第3話 もう1人の真なるバナ友🍌🐶
時刻【20時00分】
レジ前にて。
私はレジの液晶に映し出されていく価格へと祈りを捧げていた。
「か、課長代理……」
隣から、佐久間君の視線が刺るような気もするが、ここは気にしてられない。
この結果によっては、息子に来てもらわないといけなくなるのだから。
すると、レジ前に立っている店主から声を掛けられた。
「はい、こちらが控えとなっております」
その手には、レシートのみ。
まるで支払いが終わっているかのような対応だ。
私が受け取ったレシート見て首を傾げていると、店主から驚きの言葉が出た。
「あ、お会計は大丈夫ですよ! ゴリラさんにお代はもらっていますので」
衝撃の事実に、私と佐久間君は、意図せずまたもやお互いの顔を見合わせる。
「はぁ……これもか」
「あはは……これもですね」
してやられたのだ。
気遣いの化身であるゴリラ君に。
全てはゴリラ君の掌の上だった。
ゴリラ君の思惑を理解したことで、ため息を吐きながら2人して頷いていると、その光景を不思議に思ったのか店主が声を掛けてきた。
「あの、どうかされましたか?」
「あ、いや……えっーと、大丈夫です。な? 佐久間君」
そう大丈夫。
何故か心配そうな表情をしている店主(きっと店の対応に不備が合ったとでも思っているのだろう)には、申し訳ないが、ただ、驚きを通り越して感心していただけだ。
ゴリラ君の気遣いという思いやりの心に。
横にいる佐久間君も同じような感情を抱いているのだろう。
「あ、えっ――はい、ですね。少し驚いただけですので」
私に続き店主の言葉へ返事をしているが、心ここにあらずといった感じだ。
どう考えても様子がおかしい私たちを前に、店主は困った顔を浮かべている。
「は、はい、そうですか……」
本当に申し訳ないのだが、今の私たちは頭を整理するのに精一杯だ。
「……なんというか心配して頂いたのに、2人してろくな返事をせず申し訳ない」
「いえいえ、とんでもない! またいつでもいらして下さい!」
「いやはや、そう言って頂けるとありがたいです……料理はとても美味しかったので」
「そうですね、本当にとても美味しかったです。トリあえずバナナも絶品でした」
「嬉しい感想を……お2人共ありがとうございます! また同じ味を提供できるように、いやもっと美味しい物を作れるよう精進していきます!」
そして、私と佐久間君は、店をあとにした。
🐓🍌🐻
時刻【20時10分】
〔天ぷら道〕と書かれた暖簾の前にて。
「――では、帰りますか……課長代理」
「うむ……」
未だに頭の整理ができていない。
一体全体何がどうなってこうなったのだろう……。
考えれば考えるだけ、わからなくなってきた。
そんなことで頭がいっぱいになっていると、横にいる佐久間君が声を掛けてきた。
「色々とツッコみどころはありますが……それは月曜日、直接ゴリラ主任に聞きましょう」
いや、本当に佐久間君の言う通りだ。
ここでいくら想像したところで埒が明かない……先ほどまで、そう思っていたのに……部下である佐久間君に気付かせられるとは……。
まぁ、おかげで佐久間君と仲良くなれたし、良しとしよう……うん。
「うむ……もうどこからツッコんでいいのかわからないしな……あ、でもトリあえずバナナは美味しかったな」
「ふふっ、それはそうですね! 芋ような食感にさっくりとした衣、後味はほんのり甘い感じ……あれは蜂蜜に合いますね」
「はははっ、確かに蜂蜜に合いそうだな。アイスいいんじゃないか?」
「アイスですか……なるほど、合うかもしれませんね」
「うむ、だろう? よぉし! 今度は私がゴリラ君と皆を連れてくることにしよう」
「えっ、大丈夫ですか?」
「そこは……年1で頼む――」
「ふふっ、承知致しました! その時は皆で」
――こうして、私と佐久間君は、何処かのお節介で気遣いが過ぎる可愛い部下(ゴリラ)のおかげで、もう1人、真のバナ友となることができましたとさ。
ウホではないな……でも敢えて。
🍤🍤🍤🍤🍤🍤🍤
🐓🍌ウホウホ🦍🐻
🍤🍤🍤🍤🍤🍤🍤
―――――――――――――――――――――――
作者のほしのしずくです🌟
まずは最後まで読んで頂きありがとうございますm(_ _)m
なんと今回は、ゴリラ主任が出てこない不思議な回となっております(´∀`*)ウフフ✨
そして、KAC20246「トリあえず」に沿った物語です🌟
読んだ人が幸せになりますように🌟
笑顔でいれますように✨🍌🍌🍌✨
引き続き磨いていきます💪🔥
ゴリラ物語特別編🦍🍌✨ 〜トリあえずバナナ〜 ほしのしずく @hosinosizuku0723
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