第35話

 住む場所は、倉庫から少し離れていたが、わざわざ荷物を移動させるような距離ではなかった。目星をつけていた1つで、敷地内にマンホールがあり、閂も設置されていた。


 俺が借りた家は、一軒家だ。


 一軒家といっても、2LDKの2階建てで敷地面積も広くない、画一的な見た目の住宅が並んでいるエリアといった感じだ。


 俺が借りても違和感がなく、マンホールがあることで他の物件より安く借りれている。


 マンホールがあると何で安くなるのかは良く分からなかったが、安くなるなら反対に俺にとってはありがたい事なので、何の文句もない。


 他にお勧めされた物件の内、半数以上は敷地内にマンホールがあり、周囲の相場より半額位安くなっていた。マンホールが無い物件は、値段が同じくらいでもとにかく狭かった。


 今のアジトよりも狭かったので、荷物が少ないとはいえ、さすがに遠慮している。


 ただ、入居するのは明日以降と言われた。



 まだ時間があったので、おススメの銃器販売店を教えてもらい、そこへ向かっている。


 ギルドからは少し離れているが、品ぞろえも良く自分に合った銃器を見つけられるだろうと、聞いている。


「えっと……ショップ・シルバーブレット……もうちょっと何とかならなかったのかね、この店名。聞いた時、吹き出しそうだったわ」


 店の前につき、教えてもらった時の事を思い出した。


 店なの中に入ると、20代前半くらいの女性がカウンターに座っていた。店主は……女性?


「すいません。今日は、銃選びにきたのですが、購入は明日にしたいと思っていますができますか?」


「いらっしゃい。見た感じ、新人さんかな? 購入は明日にしたいっていうのは、どういうことかな?」


「明日にならないと入居できないので、今日銃を持って家に帰れないんです。お金は今日払うので、明日取りにくる形ではダメですか?」


「そういう事ね。問題ないわよ。選びたいってことは、ハンターライセンスを持っているのよね、提示してもらっていいかな?」


 そう言われたので、ギルドで渡されたハンターライセンスを、お姉さんに提示する。


「銃を選ぶのに試射する場合は、弾の値段がかかるけど、問題ないかな? 一応、予算も聞いておいていいかしら?」


「問題ありません。予算は弾丸とは別で、200万ほどを考えています」


「おぉ~、新人なのに、結構注ぎ込むのね。銃には相性もあるけど、見た目によるカッコよさで、気分が変わる人もいるのね。君はカッコいい見た目のがいいかな?」


「……見た目より、性能重視がいいです。これから命を預けるものなので、信頼性の高い名銃とかがあれば嬉しいです」


「どのメーカーの銃も一定以上の信頼性があるから、見た目にこだわらないのであれば、銃の使用用途で考えるのがいいかもしれないわね。どういったふうに使いたいと思ってるのかな?」


 俺はお姉さんに、使用用途を伝える。


 俺が考えているのは、この周辺で出てくるモンスターをある程度の距離から狙って倒せる事が前提で、いざという時のために数発でいいから、1ランク上のモンスターが倒せる弾を撃てる銃がないか聞いてみた。


「それなら、ARアサルトSPスナイパーだけど、君ならARアサルトかな。SPスナイパーは、性質的に違う種類の弾丸を撃ち分け難いからね。


 それと、距離が離れれば離れるほど、命中率が下がるのは知っているよね? 離れた位置から倒せるのは、利点ではあるけど失敗するとリスクがあるから気を付ける必要があるわ」


 他にも注意点をいくつか教えてくれた。


 その間に、俺の要望に合った銃を5つ運び出して、試射場へ……


「あれ? カウンターをあけてもいいんですか?」


「あ~、大丈夫大丈夫」


 そう言って、何かのボタンを押すと、建物の上から「今行く」と男性の声がした。お~夫婦でやってるのか……と思ったら、思ったより年を取っていたので、夫婦ではなく親子なのかもしれないな。


「使う弾は、標準の物でいいよね? 銃をカスタムすることで、強めの弾丸を使うこともできるけど、この周囲では過剰になるから、おススメはしてないけど、どうする?」


「通常でお願いします。通常の弾丸で銃を決めたら、最後に1発だけ強い弾丸を撃てますか?」


「了解。じゃぁ、まずこれから」


 1つの銃につき、1マガジン分を撃ってみるという話になった。


 単発で撃ち、銃の反動を実感する。予想以上に強い反動が肩を襲う。初めて撃つ時は、どうしても銃口が上がってしまうのは仕方がないと笑われたが、ここまで制御するのに力が必要なのか……


「1マガジンだと、試射もできない感じね。体が軽いからどうしても、反動を殺しきれていないのよね。慣れてくれば撃つことは出来ても、遠くの的に当てるのは難しいかもしれないわね」


「それでも、使えるようにならないといけないので、頑張ります……あっ、低級の回復薬って売ってますか? それを飲んで撃てば、肩の痛みはどうにかなるって聞いてます」


 お姉さんは、頬をポリポリと掻いて、確かに痛みは何とかなるけど、常に飲みながら銃撃するのは、体に良くないけどいいのか? と聞かれてしまう。


 何とか回復薬を使わずに、全部で7マガジン……210発を撃った。これだけで、俺の肩が壊れるかと思ったわ。


 どうやら、アーマーには衝撃吸収の機能があるモノもあるようで、俺が選んだアーマーにはついていたので、銃を撃つのに問題はなさそうだ。


 強化外骨格でも軽減してくれるので、おそらくは問題なく撃てるはずだ。


 アーマーも購入することを話すと、お姉さんは少し安心した様子をしてくれたので、この人は本当にいい人なんだろうな。


「そういえば、銃弾って30発以上入るマガジンは無いんですか?」


「あるけど、嵩張るドラムマガジンは防衛用に使われるわね。嵩張らない拡張マガジンは、入る弾丸の数によって、値段が変わるわ」


 倍の60発入るマガジンで、通常の10倍の値段がするらしい。90発だと通常の100倍……らしい。空間拡張を行っているマガジンは、便利ではあるがとにかく高くなるのがネックだろう。


 お金に余裕が出てきたら2倍の物で揃えたり、ガトリングのように弾丸をばら撒くタイプは、大容量の空間拡張を行う事が多いそうだ。


 車に備え付けであれば必要ないが、持ち運ぶ場合には必須になってくる装備だとか。個人でガトリングを使うことは無いだろうから、もし使うことがあれば声をかけてね、だってさ。



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