第14話 もう一つの仕事。

 「香苗さん、週末どうですか??」連絡が来ないから直接聞いてみる。


 「あ、ごめんなさい。そうね。うーん。」目を合わせて話してくれない香苗さんが僕の前に居て疑うようにはしたく無いけれどもやっぱり風俗のお仕事入ってるのか。僕の優先度は低いのかな。少しヒステリックになる。


 「空いてるから大丈夫だよ。ごめんね。遅くなって。後ごめんなさい。今日は少し早く仕事上がるから一人で帰るね。」亮太君の悲しそうな顔を見てしまった私は断ることが出来なかった。正直、買い物に行きたかったのはあったけど。


 「本当ですか??ありがとうございます!!そうしたら詳しいことはLINEの方で話しましょう!!わかりました!!」時間はお昼過ぎ。周りからの視線も気になっていた。


 「お疲れさまです。」私は今日はシフトが入っていたから定時に上がった。亮太君の事を横に見ながら目で“帰るね”の合図をして上がる。



 久しぶりの一人の帰り道。9月っていう事もあって本当に寒くなってきた。私は羽織っていたコートの前を閉めなおし、身体を小さくして事務所へと足を運んだ。事務所に着き次第、玄関先で挨拶をする「こんばんは。店長、久しぶりです。すみませんよろしくお願いします。」バタンと音を立て扉を閉め私は中へと入る。


 「おーねねちゃん。お疲れ様。最近出勤してなかったからねねちゃん宛の質問いっぱい来ててさ、出勤情報をサイトに掲載した瞬間に何枠か埋まちゃってさ。今日は忙しいよ?(笑)」


 事務所はもうすでに女の子が何人かいて呼び出し待ちだった。「さて、ねねちゃん行こうか。」そうして私達は送迎者に乗り込み目的地へと移動した。移動中、私は携帯を開き亮太君からのLINEに目を通して返事をする。


 「お疲れ様です。実はもう一緒に行きたい所あってそこいきませんか??」


 「良いよ??何処かな?あまり遅くならないところがいいな。夜、寒いしね...」


 「はい!ここから少し離れたところで“ぶどう狩り”してるところあって、そこに行きたいなって思ってて。どうですか??」


 「良いね、“ぶどう狩り”どうやって行く??レンタカーでも借りるの??」


 「そうですね。レンタカー借りようかなって思ってます。」




 「ねねちゃん、着いたよ。101号室!頼むね~~~~。」亮太君とのLINEをしていたらホテルに着いてしまった。車から降りると仕事終わりの時より寒くなっていて辺りもまだ早い時間だっていうのにも関わらず暗かった。101号室に向かってインターホンを押す。「こんばんは。ねねです。よろしくお願いします。」


 「こんばんは。最近出勤してないからどうしたのかなって少し心配してました(笑)」そう言ってくれたのは前に指名してくれた亮太君と都市が近いと思うあの若い男の子だった。


 「ごめんなさいね、また指名してくれてありがとう。今日は何分にする??」


 「そうですね。今日も120分でお願いします。」


 「ありがとう!そうしたらお店に連絡入れるね。“もしもし。お疲れ様です、ねねです、120分頂きました。はい。分かりました。失礼します。”」そう言って電話を切る。


 「そうしたら、どうしましょうかね。」タイマーを120に合わせながらソファーに座るその子の隣に座り話をした。


 私は名前も知らないこの人が120分終わってからまたどこかへ行く.....今日はシフト0:00までいっぱいだろう。亮太君へのLINEの返事はそれからになるか、途中の移動の時にでも返そう。そうして私は携帯の画面を消して今日最初のお客さんの相手をする。


 「そういえばお名前聞いても良いですか???」


 

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朝顔の咲く季節にまた。 柊華(しゅうか) @rinngo0114

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