第3話 イーター

連れてこられたのは

マーブルシティ中央の丘上にある

女神の神殿。

大昔に神が作ったと言い伝えられているが

その真偽は定かではない。


「よう。神殿のばあちゃん」


「あら、いらっしゃい。グレイスさん。

ハンターさん」


グレイスさん達と知り合いのようで、

老人は中へと案内してくれた。


「その子を調べて欲しいのかい?」


「ああ、この少年。

もしかしたら、イーターかもしれない」


イーター

それは職業のスキルとは全く

別の特殊な力を宿した者の総称。

所謂、超能力者である。


しかし、その数は極めて少なく、

全世界を探しても

正式にイーターと判定されたのは

十数人しかいないとか。


「あのこのご老人は?」


「この人は代々女神の神殿と

水晶を守ってきた者達だよ。

神の使いとも呼ぶね」


ハンターさんがそう答える。


「じゃあ、坊やこの水晶玉に

手をかざしてごらん」


「え、いやでも、このイーターを

判別するのって物凄く

金がかかるって聞きましたけど」


「それは嘘だ。面白半分で受けに

来る奴らがいるから

値段を高額にしたって言ってるだけさ」


腕組みをしながらグレイスさんが言う。


「さあ、見てみろ少年。

お前がイーターならその能力名が

水晶玉に浮かび上がるはずだ」


そりゃ誰だって、

自分がイーターだったらなって

妄想するが、世界で十数人しかいないんだろ?


俺がイーターなはず


「おおおおおおお!

久しぶりに見たね!

この子は本物だよ!」


「え!?」


老婆が驚いた声を上げたものだから、

俺も水晶玉に目を移した。


『観察眼』


確かに、文字が浮かび上がっている。


「この前イーターが出たのが

ハンターのときだったから、

二年ぶりのイーターか」


「グレイス。これは街が大騒ぎになるよ。

どうする? この子」


ハンターさんがそう訊ねるより前に、

グレイスさんが俺の前に歩み出た。


「少年。今どこのギルドに所属している」


「え……どこにも……」


すると、ハンターさんとグレイスさんは

顔を見合わせた。


「少年。名は?」


「ニコラス・レオです」


「そうか。なら、レオ。

今日からお前は俺のギルドメンバーだ」


「………え?」


「よかったじゃないか坊や。

このグレイスさん達のギルドは全世界の

冒険者たちが入りたがるとこだよ?」


「少年も聞いたことがあるだろ?

ギルド名アブソリュート・ルーラーズ。

別名を絶対の統治者」


「はあ!?

そこって!」


ギルドには序列がある。

ギルドメンバーの月ごとの

クエストクリア数、冒険者ランク、

ギルドバトルなど総合的に評価し、

その点数ごとに上から順に並べたものだ。


そして、このアブソリュート・ルーラーズこそが

全冒険者が憧れる序列1位のギルドだ。


―――――――――――――――――――――――


ギィと重々しい音を立てて扉が開く。


中に入った俺を鋭い視線が襲った。


な、なんだここ……重圧で

体が動かなくなりそうだ。


「あーごめんな、少年。

さっきの緊急ミッションの件で

皆落ち込んでいるところでな。

いつもはもう少し活気が

あるとこなんだけど」


戸惑って足を踏み入れられない

俺の背中を、グレイスさんが優しく

押してくれた。


「そりゃ怖いよ。

レオはまだFランクの新米冒険者なんだし。

僕も初めてここに招待されたときは

動けなかった」


隣にいるハンターさんも共に

中に入ってくれた。


二人共めちゃくちゃ優しいな。

きっと俺が怖がってるだけで、

ここに所属している人達も全員優し、


「誰こいつ」


直後、鋭い爪が俺の喉元に迫った。


「あんたここがどこだか知ってんの?

ガキが来ていい場所じゃないんだけど」


鋭い爪とピンク髪のツインテール。

睨むようなツリ目。

そして、何より猫のような耳としっぽ。


この人獣人か……

動きが速すぎて見えなかった。


「おいおい! ローズ!

よせよせ! 

この少年は俺が呼んだんだ!」


「は? グレイス!

また子供にギルド体験でもさせたいの?

ここはそういうとこじゃないって

アタシ前にもキレたよね!?」


「いやあれは近所の子供たちがギルドの

中を見たいって言ったからであって、

この少年はそれじゃないって」


「は? じゃあなに?」


「この少年をギルドに入れる」


その発言にローズさんを含め、

全てのギルドメンバーが


『はあ!?』


そう驚いた。






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