第4話 坂井🐥のエピソード

 坂井は突然告白した。


「あの、白状しますね。僕あなたのフォロアー🐥なんです。運営としてではなくあくまでも個人ユーザーとしてです。あなたすごくいい小説書いているんですけど、誰も読んでいないだけなんです」


 誰も読んでいない? そんな筈は……

 私が反論すると坂井はPCを指さして衝撃の事実を教えてくれた。


「でも、私の小説読んでくれた人はもう100人以上いるし、まだ増えていますよ」

「PVの事ですか? 米倉さん一ヶ月以上やっているのに、まだ見方知らないんですか? 詳細見ればわかりますよ。そのPV全部僕です。レビューもです」


 見たら、ものの見事に全話PV1。じゃあ私の小説を読んでいたのはあなただけって事? これは…… 私、燃え尽きました。


「運が悪いというかなんというか、僕もクビになりたくないので一切サポートやアドバイスはできないんですが」


「うう、降参です」 ショックで何も言えず。


「あの、僕、本当は他の人にあなたの作品を読んで欲しくないんだけど、差しさわりのない範囲でヒントをお教えしましょう。キャッチコピ―書いてませんよね?」


「書いていません」

🐥「書いてください」


「小説の詳細も」

「書いていません」

🐥「書いてください」


「近況ノートもですよね?」

「書いていません」

🐥「時々でいいので書いた方がいいです」


「他の人の作品を読んでいますか?」

「読んでいません」

🐥「誠実に読んで、できればコメントしてあげてください。以上です」


 さすが、運営のお兄さんです。アドバイスは的確です。私は言われた通りにしてみました。人には聞いてみるもんですね。すると第1話のPVがちょっと増えました。彼以外の誰かが覗いてくれたんだ。うれしい。涙が出てきた。


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<坂井の秘密>

 僕、実は以前から彼女の小説のファンだったんです。カクヨムのユーザーになって住所が分かったものだから、わざわざ隣に引っ越してきたんです。彼女には秘密ですよ。もう一つ、1年後ですが先程の彼女の小説はある新人大賞に当選して書籍化し大ヒットするんですよ。驚きですね。


 ◇ ◇ ◇


 ―― 3年後 ――


 私はもう小説は書いていない。どうしてって、小説を書くより大事なことができたから。運営の彼と結婚した。子供もできた。

 彼はカクヨムのユーザーが皆幸せになるような改革をしてとよばれている。私みたいな不幸なアマ作家を助けるために。

 あともう一つ、彼のアドバイスに沿って作品を投稿していたら、色々な人に読んでもらえて仲良くなれた。とってもいい思い出になりました。また、そろそろエッセイでも書いて復活してみようかな。いつでも読み仲間、書き仲間が出迎えてくれるでしょう。


 運営の神様、ありがとう。あと神様、家事、育児もよろしくね。


  了

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🌳私のひみつ・僕の秘密 🌳三杉令 @misugi2023

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