不登校3兄妹の母 の巻②

◆◆自分が自分を知る時◆◆


私は、大学に通うために上京した。初めての一人暮らし。夢と希望に満ちていた。


しかし、一人暮らしをして、衝撃の事実に気が付いた時に、震えた。

「裸一貫じゃねぇか!!」と。


自分を守ってくれる家族が近くに居ない。友だちもてんでバラバラ日本中に散ってしまった。ここで私は、私の力で生きなければならないのか!何も持っていないこの私が?!そんなこと出来るのか?と。


ふわふわと不思議ちゃんをやっている場合でも、白い変態と呼ばれるわけにもいかなかった。

自分と言う人間をアピールして、正常で安全であると認識してもらい、選んでもらわなければ生きていけないと思った。



◇ ◇ ◇ ◇


初めてバイトをした。

丁寧に仕事をしていたら、「遅い!」と言われ、速く仕事をすれば「雑だ!」と言われ混乱した。次々降りかかるタスクを言われた順番通りに覚えてやっていたら、「言われたことをすぐやって!それは途中で良い!」と言われた。もう混乱以外の何もない。こんなにも無能だったか、自分よ。と思った。


同時期に、自動車の運転免許を取った。教習の終盤、適性検査の結果を返されて驚愕した。『協調性』は群を抜いて高かったが、『決断力』がありえないほどに低かった。そのグラフをみて、「うわぁ~。ほんとだわぁ~。」と思ったし、「決断力のねぇやつが、運転しちゃダメだろ。」と思った。


そんなこんなで長らくペーパードライバーをしていたのだが、子どもが生まれて運転を強いられる。

こんなに熱でぐったりした子をチャリで病院に運べない。

おむつ、トイレットペーパー、洗剤、夕飯の食材、そして子ども。重すぎてチャリではとても無理だった。

1人2人と子どもが増えるにつれ、車を運転するしかなくなった。


しかし、私は運動神経が悪く、決断力が著しく低い。運転がヘタクソ過ぎた。

車のボディーをこすりまくって、「へーローさん(私の事)・・・。」と夫にため息をつかれまくっていた。


それでも、私は子どもたちと生活を守るため運転した。


狭い道ですれ違いが出来ない。すぐにギアを「P」に入れ、運転席を降りて、相手の車に「すみません、私、100%ぶつけます!後ろ見るので下がってください!!」謝りまくって、道を譲ってもらった。


曲がり角で鋭角に曲がりすぎて、電柱に車体があと2センチでこする!という場面では、そこら辺をあるいているおじさんを捕まえた。「すみません!運転できますか?運転変わってください!この車、なんとかしてください!!」



とんだトンチキ野郎でした。群を抜いた協調性が功を成し(?)私は数々の死闘を潜り抜けていた。

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