女神のチートな贈り物

 ここは崖の下。幸は猛スピードでここまで来ていた。


(この上に居るのか……。どうやって登る? 流石に、この重いバトルアックスを背負って登るのは無理だ。そうなると……)


 そう思いながら、何かいい方法はないかと辺りを見回す。


「考えてる余裕がない」


 幸はそう言い後ろを向いた。そして大きな木を見上げる。


「木、かぁ……」


 再び崖の上をみた。


「間隔的には、丁度いい。んー、これを切り倒すには時間がかかる……無理だ」


 幸はここまで来たのはいいが、崖を登る方法を思いつかず頭を抱える。

 すると、目の前に一本の棒が現れ地面に落ちた。


「棒高跳び用のポール…………これって女神だよな? 絶対……」


 そう言いポールのそばまでくる。


「紙が貼られている。んー……」


 ポールに貼られている紙を剥がすと、幸は読み始めた。


 ――【困っているみたいだから、幸の世界にあった物だけど。これなら使えそうかなと思ったので、転送しておくわね。それとその棒には、能力で高く飛べるようにしておきました。但し一度、使ったら消えるので失敗しないでねぇ。――byサンラアキア】――


 そう書かれていたが、なぜか幸の顔は引きつっている。


(……なんで棒高跳び用のポールなんだ? それに棒高跳び……跳べないことはない。だが……何度かポールを折って、失敗している。

 だから、嫌な思いをしてるから……やらなくなったんだ。それが……よりにもよって)


 ポールを持ちながら幸は、ハァーっと溜息をついた。


「流石に折れないよな? 女神がくれた物だし……」


 そう言いポールをみつめる。


「考えている余裕は、ないよな」


 やるしかないと思い崖の上に視線を向けた。


「一番、低い場所を選ぶか……しくじれないしな」


 そう言い幸は、どこに跳び上がるかを決める。その後、距離を取りポールを持ちながら駆け出した。そしてここだと思う位置にポールを突き立てると同時に、体を反り返るように高くジャンプする。


「……!?」


 思ったよりも高く飛べた上にポールが折れずしなやかに曲がったため、幸は驚いた。


(これならいける!)


 そう思いながらポールから手を離し幸は、狙いを定めた方まで跳んだ。すると崖の上に着地する。


「ハァハァ……成功した」


 そう言い幸は、崖の下を覗いた。棒高跳び用のポールはすでに消えている。


「今回ばかりは、女神に感謝しないとな」


 幸はそう言い、ニヤリと笑うと空を見上げた。


「さて、ここでのんびりしてる訳にはいかない……行かなきゃな」


 そう言うと幸は、星奈とコリュカの方をみる。そしてその後、駆け出した。


 ◆◇◆◇◆◇


 その頃ミクセアは、魔法を使い星奈たちを攻撃し続けている。


「コウ、大丈夫かしら? そろそろ魔力が尽きてしまうわ。ある程度は、温存しておかなければ……回復する時に困ります」


 そう言いミクセアは、そろそろいいかと思い魔法を使うのをやめた。


「あとは、コウを信じましょう。それに戻って来ないってことは、なんらかの方法で崖の上に辿り着いたと思いますしね」


 ミクセアはなんの根拠もなしに、勝手に幸を美化しすぎているようである。

 そしてその後ミクセアは、この場で待機し幸を待ったのだった。

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