第12話 吐露

 「店長。すみません。体調悪いのでお休みください。」そう言って仕事の休憩中、喫煙所で連絡のLINEを入れた。


 ため息と共に煙が目の前に広がる。私はまっすぐに立ち上る煙を見ながら喫煙所の端の方で壁にもたれながら考え事をしていた。


 あの時の食事から少し経って私の中の何かがおかしい。亮太君からの告白。年下のお客さん。変に沢山考える事が多い。最近頭痛も増えてきた。仕事の方はまぁまぁいいつも通り、むしろ私の方が亮太君の事気にしちゃってる......


 「お疲れさまでした。」今日は残業なんかしないで定時で上がった。階段を降りて玄関を出る。そんな時、玄関でばったり帰社してきた亮太君と上司とすれ違った。二人とも顔を合わせることなく爽やかに立ち去る。


 「なんだ?亮太。岩田さんと喧嘩でもしたのか???(笑)そういえば1ヶ月経つか??デートどうだったの??」私は後ろからの寂しい視線を感じながら外に足を運んだ。


 「いや。喧嘩なんてしてないですよー。そうですね.........」その先は聞こえなかった。


 いや、聞きたくなかったのかもしれない。


 家について、着替えを済ませてベッドに横になる。キッチンに見える朝に沸かしたポットが見える。「はぁ。」そうしていたら私は寝ちゃっていた。起きたのは19:30を少し過ぎたくらいだった。ほんの少し散歩してこようかな。そういって、財布、携帯だけ持って散歩に出かけた。

 30分くらい歩いたかな。気が付いたら会社の近くのこの間朋美と話したあの公園まで歩いていた。「けっこう来ちゃったな。」ベンチに座り、タバコを探す。「あ、忘れてきた........」あたりはもう暗く周りは会社終わりのサラリーマン。部活帰りの学生。公園の中をランニングしている人。私は蛾のたかる街頭の下、一人。隣には一人分空いたスペース。


 「お疲れ様です。香苗...さん。隣少し良いですか??」目を瞑り考え事をしていた私の耳に聞き覚えのある声が。


 「こうしてお話するのは1ヶ月ぶりですね。お散歩ですか??」


 私は上下に首を振った。


 「すみません。この間、告白なんかしちゃって。けど言わない後悔より言って後悔したいので、それに付き合わせてしまってすみませんでした........」


 「そんな事言わないで??私も嬉しかった.......から。お花もありがとう。」どこか、今の私の事言わないとこれから先、一生言えない気がした。


 「本当ですか?良かったです。あれから何も無かったから僕嫌われたのかなって思ってて。本当勘違い野郎ですね(笑)」嬉しかった。笑ってしまう。香苗さん、暗くて分からなかったが少し照れていることを感じた。


 「今日は良い天気ですね。でも少し寒くなってきましたね。9月ですもんね。」


 「そうね。少し寒いかな。日本って“四季”ってあるじゃない??日本だけ凄く分かりやすいだけで別に“四季”があることって世界的に見てもあんまり珍しくないんだよね。」なんの話してんだろ。私。


 「そうなんですね!初めて知りました。物知りですね!!少し僕の相談乗ってくれたりしてくれますか??」


 「うん。」


 「ありがとうございます。誰にも話していない事なんですけど僕、海外で仕事したいなって最近思ったりして。でもまだはっきりしてなくて。馬鹿見たいですよね(笑)」


 「うん、いいと思うよ。亮太君、コミュニケーション能力高いし。海外でもやっていけるんじゃない??どこで働きたいの??」


 「ありがとうございます。そうですね。シンガポールとか良いなって思ってます。」


 「そうなのね。私達あの時付き合ってたら超遠距離恋愛だったね(笑)」


 「そんな事言わないでくださいよ!僕はずっと香苗さんの事好きです!!」


 「ありがとう....!」言おうかな..........


 「........亮太君?実は....私も聞いてほしい事あって...........」訳わかんなくなって涙が出てきそうになる。泣いちゃダメ。



 

 時計の針はもう結構回っていてあたりには私(僕)達以外誰も居なくなっていた。夏が終わって秋の風が二人の座るベンチを過ぎてゆく。



 「.................」


 「.................」


 「こんな事言ってごめんね。でも今言ったのは本当の事。風俗嬢な私の事嫌いになったよね。聞いてくれてありがとう。」瞼から一筋の線になって涙が零れる。


 「話してくれてありがとうございます。香苗さんが僕に言ってっくれた事凄く嬉しいかったですし、あの時の返事の意味分かった気がします。嫌いにはなりません。それでも僕は香苗さんが好きです。もう一度言います。こんな僕でも良ければ付き合って下さい。」


 「うん......ありがとう........」溜まっていた物が全部出てきて私は感情が堰《せき

》を切って流れ出す。


 「随分と寒くなりましたね。家まで送りますよ。帰りましょうか??」


 「うん。」私は涙を拭って答えた。

 「亮太君.......1年なんて言ってごめんね。」


 「明日からはいつもの香苗さんでお願いしますよ??(笑)」


 そういって手を引いてくれた彼(亮太君)の右手と真っ暗に一輪咲く花火のような彼の笑顔は忘れない..........|

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