第39話 魔王ブーモルVSナクア
「ナラ、あれがお前の言っていた森林か?」
ナクアは確かに広大な森林を視界に捉えた。
「あぁ、そうだ。おそらくあれがブーモルとかいうオークロードが治める森林だと思う。」
「ならばこのまま突撃し一気に攻める。本当はもっと時間をかけたいが、一族がもう飢餓状態だ。弱いものはすでに多く死んでいる。」
そうここまでの行軍は急いでいたため、数日間食事も取らずに走りっぱなしなのだ。
無理な行軍に脱落していった蜘蛛も多い。
「あぁ、食事の時間だ。」
ナラがよだれを垂らしながら言った。
森林に入ったナクア達は驚いた。
まず、魔物が圧倒的に弱い。死の迷宮98階層と比べると魔物が圧倒的に弱かった。しかし、肉付きはいいのだ。そして、魔物も多く食料がとても豊富だった。
何より環境がすこぶるよかった。
「ここは素晴らしい。ここだ、私達の住処は!」
「あぁ、族長。ここで楽園を築こう。」
そうしてナクア達は魔王ブーモルが根城とする居城にたどり着いた。
魔王ブーモルの居城は巨大だ。まず高い城壁、深い堀。その中に栄えている都市があり、凄まじい数のオークによって守られている。
幾度となく人間の大軍に侵攻されるも絶対に落ちなかった難関不落の巨城。
だが、ナクアたちにとってこの居城は餌箱でしかない。
「一族達よ、食事だ!あの城を食い尽くせ!」
ナクアは号令を発して攻城戦を開始した。
堀は蜘蛛の巣で無力化され、壁は蜘蛛はものともせず凄まじいスピードで登って行く。
城壁の上ですぐに白兵戦に突入し、圧倒的に蜘蛛が優勢。それはそうだろAランクモンスターが11体、無数のBランクのモンスター、そして深手を負っているとはいえSランクモンスターのナクア。どう考えても過剰戦力である。
やがて城壁は蜘蛛が制圧し、一度も敵の侵攻を受けたことがなかった城下町を蜘蛛が襲う。
ブーモルは捕えた人間、亜人を奴隷にしている。奴隷にされている人間や亜人が多いがそんなのは蜘蛛達には関係ない。
全て等しく肉である。
そしてついに魔王 ブーモルが現れた。
「ふざけるなよ!虫ケラどもが!!!」
凄まじい剣幕でオーク騎士団を引き連れ大剣を振り回して蜘蛛たちを駆逐して行く。
「族長、あれは私がやります。」
ナラが暴れ回っているブーモルの元へ行こうとする。
「いや、私が行こう。」
ナクアが前に出て魔王 ブーマルの元へ向かった。
「お前がこの森林を治める魔王?とかいうオークロードか?」
「お前がこの虫ケラどものボスか!?俺の国をめちゃくちゃにしやがってぶっ殺してやる!!」
ブーモルは大剣をナクアに振り下ろす。
「全く、少し話そうと思ったが…もういいか。ここは我らがもらうぞ。」
ナクアはブーモルの大剣を前脚で受け止めるとそう言い、牙をブーモルに突き立てよとした。
咄嗟にブーモルは避けるが、突如後ろから大きな鋭い前脚で胴体を突き刺された。
「ガハッ!ど、どうして…空間魔法か!」
ブーモルはナクアの前脚を見ると途中から右の前脚がなくなっている。
ナクアは何度も空間魔法を使いブーモルも滅多刺しにする。
だが、流石は魔王。滅多刺しにされてもまだ息が合った。
大きなブーモルの身体にナクアは牙を突き立てた。
ナクアの1番の武器はやはり牙である。鋭く丈夫な牙に強靭な顎、強力な猛毒。それがナクア自分の中で一番信頼するものだ。
魔王 ブーモルはなにもできずにナクアに狩られた。
それからはただ一方的な虐殺。いや、狩りが行われた。
「これで我らは住処を得た。ここに罠を築き、誰にも侵攻されぬよう巣を作る。皆のもの十分食っただろう。罠を張り巡らせろ。ここはもう誰にも渡さない。」
一通りブーモルとの戦いが終わった後、ナクアは一族にそう命じた。
「やぁ!すごいね!うんうん、やっぱり君たちはこの森を選んだか。」
俺は迷宮用の身体、キメラスケルトンリッチでナクアの後ろに転移して話しかけた。
「お前は…あの時のアンデット。なにをしに来たのだ?というかどこから現れた?」
ナクアは死の迷宮出会ったアンデットが急に現れて困惑する。
「いや、ちょっと話して見たくてね。どうだい?迷宮の外の方がいいかい?」
「そうだな、ここはモンスターも弱い、食べ物も豊富だ。棲みやすそうなところだ。」
ナクアは質問に返しながら密かに念話でナラと精鋭の戦士たちを呼び寄せた。すぐにナラ達は到着して目の前のアンデットを取り囲む。
「うんうん、よかったよかった。それで君達はこれからどうするんだい?」
「ここに私達の楽園を築く。そして今度は誰にも奪わせない。」
「うんうん。そうだね。でも、君達だって戦いたくないでしょ?」
「もちろんだ。戦わなくていいならそれに越したことはない。」
「だよね!でも、その見た目で他種族と交渉なんてできると思う?」
「…できないのか?」
「その明らかな捕食者の見た目で戦いは望みませんなんて誰も信じられないよね?」
「そうなのか?」
「貴様は何が言いたいのだ?」
ナラが横から口を出す。
「ふふ、今回俺が君達に交渉できる体をプレゼントしようと思って。まぁ、スキル人化ってやつなんだけど。」
「…それをもらう代わりに我らに求めるものは?」
ナクアは思う。確かに交渉しやすい身体は欲しい。しかし、なにを要求されるのかわかったものではない。
「俺のお願いをこれからできる範囲でいいから聞いてほしい。それだけ。できなかったら別に従わなくてもいい。」
「できなかったら従わなくてもいいのか?」
「あぁ、大丈夫だ。」
「…わかった。」
「よし!」
俺はナクアとナラに人化のスキルを付与する。
ナクアはどんどんと小さくなり長い美しい黒髪の美女に。
ナラは黄金の長い美しい髪をもつ美女になった。
「おぉ、これが人間の体か。軽いな。動きやすい。」
「族長、身体に毛がないです。スースーします。」
「おぉ、2人ともすごい美人だね。…服着ようか。」
そう、2人とも素っ裸なのだ。それはそうだ。だって蜘蛛は服なんか着ないもんな。それにしてもすごい美人だ。2人ともアカデミー賞受賞できるレベルだぞ?
「美人とはなんだ?」
ナラが尋ねた。
「美しい、容姿が優れている、魅力的な人という意味だよ。」
「そうか、我らは魅力的なのか?ならば、私かナラどちらかとつがいになるか?お前は骨だから子を残せないが…?」
「なんでそうなるだ!?」
急にナクアが変なことを言い出した。
「それはそうだろう。お前ももし一族に加えることができたら、我らは誰にも怯えることなく暮らせる。」
ナラが真顔で言う。
そ、そういうことか。
「丁重にお断りさせていただきます。」
「心変わりしたらいつでもいうのだ。我ら2人ともとつがいなってもいい。それだけの価値がある。もちろん、お前は交尾したからと言って食べたりなどそんなもったいないことはしない。」
あぁ、そっか。蜘蛛は交尾したらオスを食べるんだった。こ、こわ。
「と、とりあえず服を着ろ。あっ、服というのはな…」
それからおれは服の説明をしてやっと2人に服を来てもらった。
というか途中から2人とも蜘蛛の糸を編んで服を作り始めた。すごいセンスいいし。
ナラはすごく好奇心旺盛な子みたいだ。服の説明をしたら人間のことを根掘り葉掘り聞かれた。
そんなに知りたいなら今度一緒に出かけてやろうかと言ったら飛んで喜んでいた。
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