第11話 何がしたい....

 香苗さんとの食事デートが終わって1週間が経っていた。僕達は特に何する訳でもなく仕事をこなしていた。僕は前ほど気になるという事は無くなったがあの時の返事を時々思い出す....「来年また.....」1年なんて直ぐだ。そうでも思わないと病みそうになるな(笑)来年は初めての告白じゃなく2回目だしね(笑)でも、あの時に返事欲しかったなぁ。ちょっと悲しかったし................







 亮太君との食事が終わって1週間か。私は前から気付いていたかもしれなかったけどこの前告白されて正直嬉しかったなぁ。「来年また。」なんて言っちゃったけど嘘はいけないと思ったし、良かった。来年も私の事好きでいてくれるのか不安だけど言った以上待ってるしかないよね。あの時返事しておけば良かったかな........




 「店長、今週からよろしくお願いします。」


 「ねねちゃん今週からもお願いね!どう??休めた???」店長が気にかけてくれた。


 「はい。おかげさまで。出来ました。」挨拶も済み私は待機部屋で待っていた。そしたら聞き覚えのある声がした。


 「お疲れ様です。」この声は朋美だ。


 事務所内で話す事はないがトイレのタイミング合わせて私は外に出てみた。

 「朋美、お疲れ。」


 「おー香苗じゃん。ここじゃ“ねねさん”か(笑)久しぶりだね。どう??

??指名のお客さん付いた??会社員との両立も大変そうね。大丈夫なの??」


 「うん。ぼちぼちだね。会社との両立は中々大変よ(笑)そういえばね私、今年から入った新人君から告白されちゃった(笑)」手を洗う水道の水が流れる音に紛らせて私は答えた。水に流すなんて言葉があるように最近の報告?も、この水に流したかった。


 「えー。そうなの??なんで言ってくれないのよ(笑)それで?返事は??」


 「うん。来年また告白してって言っちゃった。嫌いとかは無くて凄くいい子なんだけどね。私、現状2足の草鞋だし。あれもこれもだとどこか手抜いちゃうから。待ってって。」


「そうなんだね。香苗らしいね(笑)私なら直ぐにOK出しちゃうな(笑)けどまぁその考えも分かんなく無いな。いい子なのなら逃がしちゃだめよ。(笑)じゃあ私、先行くね。」


「うん。私も戻る。」



 待機所に戻ると店長から指名が入ったと連絡が入った。出勤してから直ぐだった。その店長と一緒に私はホテルへと向かう。店長が言うには「声が若かった。年下かもね(笑)これからのは120分での指名だからお願いね!」だそうだ。そんな話聞いて私はホテルに着き【琴咲ねね】としてお客さんが買った私の2時間の奉仕をしに行く。そして部屋に着きインターホンを押した。出てきたのは亮太君とあまり年齢が変わらないであろう歳の男の子だった。


 「ねねです。よろしくお願いします。」


 「こちらこそお願いします。ねねさん可愛いですね!俺のタイプです(笑)今日120分お願いします!!」


 私はタイマーをセットしてからお話を続けた。最近ハマっていること。趣味。音楽。仕事。大体一緒の事を。亮太君もこんな音楽だったりゲーム、してんのかな.....亮太君も風俗とか利用するのかな。もし私の事見つけて指名してきたらどうしよう。事前になんて分かんないしな...


 「あれ?おーい。ねねさん??話聞いてます??(笑)」


 「ごめんなさい。お兄さん。ちょっと考え事しちゃってた(笑)お風呂行こうか??」











 私は......また知らない人と身体を密着させてお金を貰って。

 自分を商品にして。

 名前も知らない男の人に時間を買った貰って。

 知らない人のあそこを舐めたり、しごいたり、身体を洗ったり。


 偽りの「好き」を他人に施して。












 「もうすぐ時間になっちゃうね。どうする??もう一回する??お風呂行く??あと43分だしどうしようね??」


 「そうですね。最後は俺、お風呂で一緒に温まりたいです!!良いですか?」


 「良いですよ??そうしたらお風呂行きましょうか!」



 


 アラームが鳴り、着替えを済ませてお兄さんからお金を頂いて名刺を渡し部屋を出た。「またお願いしますね(笑)」作り笑いをする。


 「自分が分かんなくなる......私。」この仕事してて、やっぱり。



 この深夜の静けさ。

 蝙蝠こうもりたちの追いかけっこ。

 夏の夜の匂い。

 花束を解きほぐしたように大きな星々の燦めき《きらめき》。




 本当の好き。

 心が躍る。




「お疲れ様でした。」今日の分のお金を貰い家へと足を運んだ。


 「あ、カメラ忘れた。コンビニよってレモンティだけ買って帰ろ。」

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