49 純子と遭遇しなかった理由
パラレル純子は、勇太最愛のルナの双子の妹。
同じ学校で同じ学年。そのうち会うかと思えば、校内で会わなかった。学校には行っていたが、授業終了と同時に学校を出ていた。
あらゆる人を避けていたそうだ。
階段も3階の端を使っていた。2年の校舎棟は横長。階段は1組の左横、3組と4組の間、6組の右横のさらに奥にある。下駄箱は6組が一番近い。
勇太は3組で、基本的に4組のルナと待ち合わせて3組横の階段から降りる。純子は6組横からダッシュで帰っていた。そしてパン屋に直行。
2か月前、勇太が転生した直後に純子は糾弾されていたらしい。
純子はセック●クイーンの異名を持って同性から羨望のまなざしを受けていた。
しかし、昨年の10月から少しずつ雲行きが怪しくなっていた。
9月までは女子を山ほど抱いた。男子もルナを介して知り合ったりして、計3人と関係を持った。
簡単に言えば、調子に乗りすぎた。これは純子本人談だ。
10月、ルナが彼女として連れてきた女子と自宅で関係を持ってしまった。
女子が大半のこの世界。男子を女子同士でシェアする関係で嫉妬心は少ない。しかし、仁義はある。
男女比1対12の世界では、男女比1対1の世界に比べて女子が男子をゲットするのに使う労力、金銭が大きい。
神経もすり減らす。勇太とルナ、伊集院君どパラ高の婚約者3人のように、女性がノーリスクだった方がレアケース。
梓だって、ゲスだったパラレル勇太程度の男に尽くした。ストレスが極限までたまり、女遊びをしてしまうほど苦悩した。
梓の母葉子も金銭面の不安が生じるほど、パラレル勇太にお金を渡していた。
有名な例は、血筋が名門である伊集院光輝君。産まれた瞬間から、彼の婚約者に娘を据えるために動いた金持ちが多数。億単位の金銭が右から左へと流れている。
過去には一族の存亡をかけて、男子を囲うこともあった。複数の女子で協力して男子の生活基盤を整えることもあった。
口約束でも契約は絶対だった。
そこに無関係の女性が横入りしたとき、恐ろしいことが起きた。
知らなかったで済まされるケースなどない。男子がいかに横入りした女子を寵愛していようと、男子に実権などない。
浮気、寝取りに関しては、パラレル世界と勇太の前世では結末が大きく違う。
男子が少なすぎる。
次の恋を探そうにも、相手はいない。女性が一度のチャレンジで失うものが大きすぎるのだ。
血みどろの事件録が残されている。
だからトラブルを避けるため、恋人として付き合う前や、関係を持つ前に、誰もが同時期に付き合っている人間の有無などを申告するようになった。
いや、申告せねばならない。
重婚可能な上に、同性で結婚できる世界。自由に見えてリスクも大きい。
婚姻の際には財産の権利に複数の人間が絡んでしまうので、相続権と放棄の手続きが勇太の前世よりもはるかに複雑だ。
法の抜け穴をくぐる、詐欺まがいの事件も多発した。
断罪のため、刃傷沙汰が横行した時期もあった。
その流れで性別を問わず、寝取りや横取りは『悪』。
男子1人と女子複数が付き合うことは容認されている世界。
だけどそれは、女子が寛容な世界だから話し合いの上に成り立つ。
男子も女性が自分を得るのに支払った対価を考えねばならない。裏切ったら、どのくらいの報復が待っているかと。
未婚であっても『黙って浮気』、『黙って二股』などはモラルが低いとされる。
純子はルナが家に連れてきた女の子と自分の部屋でヤッた。
実は純子だけが悪い訳ではない。
その女の子は以前は純子と付き合って別れていた。純子は円満に終わったつもりでも、女の子は大きな未練があった。
少し病んでいた。
ちょうど彼女を作ろうとしていたルナを利用して、純子に再び近付いた。
女の子は、純子にはルナに偶然に会ったと嘘をついた。以前のように家に入れてもらったと濁した。
ルナが母親が用意したお茶を取りに行った隙を突いた。そして女の子は純子の部家のドアを少し開けたまま、純子に覆い被さった。
最後に1回と懇願して素早く脱いで、純子も脱がせた。
そこを、お茶を運んできたルナと、手伝ってくれた母親に見られた。
純子から見ると、寝取りをさせられた。
伊集院君に話かけられたときも、最初は笑顔で対応した。しかしルナ目当てと知って落胆し、塩対応が幾つかあった。
伊集院君もアウトだけど、最初は良かった伊集院ファンの心証を悪くした。
気をつけているつもりでも、脇が甘かった。
3人目に関係を持った男子は、婚約者がいることを黙っていた。
男子が悪いが、純子も婚約者が自分のクラスメイトのような気がしたのに、確認しなかった。
確認して婚約者ナシと音声でも残しておけば、少なくとも純子は糾弾されない。
純子は、各方面からヘイトを集め始め、少しずつ悪い噂が立っていた。
決定的だったのは、勇太が転生した5月10日。パラレル勇太を階段から突き落としたとして、双子の姉・ルナが逮捕されそうになった、あの日だ。
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