第4話 最強のギルド

「つ、疲れた……」


それから一時間。

みっちりとギルドメンバーに詰め寄られ、

質問をぶつけられた。


俺が『観察眼』という特殊能力を持つ

イーターであることが分かると

ギルド中が大騒ぎしたが、

俺がFランク冒険者であると発言した瞬間、

その盛り上がりは一瞬で沈下した。


ギルドマスターのグレイスさんにクビと

言われないか不安だったが、

ランクなんてこれから上げていけばいいと

気持ちよく笑ってくれた。


そして、疲れた俺を気づかってくれたのか、

ハンターさんが隅の席へと

案内してくれた。


「大変だったね。

許してあげてよ。

いくら最強ギルドでも

イーターは珍しいものなんだ」


「そ、そんなにですか?」


「うん。でも、このギルドには

君を含めて5人も

イーターがいるけどね」


「5人!?」


「うん。僕もだしね」


「は!?」


「どうも初めまして。

ハンター・アローっていいます」


それからしばらく、

このギルドメンバーについて

教えてもらった。


このギルドに所属しているのは25人。


全員がSランク以上の冒険者らしい。


全世界でSランクの冒険者は

100人しかいないのに、

その少数の冒険者しかいないなんて。


その中でも特に特筆すべき

人物が6人いる。


1人目がこの人。


【ハンター・アロー】

冒険者ランク S

職業 アーチャー

種族 エルフ

イーター テレポート


印をつけたところを移動できる

特殊な能力が使えるらしい。


2人目があそこにいるエルフの女性。

金髪の長髪に緑の瞳。

美しい容姿に、エルフ族に伝わる衣装を

身に纏っている。


【エリシア・ミスティー】

冒険者ランク S

職業 ヒーラー

種族 エルフ


俺がここに来た時は

ダンジョンの負傷者の

手当てをしていたらしく、

まだ顔を合わせていない。


続いてはあのフードの男。


【黒衣のベルニア】

冒険者ランク S

職業 魔法使い

種族 不明


手袋をつけており、

肌を一切露出しておらず、

よろしくと一言だけ

握手を求められた。


何か異様な不気味さを感じる男だ。


そして、このギルドの顔とも呼べる

ナンバー3の一人。


【アリア・ローズ】

冒険者ランク SS

職業 サモナー

種族 獣人

イーター 能力は不明


先ほど、俺のことを脅した

ツインテールの女だ。

綺麗な見た目に反して、

攻撃的な性格をしている。


だが、あの人以上に

警戒すべき人がいる。


【餓狼(がろう)】

冒険者ランク SS

職業 剣士

種族 獣人

イーター 能力は不明


狼と人間が混ざったような

見た目に、傷だらけの体。


彼だけだ。

この男だけが、

俺がイーターだと分かっても

一切興味を示さなかった。


ただ一人、何の感情も見せぬまま

ジョッキをあおっている。


この男を見ていると勝手に体がふるえ、


直後、彼と目が合った。


瞬間、呼吸ができなくなった。

なんだこれ……?

まるで、捕食される前の

獲物になった気分だ。


あの男だけには関わってはいけない。

そんな気がする。


「どうだ少年?

もううちには慣れたか?」


すると、気分良さそうに

ジョッキを持ちながら俺と

ハンターさんのいる机に

グレイスさんが歩み寄ってきた。


【グレイス・イシュターン】

冒険者ランク SS

職業 戦士

種族 ドワーフ

イーター 能力は不明 

アブソリュート・ルーラーズのギルドマスター。



「いえ、まだ全然。

むしろ、ここにいる人達の

オーラが凄すぎて、萎縮するというか」


「萎縮? なんで?」


そりゃSランク冒険者ばかりだからだよ!


加えて3人もSSランクの

冒険者がいるし。

SSランクの冒険者になれるのは

7つの職業でトップの力を持つ

冒険者しかいないんだぞ!?

つまり、7人しかいない最高峰の

冒険者が3人もいるということだ。


やばすぎるだろ。


「それになレオ。

お前はこいつらに萎縮してちゃダメだ」


「え?」


「だって俺、お前を俺のパーティーに

加えるつもりだから」


「は!?」


「おーい! ちょっと俺の

パーティーメンバー集まってくれるか?」


その言葉に4人の冒険者が机に歩み寄る。


「まじ……か」


その4人。

いや、俺の机に座っている

ハンターさんとグレイスさんを含め6人。

それが、さきほど先述した6人だった。


――――――――――――――――――――――


冒険者が亡くなることはよくあることだ。

だが、幸いにも俺は今まで

仲間の死を経験したことがない。


俺はマーブルダンジョンの入り口の

石碑に目を移した。


あれはマーブルダンジョンで

亡くなった者達の慰霊碑。


多くの花が手向けられ、涙を流す冒険者たちが

立ち尽くしている。

昨日のミッションで多くの冒険者が亡くなった。

もしかしたら、あの中に……

そう思うと視線がそこに向いてしまうのだ。


「あ……」


そこにはレッズがいた。


目を真っ赤に腫らして、

花束を握りしめている。


不意に目が合った。

レッズが鬼の形相で歩み寄って来る。


俺は逃げることすらできなかった。


「おい、レオ……てめええ

今までどこにいやがった!!!

てめぇだけ逃げて! 

仲間を見殺しにして!!」















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