第33話

 次の日、倉庫の近くの物件が借りられるか分からないので、目星をつけてもらった物件の中心あたりにある倉庫へ、荷物を運ぶことにした。


 方向的に、スラムの子どもたちとも出会うことは無いので、時間を気にせず荷物を移動させられるのがいいね。


 4日もかけて全てのリュックを運んだ。念のためにリュックは前後に背負うだけで、両手に持って運んだりしていない。


 運んだリュックの数は86個。


 その内64個が回復薬の入っているリュックだった。残りの22個の内12個が靴で、6個が衣服系、4つはナビィが運ぶように言ってきた小物が入っている。


 それ以外にも、シュラフやあえークッション、キャンプ用の組み立て椅子等、様々な物を運んできている。良くこれだけ運んだものだ……


 特に回復薬が何でこんなにあったのか、良く分からないが、ハンターとして活動していくなら、かなり重要なアイテムとなるだろう。


 地味にエアークッションも気に入っている。なんというか、俺好みの硬さにしても深く沈みこまないので、結構高級品なのではないだろうか?


 1枚でも問題なかったのだが、3枚重ねた時の反発が一番俺の好みに合っていたので、俺のベッドには3枚エアークッションが積まれている。


 シュラフも便利だと思うが、これから暑くなる季節なので、敷布団と掛布団兼抱き枕のような感じで使っているので、寒い季節の体験は出来ていない。


 遺跡で使った感じだと、かなり寒さをしのげる感じだったので、このまま冬が来ても困ることは無いだろう。


 靴のリュックが多かったのは、どう運んでもかさばるため、リュックの数が増えてしまった形だ。


 その反対に衣服系は、圧縮されておりかなりコンパクトになっていたため、カバンいっぱいに詰め込むと、かなりの重量になるくらい重かった。


「それにしても隠し通路の扉って、ここがひらくなんて思いもしないな……カードリーダーのような物もないし、マークがあるわけでもない。昔の人はどうやってこの場所を把握してたのやら」


『旧世界の端末であれば、近くに移動することでその場所を知ることが出来ます。ですがあけるためには、専用のパスが必要になるので、あけられる人は限られています。緊急時のみ、対応端末があれば開くらしいですが……今は緊急時ではないので、開かないと思われます』


 ここのシステム的には、緊急時ではないと……確かに、街が襲われているわけでもないし、安定している状態といえば安定している状態か。


 これならまず倉庫は見つからないだろう。見つかったとしても開ける方法なんて無いからな。旧世界の端末を持っていようと、場所が分かるだけで専用パスが無ければ開けられないようだしな。


 残りの3日間は、勉強をして過ごすこととなった。



 ハンターギルドへ行く日になり、前回着た時に渡された服を着て歩いている。スラムの人間には見えない位には、キレイな格好をして歩いている。


 お金が手に入ったら、まずは服を買わないとな……他にも、武器防具は最低限必要になる。低級の回復薬も購入しておいた方がいいという話だから、その手配もしないといけないのか……


 自分の部屋に武器が置けなかったら、レンタルルームも借りないといけないし、しなきゃいけない事多いな。



 ハンターギルドの裏口から中へ入ると、ギルドマスターが待っていた。そのまま執務室へ連れていかれる。途中で鑑定士の人とも合流した。


「さて、まずは君の言っていた場所に、きちんと遺跡があった。その中にはかなりの量の手付かずの遺物があった事も確認した。


 量が多かったため、まだすべては鑑定しきれていないが、最終的には20億ほどが君の手に入ることになる」


 最終的には?


「誤解のないように話すが、1円たりとも誤魔化すつもりはない。だが、一度に20億ものお金が君の口座に入ると、必ず動き出す輩がいる。


 銀行の口座をいじることは不可能だが、その出入りを監視することは可能なのだ。何の対策もせずに20億も入れれば、業突く張りの爺共が奪っていくから、こちらの提案を聞いてほしい」


 旧世界のシステムを使っていても、この時代のシステムを通して入金するのであれば、監視できる仕組みがあってもおかしくないという事だな。


 ナビィ、通信端末があれば、俺の口座に入る金額を誤魔化すことが出来るか?


『問題ありませんね。入金した記録すら消すことが出来ます。そのシステムに侵入して、書き換えることも問題ないですね』


 ナビィの能力がエグイ……


「君はハンターになると言っていたね? だから、ハンターとして活動を始めたら、毎回の報酬に今回の報酬を上乗せして、都度君に渡していくという方法を取りたいのだが、問題は無いだろうか?」


「ハンターをしていれば、死ぬこともある。その場合、報酬を全部受け取っていなかったから、いい装備が買えずに死んでしまった……なんてことが起こりえるかもしれない。その保障のようなモノは?」


「君は、本当にスラムの子どもなのかね? その点に関しては、天引きという形になるが、君のランクにあった防具をこちらから提供するか、自分で探して購入したい旨を私にしてくれれば、対応する」


「なるほど……ランクにあったというけど、購入するにはランク制限があったりするってことか?」


「そうだね。低ランクのハンターに、金があるからといって高級な装備を渡すと、必ずといっていいほどトラブルになる。これは、周りが文句を言えないほど大きなグループに所属していない限り、必ずといっていいほど起きる問題だ。


 そしてこの街には、周りが文句を言えないほど大きなグループは無い。便宜上ある一定以上の人数が集まったグループを、クランと呼んでいるから覚えておくといい。


 この街にもクランはいくつも存在していが、お互いがけん制し合っているだけで、圧倒的な力を持っているクランはいないんだ」


 だから、高価な装備を身につけていれば、必ずトラブルに巻き込まれるから、今回の件を提案してくれたようだ。


「多少金がかかってもいいから、ランクの低いモノに偽装できたりしないのかな?」


「メーカーとしては、偽装してランクが低い装備が強くみられるのを回避するために、そういった偽装は行っていない。だけど、知り合いに改造できる知り合いがいるから、防具が決まったら聞いてみよう」


 そう言った後に、鑑定士がカタログを持って来てくれた。



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