第二章-7 神様は見ている

とても素敵な夜があったの。

それは日曜日。教会に行った日の夜だったわ。


星がね、ピカピカ輝いていて、なにかがある気がしてた。お月さまはお休みしてたけど、そう、お父さんのお話に出てくるみたいな夜だったわ。

誰もいないお家の中をお人形が歩き回るの。何をしているのかって? お家の秘密を探ってるのよ。何処かに隠し部屋はないか、宝物がある箱を開ける秘密の暗号の数字のヒントはどこか。それとね、これが一番大事なの。お人形はね、お家の何処かにいるお友達を探してる。


かつん。


こつん。


お家の上には大きなお月さま。まんまるで黄色のお月さま。

猫さんのおめめみたいだって、思ったわ。そうよ、これはお月さまじゃなくって猫の目だわ。

お家はお空から大きな大きな猫に見られてる。どんなに目を大きくしても、猫にはお家の中が見えない。中で何が起こっているのか、誰にもわからない。

でもかいばおけに寝かされたイエス様のことを天使様は羊飼いたちに知らせたわ。だからどんなところにいても神様には見えるのよ。神様だけがぜんぶを見ていてくださるの。


かつん。

こつん。


全部の扉を閉じました。窓も閉じてカーテンを引きましょう。




その日はね、教会にお母さんとお父さんと行ったの。いつもと同じよ。みんなで教会に行ったの。

わたしはお姉さんのところでお勉強をしたわ。お母さんとお父さんは礼拝のあと誰かとお話をするの。それは教会のえらい人だったり、そこで知り合った人だったり、会いたくない町の人だったり。

その日はね、お父さんが誰かに呼ばれて帰りはわたしたち二人になったの。お姉さんにもらったキャンディをお母さんにもあげて、真っ赤な目をしたお母さんと手を繋いで帰ってきた。

スープを温めてかたいパンといっしょに食べたわ。その後、お母さんたちのお部屋に行ってお祈りをした。いつもと同じよ。

でもね、お母さんは疲れてた。きっとイヤなことを言われたんだわ。

わたしはお母さんにおやすみなさいを言ったの。いつもよりずっと早い時間に。

まだお日様の頭が隠れきっていなかったわ。それでもね、明日になればお母さんも笑顔になれると思って、お部屋をはやめに夜にしたの。

お母さんはすぐに眠ったわ。わたしも、すぐにお部屋に帰ったの。いつもと同じよ。ブランはお母さんと一緒だわ。だってお母さんは冷えきってる。

寒いのはね、寂しいの。だから誰かがあたためてあげないとダメなんだよ。

わたしはお部屋に帰ってベッドに入ったわ。ナターシャがどこにいるのかわからなかったけど、いつも通り夜になればお部屋にきてくれる。そう思ってたの。

ぜんぶ、全部、いつもと同じだったわ。


違ったのはね、お父さんがまだ帰ってきていなかったこと。


ナターシャは来なかったわ。そんな日もあるでしょう。

だからね、わたし、ナターシャにおやすみを言いに彼女を探したの。


かつん。こつん。


長い廊下に小さな足音が歩き出した。

これもお父さんのお話と同じね。

でもその夜はお話よりもずっとずっと素敵だった。

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