第32話

 街の中に住めれば、身の安全は買える。保険などもあるが、一番は住む家自体に犯罪防止するための仕組みがあったり、その家の中で何かが起これば街が保障するというシステムがある。


 色々な保証付きの家は、それなりの値段で家を借りることになるが、ハンターになるのであれば、そこに住むの事が推奨されるので、俺はギルドを通して借りるつもりだ。


 少なくとも街の中へ住めるのであれば、スラムで生きるよりはるかに安全を確保できる。


 不良ハンターのような奴もいるが、街の中で大きな問題を起せば強制労働は免れないので、大胆な行動を起こす奴はそう多くないとのことだ。


 街の中に住むには税金を納める必要があるため、街が安全を保障するためのお金と言い換えても語弊がないそうだ。


 では、副ハンターギルド長が犯罪を犯しても捕まらなかったのは、証拠が見つからなかっただけではなく、スラムの人間だったり孤児であったり、親に売られた子どもを使っていたからだそうだ。


 上手く隠していたのだろうな。それに街の上層部の人間も関わっていたから、大事にならなかったのだろう……と、ナビィが結論付けていた。



 アジトへ到着して、一息つく。


 お金が入ってくるのはまだ先なので、ここから出るにはまだ時間がかかるだろう。だけど荷物を運ぶ必要があるので、街の中でもマンホールの近くの家を選びたいところだな。


 旧世界の建物が崩壊した後に建てられたのか、メイン道路に沿ってマンホールがあるわけじゃないんだよな。


 犯罪に使われることもあるけど、スラムより内側になる街から下水道を使って外まで出ようとすれば、かなりの時間がかかる。地図が無ければ下水から出るのに、さらに時間がかかるだろう。


 下水道には一部鉄格子があったりするので、注意が必要なんだとか。そういったところには、監視カメラがあるから近付かない方がいいのだとか。


 浄水する遺物を管理しているわけだから、入れないように囲う鉄格子と、迷うように鉄格子が配置されている、嫌らしい迷路のような場所が下水道だったりする。


 まぁ、スラムの人間は人海戦術で通路を発見して、街の外へ出ているようだけど、街の近くでは遺物が少ないため、大した稼ぎにならない。それでも、生きるために外に出るしか無い奴もいるんだよな……


「ナビィ、街中とはいえ、リュックを背負って持っていくのは、無理があるよな? 良さそうな物件を、探すことって出来そうか?」


『荷物は別に隠しておくのはどうですか? 実はこの街を調べた際に、下水道に隠し通路を発見しました。中に何か入っているわけではないですが、倉庫として使われていた場所のようで、薬を置いておくには問題ないかと』


 どこら辺にあるのか聞いてみると、俺たち……スラムの人間が気付かないだけで俺らが通っていた場所にも、似たような隠し通路の先に倉庫があったらしい。


 おそらく、旧世界の人たちが使っていたのだろう。あれだけ長持ちする缶詰とかがあるのだから、非常用に使われていたのではないだろうか?


「誰かに見つけられたら、根こそぎ持ってかれないか?」


『旧世界のシステムにアクセスできなければ、隠し通路の入り口を開くことが出来ないため、リュウが通信デバイスを手に入れれば、いつでも私がアクセスできるようになります』


「へ~、カードキーのようなシステムを使ってるのか? それって、まだ機能が生きてるの?」


『壊れて使えない隠し通路もありますが、使える場所を選びますので問題ありません』


 そりゃそうか。使えない所に案内されても、困るもんな。


 次にハンターギルドへ行くのは、1週間後……裏口の職員用出入口から入るように言われているから、それまでは時間がある。


「そうなると、物件は探しにくいか?」


『ある程度目星をつけておいて、近くへ荷物を運んでおくのはありだと思います。物件を探した後で、近くの倉庫へ移動させればいいかと』


 2度手間にはなるが街に移った後で、スラムで姿を見られるのは拙い気がする。それにマンホールの近くの家を都合よく借りれるかもわからないからな……


「じゃぁ、マンホールの近くの住宅について調べておいてもらっていい? できれば、ハンター対応の物件がいいかな」


『初めて借りるのでしたら、ハンター対応物件は止めた方がいいかもしれません。そういった物件は、荷物や移動手段など、色々な物を置くので広く作られています。


 必然的に値段があがり、保険に対する金額も高くなってしまいます。長い目で見るのでしたら、家を購入して保険を結ぶか一般的な賃貸を借りて、しっかりと稼げるようになったらハンターの物件へ移るのがいいかと思います』


 言っていることが前と変わっている気がするけど、ハンター物件は元から高いって言ってたな。


 稼げていないのに、高い家賃のハンター物件に住むのは、怪しまれるから止めた方がいいってことは、家を買うのも同じだよな? そうなると、一般的な賃貸か……それでも、スラムに比べれば安全か。


「そういえばさ、一般的な賃貸物件に銃器とか持ち込んでいいのか?」


『ハンター物件以外で銃器の持ち込みをする場合は、申請が必要になりますね。場所によっては、銃器の持ち込み不可となっており、銃器を管理してくれる貸しルームなどを別に借りる必要があるようです』


 貸しルームか……ハンターって、仕事がない人間が多いイメージがあるけど、ランニングコストに色々お金がかかるから、なかなか大変な職業だったりするんだな。


 だからグループとかがあって、支え合うようなシステムがあったりするのかな。グループに所属して、何割か報酬を持っていかれるけど、装備や管理に整備をまとめてしてくれるわけか。


 金が無い新人には、重要になってくるんだろうな。人が集まって集団で行動できれば、安全が確保出来たりするわけだしな。


 ある程度成長したら、足枷になることもあるだろうけど、育ててもらったグループを抜けるとなれば、色々な問題が付きまとうだろうな。


 一先ず、目標の街の中に住むというのは達成できるから、自分の新しいアジトを手に入れるまでは、ハンター業で稼げるように頑張って、最終的に自分を守れるようになったら、情報屋って流れかな……



★☆★☆★☆★☆★☆


 ここまで読んでくださり、ありがとうございます。

 『フォロー』や『いいね」をしていただければ、モチベーションにもつながりますので、よろしくお願いします。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る