あれだよ! 足を使ったんだよー! 足で、器用に泉の中から鉄の斧を……」

B(木こり)「えぇっ⁉ そ、そんなっ⁉」

A(女 神)「今度は何⁉」

B(木こり)「私の鉄の斧を……木こり家先祖代々、大事に大事に使ってきた大切な斧を……足で持つなんて! ひどいっ!」

A(女 神)「そんなの知らんよ⁉ 勝手に設定付け足さないでよっ⁉」


B(木こり)「ああ……大事な家宝だったのに……女神様の、水虫まみれの足で……」

A(女 神)「だから、嫌な設定を付け足すなっ! じゃあやっぱ今のナシ! 足じゃなくて、最初から小脇に抱えてたの! つまり、両手に金と銀、脇に鉄の斧を持った状態で……」

B(木こり)「ああ! 大事な家宝が、女神様の臭い脇の下で……!」

A(女 神)「さっきから、風評被害がひどい!」

B(木こり)「そ、そうか! さっき『持ち手の部分が臭かった』のは、女神様が足とか脇で持ってたから……」

A(女 神)「嫌な伏線回収もやめろや! っていうか、それ言ったらさっきの女神はあんたでしょうがーっ! あと、そもそも家宝だったら泉に落とすんじゃないよっ!」




B「ふう……これで、今回も私の勝ちね」

A「いやいやいや……どういうルールで勝敗決めてる?」

B「じゃあ、また攻守交代して二回表よ」

A「いったい、何回までやるつもりなんだ……」

B「ちなみに私の演じる女神は、斧を空中に浮かせることが出来ます」

A「あ、それいいな⁉ 私のも、それにしとけばよかったー!」

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