怒り爆発

 波留は唾を、ゴクリとのみ込み幸をみていた。

 余り気乗りしないが幸は、仕方なく身構えている。

 二人は身構えながら間合いを取っていた。


(どう攻撃してくる?)

(幸は、どんな戦法でくる気だ?)


 お互い警戒している。


(このまま見合ってても、時間のむだか)


 そう思い幸が先に仕掛け、波留に跳びかかった。

 それをみた波留は、咄嗟に横に避ける。

 それに気づき幸は、瞬時に波留の腕を掴んだ。

 まずいと思った波留は、幸の腹を蹴る。だが、ビクともしない。


「おい、どんな鍛え方してんだよっ!」

「普通に鍛えてるだけだ!」

「普通……って。いやいや、普通じゃないだろ!」


 そう言い波留は、幸との間合いを取った。


「んー……これでも転移してくるまでは、陸上部にいたからな」

「陸上部……なるほど。だけど……大学なら、サークルじゃないのか?」

「はて? 俺は、まだ大学に入ってないぞ。まあ……推薦は決まってはいるけどな」


 それを聞いて波留は、ジト目で幸をみる。


「……まさか、十八なんて言うなよな。それとも留年しているのか?」

「なんか、凄くムカつく言い方だな。んー……そもそも、なんでみんな俺が年上にみえるんだ?」

「老け顔、性格がしっかりし過ぎてる。体格が良すぎだ!」


 波留は皮肉を交えながらそう言い放った。


「おいっ! それって、本気で言ってるのか?」

「だったら、どうする?」

「ガッカリだよ。他の二つは許せる。だが、人の容姿をそんな風に言うなんてな……まあ転移前に何度か言われたことはあった。そのあと俺が懲らしめたけど……因みに中学の時だ」


 そう言い幸は、両手を組みポキポキ鳴らし始める。その後、首もポキポキ鳴らし始めた。


「フッ、脅しのつもりか? まるで不良がとる態度だが……お前は、スポーツをやってるヤツだ。喧嘩なれしているようにはみえない」

「そうか……そうだな。中学二年までは、結構やんちゃしてた。それ以来、喧嘩らしいことをしてないから……かなり鈍っているかもしれんが」

「フンッ、まあいい。本当かどうかは、やりあえば分かることだっ!」


 波留はそう言い幸に殴りかかる。


「遅いっ!」


 そう言い放ち幸は、波留の拳を素早く避けた。それと同時に、波留の顔面を思いっきり蹴る。

 波留はそれを避けられず、真面に幸の蹴りが顔面に直撃した。

 だが幸の攻撃は、それでとどまらず……。

 幸は間髪入れず波留の懐に入ると腹と顔を殴る。……かなり怒っているようだ。

 そして幸は、とどめとばかりに地面に叩きつけた。


「グハッ!!」


 波留は、なすすべなくやられ気絶する。それと波留の顔は、かなり腫れあがっていた。それだけではない、口の中を切っているらしく少し血が流れている。


「ハァハァ……やり過ぎたか。フゥー、やっぱり殴り合いは後味が悪い。だから、族を辞めたんだよな」


 そう言い幸は、波留のことが心配になり覗き込んだ。


「良かった……息はある」


 幸はその後、ミクセアと星奈とコリュカとミフェナとライゼルに終わったことを告げる。

 そして幸たちは波留がある程度回復するのを、しばらく話ながら待ったのだった。

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