反撃開始

 ここはバルデアの森。そして洞窟付近だ。

 幸とミクセアは、波留とライゼルから遠ざかった場所までくると気配を探る。


「ミクセア、気配は?」

「なんとなくですが……二人の気配、こっちに向かって来ています」

「あとは位置か」


 そう幸が言うとミクセアは、周囲を見渡し気配が感じる場所を探した。


「崖の上に居るわ」


 それを聞き幸は振り返り、崖の上へ視線を向ける。


(どこだ? んー……ミクセアは、どうやって気配を探っている。やっぱ……分からないか)


 そう思い苦笑した。


「ミクセア、ここからじゃ分からない。だが向こうは、俺の位置を把握している。ってことは、みえる位置に居るんだよな?」

「そうだと思うわ。でも、気配は分かるのですが。ちゃんとした位置が把握できません」


 そう言われ幸は、思い悩んだ。


「…………考えても分からない。フゥー、今やれることをやるしかないか」


 そう思い幸は、近くに転がっている石を持てるぐらいの量だけ拾う。その石を一個、渾身の力を込めて投げる。するとその石は、崖の手前で落下した。


「やっぱり、無理か。距離があり過ぎる」

「ですが、よくあそこまで石を投げられましたよね」

「そうか? んー……あと少し距離が縮まればなぁ。いや、そもそも石なんか投げても意味がない」


 そう言いながら幸は、持っている石を地面にばら撒く。


「んー、ここでみてるだけって云うのもなぁ。なんかいい方法ないのか?」

「私の魔法で攻撃してみましょうか?」

「その方が早いか。そうだな……ん? そうか! それなら……上手くいけばだけど、目くらましになる」


 幸はそう言いミクセアをみる。


「成功するか分からないが。俺はその間……ミクセアが攻撃した方へ向かう」

「分かりましたわ……ご武運を祈っています」


 そう言われ幸は、真剣な表情で頷いた。その後、崖の方を向く。そして、キッと睨みつけた。


「さてと、やるぞ!」


 その言葉を聞きミクセアは、星奈とコリュカがいると思われる場所を確認する。その後、その場所へ向け両手を翳した。


 《連雷撃!!》


 そう唱えると崖の上空に黒い雲が現れる。そこから、無数のイナズマが放たれた。そして、ランダムに星奈とコリュカの周囲へ落ちる。

 既に幸は、その攻撃と共に崖の方へ駆け出していた。


 ◆◇◆◇◆◇


 その頃、星奈とコリュカはと云うと……。


「うわぁ〜、いきなり攻撃してきたぁー!?」

「凄い……です。私……達……のぉ……居場所……がぁ……分かる……なんて、ねぇ」


 そう言いながら二人は、イナズマを避けている。


「クソォォォォー、これじゃ見失うぅ〜!! コリュカ、なんとかしてくれよ」

「んー……どうしよう……かなぁ〜」

「どうしようかなぁ……じゃなくてさぁ」


 星奈はイナズマをかわしながら、涙ぐんでいた。

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