第36話

 最終的に俺が選んだ銃は、FLAR-11というARアサルトを買うことにした。前の2文字が会社名で、AR-11という番号は11番目に作ったARの銃だという事だ。


 新しいものになれば性能が向上するのだが、その分値段が高かったりするので、新人には縁のない話だ。


 FLAR-11を勧められた大きな理由として、他の勧められた銃もそうなのだが、強化パーツを付けられるようになっており、改造すると強化弾を使えるようになるらしい。


 常に特殊な弾丸を使うとコストパフォーマンスが悪く、儲けが出ないので使い分けるのが、初級者の中でも上位になるタイミングらしい。


 その頃になると、新人の登竜門と呼ばれる遺跡を探索して、自分たちのスキルを伸ばすために行動をするようになるのだとか。


 そこで、通常弾ではなかなか倒せないが、強化弾であれば1~2発で倒せるモンスターが出てくるようだ。


 段階的に敵が強くなっていくのは、初心者としては嬉しいところだな。


 FLAR-11を1丁とマガジンを10個、弾丸は1000発ほど購入しておく。明日取りに来る旨を伝え、今日はそのままアジトへ戻ることにした。


 ハンターギルドにも射撃場はあるので、強化外骨格とアーマーが手に入ったら、そこで訓練する必要がありそうだな。


 少し上等な格好ではあるが、街の方から来たことを考えれば、安全を確保するために質の良い服を持ち出してきたと思われるだろう。


 アジトについて、気になった事をナビィに聞いてみる。


「なぁ、ナビィ。受付嬢を見なかったけど、どうなったか分かるか?」


『彼女は、以前から情報を漏らしていたようで、守秘義務違反により拘束された後に、強制労働の刑になりました。漏らしていた情報に、一部見逃せないものがあったようで、即奴隷落ちでしたね』


 強制労働=奴隷と同じ扱いなので、これから死ぬまで奉仕しながら生きることになるようだな。


『リュウ、新しい家に引っ越したら、まずエネルギーパックと充電用の装置を購入しましょう。一番安い奴であれば大して値段は高くないので、訓練用に複数購入しておきたいです』


「訓練はハンターギルドでするんじゃないのか?」


『ギルドでは射撃訓練だけで、近接戦闘訓練は一番近くの下水倉庫でするのがいいと考えています』


「えっ? 近接戦闘の訓練って必要なの?」


『もちろんです。最初は主に回避訓練になりますが、その内回避しながらの射撃や、近接武器での反撃なども訓練していく必要があります』


 モンスター相手にそんな技術が必要なのか? と思ったが、ハンターに襲われた時など、反撃できないままに死んでしまう可能性があるので、しっかりと訓練をする必要があるそうだ。


 一通りの訓練が終わったら、今度は荒野で訓練を行い、射線の切り方や反撃の仕方、逃げ方などを学ぶようだ。


 ハンターって思っている以上に、覚えることが沢山あって大変だな……


 知識が無くてもできるが、トラブルを起こさないために必要な知識は着けておく必要があるのだ。


 今日は、いつも通りのストレッチをしてから、快適なベッドで寝ることにした。



 次の日。


「今日でここも最後だな。荷物を持って移動すると怪しまれるだろうから、マンホールの部屋に置いて後で下水を通って取りに来るかな」


 昨日に続き上等な格好をして、ハンターギルドへ向かう。今日は予定していなかったが、確認したいことがあったので裏口から入っていく。


 途中で鑑定士に見つかり、何をしているのか尋ねられた。


「アーマーと強化外骨格用のエネルギーパックと、その充電器が欲しのですが、一緒に購入できたりしないですか? 安物でいいので、訓練に使うエネルギーパックが欲しいと思いまして……」


「なるほど。クランに入っていないのですから、訓練に使う安いエネルギーパックが欲しいのですね。ギルドマスターに言っておきますので、連絡をお待ちください」


 よし、これで購入は問題ない。


 家の方も問題なく入居できる状態になっているそうなので、シルバーブレットによって銃を持っていこう。


「こんにちは。昨日の銃を取りに来たのですが、問題ないですか?」


 カウンターにお姉さんが座っており、その前に同年代くらいの女性が3人いた。


 不躾な目でこちらを見ていると、


「新人ハンターをそんな目で見ないの。先輩なんだから、もっと優しい表情をしておきなさい」


「男なんて、どうつもこいつもどうしようの無い奴らばかりだから、これでいいのよ」


 一番きつそうな表情をしていた女性が、男性不審バリバリの発言をしてくる。他の2名も同じようなものだろう、大した差のない視線でこちらを見ている。


 スラムの人間であれば、この程度の視線は日常茶飯事なので、気にもならない。ここは街の中なので、睨み返したところで痛めつけられることも無いので、安全な場所だと言えるだろう。


「ごめんね。あの娘たちは、過去に色々あってね。男性ってだけでちょっとね……」


 苦笑しながら、昨日購入した銃を出してくれる。


「いえ、気にしないでください。スラムにいれば、見ていただけで半殺しにされることもありましたから、ただ睨まれているだけなら、特に害はないので問題はないです」


 スラムという言葉を聞いて、3人はギョッとした表情をしているが、気にせず荷物を受け取る。


「自分は運よくお金を手にできたから、あの場所から抜け出すこと成功しました。そのお金も、家を借りたり銃を買ったりして、ほとんどなくなりましたけどね」


 少し嫌味っぽく、お金に苦労している事を口にする。


 スラムと聞いてギョッとした表情をしていたので、おそらく街の中の出身なのだろう。スラムの人間ほど苦労しているようには見えないから、嫌味になっただろう。


 そのままお店を出て、


「ナビィ、何もないと思うけど、あの3人をマークしておいて。何かこっちにアクションを起こしそうだったら、教えてほしい」


『了解です。男性嫌いのようですので、向こうから絡んでくる可能性は低いと思いますが、会話などにも注意しておきます』


 新居へ着き、鍵を使って扉を開ける。


 2つのカギを同時に回さないと開かない扉なので、簡単に入ることが出来ない扉となっている。そのカギもキーピックし難いとされる、ディンプルキーだ。


 電子キーだと、簡単に開けることが出来てしまうからだ。それなりの機材が必要になるが、1m以内に近付けばコピーできてしまうのだとか。


 玄関にあった金庫に銃をしまった。



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