第38話 這い出る恐怖

「なんでだ。なんで蜘蛛たちは引き上げていったんだ?」

みんながみんなもうだめだと覚悟を決めたその時急に蜘蛛たちが迷宮に帰り始めたのだ。


「スケさん!スケさん!私を庇って…そんな。」

粉々に砕かれたスケさんの骨を抱きながらアリアが泣いている。


「貴方の従魔だったの?」

アリルがアリアにそう言った。


「うん、そうなの。でも、私を庇って…」


「でも、さっきの念話って…んー、もしかして、サモンとかって使えたりする?」

アリルは少し考えてアリアにそう問う。


「つ、使えるよ。迷宮でスキルの宝玉で習得したの。でも、スケさんしか呼び出せませんわ。そのスケさんも、もう…」


「呼び出して見て、多分出てくるから。」

アリルはジト目で言った。


「え、でも、ここに死体がありますわ。」


「いいから試してみて。」


「…サモン!スケさん!!」

祈るようにアリアはサモンを唱える。


魔法陣が現れる。

くるくると魔法陣が周り1匹のスケルトンが現れる。


ージャーン、復活!ー


「スケさん!!!」

アリアはスケさんに抱きつく。


「やっぱり…」

アリルがジト目でスケさんを見る。


ーあはは!ー


「さて、なんだかわからないけど、蜘蛛達が去ったから少し休みましょうか。」

アリルが疲れたように座り込む。


ーいや、すぐに逃げるんだー

俺はアリルにだけ念話を送る。


「えっ?」


ーさっきの黄金の蜘蛛とは比較にならないほどやばいやつが来るぞー


「あの一番やばそうなのよりやばいやつ?」


ーさぁ、アリア家に帰ろうー


「うん!スケさん!!ほんとに良かった!」

アリアは強くスケさんを抱きしめる。


ーあぁ、俺は不死身だー


「待って、ねぇ、私たちはどうすればいいの?」

アリルはスケさんに不安そうに尋ねる。


ーとりあえず、ここから離れろ。それだけでいいー


「それでいいのね?…私達は戦わなくていいのね?」


俺は再度アリルにだけ念話を送る。


ー戦ってもいいぞ?今のお前たちなら絶対殺されるがなー

俺はカラカラと笑いながらアリアを連れてアリアの屋敷に帰る。




「もう少しで地上か…」

ボロボロのナクアは少し寂しそうにする。


「大丈夫だ族長。我らは地上では強い。」

ナラがナクアになぐさめるように言う、、


「負けたのだな我らは蟻との…ここでの生存競争に。」


「族長…次の住処は私が誰にも奪わせない。大丈夫だ。族長もこんなにぼろぼろになどさせない。大丈夫だ。」


「ふっ、私の方が強い。それは私の役目。次の住処で蜘蛛の楽園を作って見せよう。」




ナクア達はついに地上に這い上がった。


「これが地上、あれらが人間か。」

地上に出たナクアが見たのは破壊された建物と無数の人間たち。


「すぐに移動する。私に続け一族達よ。」

向かってくる人間たち、逃げて行く人間たち。ナクアは進行方向にいる人間たちを死の魔眼で一睨みで殺して行く。


ナクア達の行軍はだれも止められなかった。


ついに城壁までナクアは辿り着き、力任せに前脚を振り下ろし城壁を破壊する。


そしてナクア達は魔王 ブーモルが治める広大な森林に向かって行った。

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