花婿と花嫁
ヨセフの手紙『エヴァ』-1
世界で一番愛する我が妻、エヴァへとこの手紙をおくる。
天にまします我らの父よ、ねがわくはみ名をあがめさせたまえ。
元気だろうか。昨日の雨は酷かった。それに寒さも急に増してしまった。体調は崩していないだろうか。
こっちはとても寒い。弟も言うが、寒いという範囲を逸脱しているのではないかと。
こんなことを言っておいてなんだが、できれば貴女にはなるべく早くこちらに来てもらいたいと僕は思っている。仕事の関係もあるが、雪が降り始めれば山小屋と町の行き来が困難になる。
弟は、もう今年から冬を山小屋で過ごす気がないらしい。僕には貴女がいるからと。つまり、もういい加減同棲しろということであって。僕としては焦りすぎではないかとも思う。
貴女の整理がつくその日をいつまでも待つつもりだ。それこそこの命が終えた後であろうとも。
ところで、今度のクリスマスの予定はどうだろうか。マリアへのプレゼントを色々考えてはいるのだが、どれもきっと貴方の贈る洋服には劣ると思う。彼女へ最高のプレゼントを贈りたいとずっと考えてはいるのだが、どうしてもこれという物に辿り着けない。
貴女に似てきっと素敵なレディになるのだから、半端な物を贈りたくないのだ。どうか助言をいただきたい。
最後になるが、絵が描けない僕の精一杯の努力である写真を同封する。冬の山を背景にリスの親子を撮すことができた。
貴女の新作の画集を予約したので届くまで楽しみだ。今度の仕事のファッションショーも楽しんで欲しい。
愛するエヴァと愛しいマリアへ
「ああ、やっぱりこっちの文の方がいいかな。いや、こっちか。いや、書き直すか。なんだ、愛する妻って。見ていて恥ずかしくなる。
おーい、どれがいいと思う?」
「兄さん、いい加減にしろよ。もう郵便も届かなくなるぞ。電話で一言言えば済む話じゃないか。一生側にいたいから越してきてくれって」
僕がマリアの顔を見るまであと数週間の出来事だった。いつもと同じ。
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