エピローグ
エピローグ
「無事に挨拶は出来たか?」
息を弾ませながら戻って来たマリガーネットに尋ねると、にっこりと頷いてくれた。俺の隣に腰を下ろすと、また甥か姪が増えるらしいわと教えてくれる。マロン号の弟妹も、六頭目が無事に生まれたのだそうだ。
「これからは俺達も催促されるのだろうな。今までは、俺が皇太子だったから話題になる事は少なかったが」
「え? 何を?」
「俺達の子供」
下手に意識すると照れて言葉に詰まるので、敢えてさらりと告げてみたのだが。目の前にあるマリガーネットの顔が真っ赤に染まり、つられるように俺の頬も熱くなってきたので、あまり意味はなかったらしい。
「そ、うね……皇后の最大の仕事のうちの一つだものね。お姉さまが次四人目だし、私も同じくらい産めるんじゃないかしら」
「四人の兄弟姉妹か。もしそうなれば、俺と同じだな」
「そういえばそうね。賑やかになりそう」
ふふっと笑った彼女が愛らしくて、衣装を崩さないよう注意しながら肩を引き寄せる。最初の頃はどことなくきごちなく見えた帝国衣装姿も、今やすっかり板についた。
「今日までも怒涛の日々だったけど、明日からは更に忙しくなるのかしらね」
「そうだろうな。今日からは、俺達が皇帝陛下と皇后陛下だ」
呟くと、彼女の口から吐息が漏れた。次いで、皇后陛下、と言う響きが聞こえてくる。
「来たばかりの頃に比べたら、私、少しは成長出来たかしら?」
「勿論さ。業務でも息抜きでも、助かっている」
会話しつつ、よいしょと立ち上がった。そして、座っているマリガーネットに手を差し伸べる。
「さぁ、行こうか」
新しい皇帝皇后の即位を、待ち侘びている愛しき帝国民達の元へ。
誰よりも愛しい、君と共に。
翠玉の令嬢は異国の地で愛を知る 吉華 @kikka_world
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