目覚めると謝罪と能力の使い方と

 ここはザルべドルの町長の屋敷。

 あれから波留を回復させるも、目覚める様子がなかった。そのため幸は波留を担ぎここまでくる。

 当然、ミクセアと星奈とコリュカとミフェナとライゼルも一緒にだ。


 波留は現在、ベッドに寝ている。その近くには、ライゼルが心配そうにみていた。


「どうみても、アレってハルが悪い。んー……コウって、能力があったら最強だったんじゃ。そう思うと、ゾッとする」


 そう言いライゼルは、波留をみている。


「んー、ん……ううん……」


 そう唸りながら波留は、徐々に目を開いた。


「あ、ハル! 起きたんだね……良かった」

「ライゼル、ここはどこだ? それに俺は……」


 そう聞かれライゼルは、波留にここまでのことを説明する。


「そうか……情けないな。俺は勝手にやきもちを焼いて、幸を怒らせた。……謝っても許してもらえないことをしたのに……申し訳ない」

「うん、ちゃんと謝った方がいいと思うよ」

「そうだな。だけど……許してくれると思うか?」


 そう言い波留は、俯き一点をみていた。


「どうかは分からない。でも一番、コウがハルのことを心配してた。だから謝れば、大丈夫なんじゃないかな」

「そうだよな……例え許してもらえなくても、謝っておいた方がいいか」


 そう波留が言うとライゼルは頷く。

 そうこう話しているとノックされ扉が開いた。その後、幸が部屋に入ってくる。そして、波留のそばまできた。


「波留、起きたのか……良かった」

「ああ、幸……すまない。謝っても、許してはくれないと思うが」


 そう言い波留は上体を起こすと頭を下げる。


「いや、大丈夫だ。でも、中々目を覚まさないから心配した。俺が殴ったせいで、このままなのかと……」

「お前……相当な、お人好しだな。最初は、関わりたくないオーラが凄かったけど」

「……無能力を知られたくなかっただけだ。だが波留は、そんな俺を笑わなかった。俺の無能力を笑わなかったのは、波留とライゼルを入れて五人か」


 そう言いながら幸は、何人いるだろうと指を折り数えた。


「幸、お前は……不思議なヤツだ。それに無能力でも……いや、能力があったら相当強かったかもしれないな」

「どうだろうな。ギフトにもよるだろうし……」

「そうだな。俺みたいに、壁しか出せないヤツもいる」


 それを聞き幸は首を横に振る。


「壁は、使い方次第じゃ強いぞ」

「はて? 壁が強い……身を護ることしかできない。それなのに強いって、どういう事だ」

「壁を複数出せるよな?」


 そう言われ波留は頷いた。


「それなら、敵を挟むことができるんじゃないのか?」

「……挟む……確かにできる。って、とんでもなく怖い発想するな」

「そうか? でも、それだけ……能力って使い方次第では強くなるんじゃないかと思う」


 それを聞き波留は考え込んだ。


「使い方か……そうかもしれない。能力は、使う者によって良くも悪くもなるってことだな」

「ああ、そういう事だ。それでこれから、星奈たちを交えて話したいことがある」

「セナ……あのお前の腕にしがみついてたヤツか?」


 そう言われ幸は頷いた。


「そうだが……まだ、気にしているのか?」

「そうだな……まあお前は、そのつもりがないみたいだからこれ以上言わないでおく」


 そう言うも波留は、ジト目で幸をみている。

 そして幸はその後、波留を動かせないため星奈たちをここに連れて来て話をしたのだった。

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