第10話 デート?

愛彩あいかお前来るの早すぎるだろ」


今日は愛彩と遊ぶ日。


待たせるのはよくないと思い、待ち合わせの15分前に待ち合わせ場所についたのだが……


「おぉ、氷真!早かったね。そんなにあたしと遊ぶの楽しみにしてたのかな〜?」


愛彩はすでについており、噴水の前のベンチで座っていた。


「いや、それ完全にブーメランだろ」


「あはは、そうかも?」


と笑う愛彩。何か今日様子おかしいな。


いつもなら「自意識過剰!!!」とか言って罵って来るのに。


まぁ、でも楽しみにしてくれてたなら良いか。遊ぶの久しぶりだもんな。


それにしても、愛彩は何着ても似合う。


スタイルや顔が元々良いのもあるが、そもそもの服の合わせ方が上手い。


最近は学校でしか会ってなかったから私服見るのは久しぶりだが、


「……やっぱり愛彩はおしゃれだな」


「え゙、熱でもある?」


……コイツは、人が素直に褒めてるって言うのに……


「ねぇよ!!!素直な感想だ!受け取れ!」


愛彩がニマニマと口元に笑みを浮かべる。


「まぁ?あたしって可愛いからね!!!」


「何だこいつ、調子乗らせるとめんどくさいな」


「そんなこと言って!氷真があたしのこと可愛いって思ってるの知ってるよ!さっき言質取ったから!!!」


「取られてねぇよ!おしゃれって言っただけだわ!!!」


全く、人の発現を捏造するのは止めてほしいものである。


「と、いうか今更なんだが」


「ん?なによ」


俺は自分の口元を指さして、小さな声で言った。


「マスクとかしなくても良いのか?一応モデルなんだろ」


愛彩は中学生になってからモデルを始めた。


昔から、そういう夢があることは知っていたので、愛彩から報告を受けた時は自分の事のように嬉しかった。


女性向けだったので詳しくは知らないが、ファッション誌に出てるみたいで、そこそこ有名人だ。


だからこその心配だったんだが……


「えー、マネージャーみたいな事言うねぇ。もしかして心配?」


「そりゃな、幼馴染だし」


「まぁ、ね。大丈夫だよ。モデルの時は髪下ろしてるし、もっと清楚な感じだから!」


当の本人はめちゃくちゃ呑気だった。それだけでバレないものか?とも思ったが、これまで愛彩はそうしてきてもバレなかったんだろうし、俺が口を出すようなことでもないか。


「早く行こう?時間は有限だよ!」


そう言って俺は手を引っ張られてショッピングモールに連れて行かれた。




















「それにしても人多いな」


「普通じゃない?仕方ないか、氷真は出不精だからね」


そう言って馬鹿にしてくる愛彩だったが……否定はできないんだよな。休日に出かけるの久しぶりだし。


「ふふふ、図星って顔してるね。駄目だよ、外でないと」


「そんな事言われても出かける予定ないからな予定がないからな」


何気なく俺がそう言うと、


「可哀想に……」


と、結構ガチめに憐れまれた。こういうのが1番傷つくんだよな!!!


「あ、着いたよ」


そんな俺の気持ちは一ミリも知らない愛彩が案内してくれたのは綺麗な洋服屋だった。


「ここが来たかったとこ?」


「そう!ここのブランドお仕事で始めて着たんだけど、すっごくおしゃれでお気に入りなの。だから春服も買いたくてさ。男物もあるみたいだから見てみようよ」


「そうだな、良いと思う」


モデルの愛彩がそこまで言う店は興味があるからな。


俺は別に服に頓着があるわけじゃないが、おしゃれなのに越したことはないだろう。


「じゃ、決まりだね。折角だしあたしが服選んであげる」


「どーも」


そう言って店内に入ると、綺麗な服が沢山並んでいた。


流行りとかはよく分からないんだが、なんか……


「モテそう……」


「何その感想!変なの」


そう言ってケラケラ笑う愛彩。


失礼な。よく服を知らない人がひねり出した感想だぞ!!!


「まぁ、でもほんとに良いお店だな」


「でしょ〜?あ、氷真このカーディガン似合うんじゃない?春っぽいし、こういう襟が付いたタイプの服、似合うと思うな」


「そうか?自分では良くわからないけど」


渡された服は、どっちかというと爽やかな印象のくすんだ水色のカーディガンだった。


こういうのは持ってないし、うーん……


葉狼さんもこういう服着てたら振り向いてくれるだろうか。




「ねぇ?」


そんな考え事をしていると、愛彩に声をかけられた。


「どうかしたか?」


「今、来夏らいかの事考えてたでしょ」


え゙?


「なんでわかったんだ!」


あまりに的確だったので驚いてそう言うと愛彩は大きなため息を吐いた。


「だって氷真、来夏の事考えてると口元がニヤニヤしてて気持ち悪いんだもん」


そう言われて俺は慌てて口元を抑える。


「え、まじ?」


「まじまじ。外では特に気をつけたほうが良いよ?完全に不審者だから」


「ぐはッ」


凄まじいダメージ。いくら幼馴染からの発言でも心に深い傷を負う。


うん、次からはちょっと気をつけよう。


「それにさ、今はあたしと遊んでるわけじゃん?他の人のこと思われると少しさみしいな。だからさ」


愛彩が俺との距離を詰めて唇に人差し指をそっとあててきた。


「今日はあたし以外の事考えたら、駄目だよ?」


心臓の音が高鳴る。普段の愛彩、こんな距離近かったっけ。


なんて言葉を返せば良いのかが分からない。こういうときに俺の経験の浅さが出るな……


耳が熱くなる。多分顔は……


そう考えていると、唇から人差し指が離れた。


「なーんて、冗談だよ。二人で服見るなんて何かデートみたいだなぁ、って思ったらからかいたくなっちゃってねぇ。それにしても顔赤くて可愛いね」


「なッ!!」


「ふふ、朝褒めてくれたからお返しだよ。これでチャラだね」


そう言うと愛彩はまた服を見るのに集中し始める。


「愛彩のは!褒めたんじゃなくてからかっただけだろうが!!」


そう叫ぶ俺を愛彩はおかしそうに眺めていた。














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葉狼さんはなびかない 磨白 @sen_mahaku

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