第38話 いろっぽいミカさん
「で、どうするんだ。ミカとは秘密通信で繋いでるから全員把握してるはずだ」
「え゛、どうやって私の秘密通信をやぶったの。テレパシーだよ?」
「こっちは戦闘用最新アンドロイドだぞ。お前が置換して作った程度のテレパシー通信が傍受できなくて戦闘が出来るか。大体お前の秘密化は何百世代前だと思ってる」
一応量子チップ使った量子通信を置換して作ってるんですが……戦闘用恐ろしい。
というか、戦闘用なんだ。多目的ではないと思っていたけど。
でも戦闘専門ではないよね。戦闘向け多用途アンドロイド、かな。
「ではどのタイミングで脱出しましょうか。どういう脱出方法が良いですかね」
「朝方に脱獄して、そのまま領主か城主に直談判!」
「そもそもいるのかしらね。全然情報がないのよね」
割と手詰まりだ。いや、ここを抜けるだけならさっさと脱獄してフィーに乗って逃げちゃうことなんだけど。
それだとコボルトの直談判が出来ない。
「んー、あずき、いきなり突入して直談判が成功すると思うか? ボクは思わんが」
「無理、かもしれない」
「ここの奉行さんを抱え込んで上へ通した方が良いんかしらねえ」
「ミカさんが色仕掛けをして奉行を落とす。難しい……」
ルカさんがめっちゃくちゃ珍しく否定的な言葉を放つ。
私も同意見だよ。
「ウチも、身振りや口調は変わったけど、色仕掛けが出来るほどの巧みさはないなあ」
「えー手詰まりじゃないですかあ」
普通に脱走しようかと思っていたときに、この牢獄へ足音がしてきた。
「あの女はどこだ、そっちか」
奉行だ。ミカさんを狙ってきたのかな。
「ガキは捨て置け。この女を連れ出すぞ」
――「ここあちゃん録音録画」――
――「了解」――
ナイフを出現させささっと腕と猿ぐつわを取る。ここで暴れないとさすがにヤバい。
「お゛がーさん、お゛がーさん、お゛い゛て゛がな゛い゛でえ゛!」
「猿ぐつわはどうなっている! ちゃんとしなかったのか!」
「お゛があ゛あ゛あ゛あ゛ざあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ん」
「ええい、あのガキを黙らせろ! 殺すなよ」
「あずきうるせー」
「うるさい無線で話しかけるな」
「娘に何をしようっていうんです! ウチはどうなってもいいから娘になにかするのは止めてください!」
「キタコレ。リンチか刺される私の映像絶対取ってね」
「うるさくて映像装置壊れたかも」
「んなわけあるか」
そうやってまずはミカさんが解放され連れ去られていった。ピストル渡せなかったから丸腰だ。くっそー。フィーのようなテレポート技術がほしい。
……そうだ。フィーも成長している。飛ばしてもらうか。まず殴られてから考えよう。
下っ端が私の牢に入り、殴る蹴るをしてくる。
「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!」
「やあああああああああああああああああああああ!!」
「い゛だい゛い゛だい゛!!」
「おい、こいつ結構胸と腰あるな」
「殺すなって言われているだけだからな」
「お父さんがみている前でやられちゃいましょうねー」
いいぞいいぞーそろそろ反撃かなー。
「娘に乱暴することは、俺が許さねえ!」
ドゴーンという音ともに隣の隣あたりの牢が吹っ飛んだ感じがする。センサーがそう感知している。
「なんだ!?」
「父親の牢が吹き飛ばされた! このガキを連れて逃げるぞ!」
「一歩でも動いたらこのガキの命はないと思え」
ここだな。
「うわあああああああああ!!」
まず一人に手を振り回したと見せかけた多用途アンドロイド強化パンチ。
もう一人に足で暴れたと見せかけた強化回数5回アンドロイド金玉潰し。
最後の一人に頭を振り回したと見せる総合強化2回スペシャル強化1回多数のインプラント挿入による強化頭蓋骨の最古アンドロイド頭突き。
一撃で死ぬ一歩手前。ごめんな、アンドロイドは強いんだよ。モンスターにはもっと強いのがいるけどな。
「すぐルカさん来て」
通信を行いルカさんを呼ぶ。
「私、私、みんな殺しちゃった」
「死んでは居ないよ、あずき。それよりひどい目に遭ったね」
ルカ、ノリノリである。
「みんなが殴る蹴るした。い゛だがっだ」
「監督、自分のネタばらしと地力脱獄お願いします。そしてすぐに新聞社、あー情報社でもいいや、あとかわら版に映像を届けて。チップが合わないならピンクちゃん経由すればこの時代にダウングレードしてくれるから」
「そっちはどうするんだ。映像はどこまで撮影すればいい、ネタばらしの方法は」
「映像は情報社に入るまで撮っていて。棒読みでもいいから、私は戦闘用アンドロイド、全てを救う行動を開始する、で。んでこっちはピストル持って突撃。人殺しはせずにミカさんを救出する。うまくいきゃ明日の朝には一大イベントになってるよ。映像がちゃんと届けばね」
「あ、あー。私は戦闘用アントロヂド。全てを上手くいく行動を開始する」
ここあちゃんは拘束具を全部引きちぎり、エネルギー砲で木製の牢獄の棒をカットし、脱獄を開始した。あとは通信社が見つかることを祈るばかり。ここあちゃんに出来るかなあ……。
「じゃあ行きますよ、ルカさん。Rピストルしかありませんが、射殺するつもりはないのでちょうど良いでしょう、心臓と目は当てないでくださいね、さすがに死ぬかもしれない」
「これ所長製ですか?」
「あー、所長製ですね。急所は外しましょう、絶対死ぬ。腹部も危ないなあ……」
ルカさんにRピストルを渡し、突撃を開始。
「どうせネタばらしするんだし、殴っても良いよね!」
150センチが殴ると180センチくらいの男にはちょうど金玉にあたるのでおらおら振り回して金玉を潰していく。今回は敵なのでしっかり潰していってるよ。致死率高いらしい。知らないよ私少女だもん。
騒ぎが広がっているのでわらわらとサムラーイが出てくる。
「ここまで和風な国も久しぶりだねえ」
「なかなか珍しいですねえ」
ルカさんには私が殴ったあとの隙を潰してもらっている。普通の総合格闘技じゃなくて下手な金玉潰しだしね。隙が出るのだよ。
15人くらい金玉潰したあたりであいてが恐慌状態に陥った。よし、と一人ルカさんがとっ捕まえて尋問する。
「おい、奉行の部屋はどこだ」
「い、いうわけ――」
「きんたまつぶしまーす、せー――」
「に、2階の角部屋だ! 左端の!」
「の! あー、言うのが遅くて潰しちゃったよー」
遊びながら情報を収集し、2階へと投入!
2階には既に人はいなかった! 逃げたな。
角部屋へ直行し、ふすまを蹴り倒す。わたしガイコクジン、ふすまの開け方シラナイ。
バタンバタン蹴り倒していくと、布団の中にいるミカさんを発見。隣にはミカさんの服で縛られている奉行様が。
「あらー、形勢逆転していたんですね」
「まあね、伊達に
「もごごご、もご」
「うるさいわねえ、パンツつっこんてあげたんだから大人しくしてなさい」
路地を見下ろすと、こんな夜にもかかわらず、大勢の記者が奉行の邸に詰めかけ、かわら版がしきりにデータチップをまき散らしていた。ピンクちゃん経由しなくてもデータを読み取る技術はあるのか。
「技術だけならコボルトもやれそうな感じがしますね」
「もごごご、もご」
「うるせーな、金玉蹴るぞ? 私アンドロイドだからね?」
左手を取り、銃口を向けてサクラ・フレアの電子を励起して脅してやる。良い子のみんなは銃口は絶対人に向けちゃ駄目だぞーと思いながら。
「んじゃ、フィー呼びますね。着替え持ってこないと」
「ええ、お願い。ここは丈夫みたいだしフィーも上がれるでしょう。記者入ってきそうだしね」
「はーい。ふぃー、そういうことだからきてぇ。なでなでしてあげるよー」
わおーん
きた。一番でかいときの姿で。
「もごごごごごごご!!!!????」
「ばうばうばうばう!」
「なでなでなでなでして! わかったわかった撫でてあげるからミカさんの替えの服を出してあげて。あとロープもね。ミカさん布団から出られなくなってるから」
ぺっぺと出すばうばう。まずは締め上げちゃおうと裸でロープを結ぶミカさん。こっちが赤面するほどの身体でした。
ミカさんが着替えたあたりで記者団が突入してきて。
あとは知らん。奉行に聞いて。私はフィーの頭を撫でながら子供の振りをしないといけないので忙しいのだ。え、左手が取れるアンドロイド? この超巨大オオカミを一声で呼び寄せた? 何のことですか?
ただまあ、上の人とは会えそうだ、ってことはルカさんから聞いたのでホッとしているよ。
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