第10話 服装チェンジ!


「ねぇ、レイ。聞いて欲しい事があるの。」


 地上に戻ってレイがアイテムを換金した後、昼食が終わり、ダンジョンに戻っている際中に胡桃に話しかけられた。


「どうしたの?胡桃?」


「僕は30階層までしかついていく事が出来ないんだ。」


「へぇ、それだけ?」


「いや、それだけじゃ無くて、これから未知の階層に行くんだったら僕はレイの足を引っ張りたくない。だから、他の強い人達とパーティーを組んだ方が良いんじゃないかな?」


 胡桃の話は確かに正しいのかも知れない。けど、ただの人間とパーティーを組んでも、きっとトラブルが起きた時、俺はその人間達を助けないと思う。

 しかも、俺と同じくらいの強さのパーティー等どこにもいないと思う。きっと、足手纏いが増えるだけだ。


「いやいや、仲良くない人とは組めないよ。」


「そんな事言ってたら、な性格も治らないし、自分に何かあった時、誰も助けてくれないよ。」


「ゔ……」


 胡桃は普通の事を言っているつもりだったが、レイには心当たりがある様で、何故かダメージを受けていた。


「いや、ごめんね。」


「…胡桃がずっとパーティー組むなら許す……。」


「今日は良いけど、次からは無理かな。」


「じゃあ、許さない。」


 レイは胡桃を離さないつもりでいた。何故なら、初めての友達と言う事や、会話していて話が尽きないのは初めてだったからだ。しかし、それは建前で本音はこうであった。

 嫌だ、嫌だ嫌だ!一人で配信何て寂しいし、何より会話が尽きちゃうよ!!


「許さなくて良いから新しい友達を作ろうね〜。」


「ねえ胡桃、いつどこでそんなに言葉鋭くして来たの?痛いよ。」


「痛くて結構。僕には関係ないからね。」


「友達なのに…」


 (ふふ、やっぱりレイをいじるのは楽しいな。こんなに楽しいのは久しぶりだよ。)


 胡桃の言葉が鋭くなったのは、皮肉にもレイと仲良くなった事であった。レイと気軽に話せる様になった事で本来の胡桃が出てきたのであった。

 ちなみにそれを知らないレイは友達になっちゃいけないウザいタイプの奴と友達になってしまったと後悔していた。


「そう言えば、レイって服それしか持ってないよね。」


「あぁ、これ?うんそうだよ。」


 レイは胡桃に服の全体を見せてくる。


「元が男性用だから股下が地面に擦れて歩きずらいんだ。」


「じゃあ新しく女性用でも買えば?」


「女性用か……胡桃が選んでくれるなら良いよ。」


「任せて!」


 俺たちはダンジョンに向かう前にダンジョン街で、女性用の服装装備を買う事にして、胡桃におすすめの店に連れて行ってもらう事にした。

 ただ、一つ思うのが胡桃の今の装備がかっこいい服フード付きの長いポンチョだから、店を案内してもらうが、おもちゃにされないか心配だ。



***



 案の定おもちゃにされた。ちょっとダイジェスト気味にどう言う感じにおもちゃにされたのか教えるから聞いてくれ。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「ねぇ、胡桃。私も胡桃と同じのかっこいい服が欲しいんだけど…。」


「いやいや、ダメだよそんなの!レイは可愛いんだからオシャレしないと!!」


「えっ、でも!」


「じゃあまずはあっちのお店から!!」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 1店目


「このセットアップ何て良いんじゃないかな?」


「えっこれ実用性ある?」


「あるよ!何より似合ってる!ただ、自分で合わないと思ったらやめても良いと思うよ。あ!」


「何!?」


「この寒色コーデのセットアップも良いと思う!」


「はぁ…そうなんだ……」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 2店目


「えっとこれは?」


「韓国風セットアップコーデだね。別の国の主流なファッションなんだけど、可愛いよね。レイなら似合うと思うよ?」


「ごめん、大丈夫。」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



 そんな感じでおもちゃにされた。

 ちなみに、俺の服装は三店目に行った、胡桃の服装を売っていた店で買った。

 服装の見た目は黒と白のゴシック調で胡桃曰く、赤ずきんの服装をベースとした形で、服の上から羽織るフード付きケープコートは狼の耳がついている様な感じだ。

 機能性はどうだって?勿論良いとも。それこそ、所持金が半分以上無くなるくらい良いとも。まだ使用していないけど。


「めっちゃかわゆい。」


「凄い気に入ってるね。」


「コメントが楽しみだよ!」


 いや〜、このファッションセンス神がかってるよね!

 皆んな何て言うかな〜?かっこいいとか可愛いとか、はたまた、真似する人も現れるかな?今、マジで皆んなの反応が楽しみだ!



***



『中二病悪化してて草』

『中二病ってすぐにわかるファッションになったか…』

『う……頭が………』

『これは闇の力を解放する為の礼装!?』

『↑やめとけ、そこから先は修羅の道だ……。』


 ダンジョン入り口について、新衣装をお披露目するために配信をつけたら皆同じ様な反応を返してくる。

 何で皆んな「中二病だ。中二病だ」って言うんだ!?この服装はかっこいいのに、そして、可愛いのに。いや、この服装は少数派の魔族が暗黒魔術を使う為の礼装だったりするのか?


「皆んな………これ、似合ってるよね………?」


「……うん。似合ってるよ。」


『似合ってる!』

『似合ってるから泣かないで!!』

『可愛いよ!』

『かっこいい!!』


 うん。中二病とか言われたが、大丈夫の様だ。ちゃんと可愛くてかっこいいらしい。


「……うん。…うん!似合ってるなら良し!」


「うん、自分が良ければ良いと思うよ。」


「よし!じゃあ今日はこの服装分の代金を稼いでこ〜!」


 正直、配信でする事何てテキトーだ。本当なら今から最下層にでも向かった方が良いんだろうが、時間も昼過ぎを超えている。胡桃の事を考えると今日は日帰り出来る方が良いだろう。


『今日は冒険しないんですか?』

『未知の階層見たいです。』


「えーっと、ごめんね。今日許可が降りたばっかだから準備が出来てないの。」


「ジェーンドゥなら、明後日か5日後には未知の階層に行くと思うよ。勝手な想像だけど。」


「ねえ!私の事、ダンジョン大好きな性格に印象操作しないで!!」


『wwwww』

『ww』

『探索者に見せかけた漫才師だったりする?w』


 全く、胡桃の性格はいつ変わったんだ?昨日の今日だぞ?まぁ、いずれ落ち着くだろうから、ダンジョン1階層に向かう事にする。

 俺たちはダンジョン入り口から高さ7mくらいの下り坂を降りて、一階層にやって来た。


「今日は最短距離で二階層に行くんじゃ無くて、遠回りして行ってみよ!良い、胡桃?」


「良いんじゃない?道を覚えるのは重要だしね。」


『何やかんやで1階層での死傷者数が一番多いから気をつけて!』

『それはファンタジーゲーム馬鹿が原因だろ。』

『1階層、遠回りする必要が無いからした事が無かった!助かる!』


 今回の配信は冒険をしない事を告げてるからか、視聴者数は3000人弱だ。なんか悲しくなって来た。美少女パワーもここまでなのか。


「遠回りって言っても、遠回りの地図何て無いから、胡桃に書いてもらう事になるけどごめんね?」


「新しい場所を見れるなら、地図を書くことなんて大したことないよ。」


『胡桃先輩の名言来た!!』

『胡桃の言うことかっこよ!』

『地図を書くって事はライト無し?』


 さっきまで使っていたライトがあるが、胡桃が地図を書くとなると持つのは俺になるな。


「ライトは私が持つよ。」


「え、良いの?」


『ジェーンドゥがライトを持っただと!?』

『何……だと…!?』

『明日は天気雨だな……』


「明日、雨なの?今日は1階層探索だけして戻るかぁ」


 明日、雨が降るのか。この服が濡れる前にダンジョンから出ないとだな。


「え、明日雨なの?ジェーンドゥの雨具もついでに買っとけば良かったね。」


『あ、違……』

『これが天然か』

『美少女で身元不明で天然とか性癖ドストライク何ですけど!』


 今、1階層の入り口から後ろに進みながらコメントに返答を返しているが、てんねんって何だ?添加燃料の事か?

 まぁ良い、今は雨になる前にダンジョンから出るのが最優先だ。


「てんねんかぁ、色合いで人の事貶すのは良くないからね?」


「ジェーンドゥ、多分それ天然石の天然だと思うよ。」


「へ〜。私って自然生まれだったんだ。」


『う〜んこの。』

『本物の天然は気づかないもんなんだなぁ』

『返答が草生える』

『↑自然生まれだからって、誰が上手いこと言えと。』


 私が天然?なおかげでコメント欄も結構動いて、見てて楽しい。所で、胡桃も天然なのかな?

 

「ねぇ、胡桃っててんね、ん!?」


 ライトの照らす先に人の足が見えた。急いで上の方も照らして見たが、どうやら体は全部あるようだ。今の所、暫定死体って事で良いんだろう。


「胡桃!頼んだ!」


「任された!」


 胡桃は前に出ると、死体?にヒールをかけた。

 しかし、何の反応もない。これは本当の死体を発見してしまったのだろうか。ちなみに胡桃は事の緩急についてこれず、パニック状態になっている様だ。


「胡桃!落ち着いて。」


「ヒール!ヒール!ヒール………ごめん。反応が無くて、焦ってた。」


「息はあるの?」


「息はかろうじてあるって感じかな。一応、キュア!」


 胡桃がキュアと唱えると、その者の息が落ち着いていく。どうやら、状態異常もしくは、病気だったのかもしれない。


「この人、どうする?」


「どうする?って言われても、一旦セーフティゾーンに連れていくしか無いでしょ。幸い、ここから近いんだし。」


 俺たちはこの者をセーフティゾーンに連れて行き、その者をそこに下ろすと、また1階層裏道を歩き始めるのだった。

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