激闘のコボルト編

第35話 ボディーブロウの苦しみ(コボルト編・開始)

 フィーに飛行モードを要請。地面に接触したくないのか8輪を出しながら翼を氷で作った。そして風を作り出して飛翔。すぐに8輪はしまった。身体も私がギリギリ乗れる程度まで小さくした。私は入ってちゃいけないからね、通信しないといけない。わかってるなあ、賢い子は好きだぞ、フィー。


 無線で誘導されながら村へ到着。着地する前に私に降りてーと言って、巨大オオカミ位の大きさになった。村もぐっちゃぐっちゃだったからせめて足だけで、と思ったのだろう。


「着きましたーミカさんもすぐに来ますよ。足の和装をたくし上げないといけないのでちょっと時間かかりますけど。あと靴を長靴に変えないといけないので」

「そうか。コボルトはあっちの方から来るみたいだ」

「巣を突き止めてはいない状況ですね。一般人にとってコボルト怖いですからね」

「群れや巣にウルフコボルトが混じっていたら村の全滅を意味するからな」


 さてと。始めますか。


「ルカさん、コボルトの生体データをお願いします」

「はい、体長130センチ程度、体格は大型オオカミ犬並の小さめの生物です。ゴブリンより圧倒的に知能が高く、冶金をしています。なので山、特に鉄鉱山がある場所に多く生息していますね」

「ミカ、今到着しましたぁ。どこまで進んだん?ああ、生体データまでか。鋼鉄製の武具を使うところまでは喋った?」

「いえ、これからです。そう、冶金技術が高いコボルト族が多く、鋼鉄まで揃えていることが多いのです。剣、鈍器、弓、矢、鎧、盾。全部鋼鉄製です。それを持ち続ける体力もあります。人間組もパワーアーマーを装備するので私達の敵ではありませんが、一般人は侮ったら死にますよ」


 ふーん、みんな冶金技術が高いんだ。え?


「なーんでそろって冶金技術が高いの? 高い部族はいるけど低い部族もいるってのが普通じゃない?」

「ウチ、部族間交流が活発ってのは聞いたことがありますよ。冶金技術も教え合うし、やられた部族に支援の手を差し伸べるっていうことも。だから、コボルトを潰すなら大規模に潰さないと元通りって言われてますねえ」

「ルカさん、どこまでやるんですか?」

「群れだったらそれの殲滅、巣だったら領主に掛け合って一大イベントですかね」


 ひゃー大変だ。群れだったら良いなあ。



「じゃ、行ってきまーす」

「気をつけてねー」

「我々はここで待機してます」


 ミカさんとルカさんは村で待機、前衛のバディだけが動くことに。

 パワーアーマーはしっかりとシーリングされているからこのぐっちゃぐちゃの泥に入っても問題はないんだけど、シーリングの補修が面倒なんだよ。このパワーアーマー中古だしさ。

 ここあちゃんは空飛ぶし、私の靴はコーティングが伸びてシーリングされるから中に入り込むことはない。

 くるぶし上は濡れる? いやいや最強白タイツはいてますからね。

 ほんんんんと、身体強化しておいて良かったー。総合強化とかで強化しても装備は強化されないからね。

 スペシャルはなんか強化されたな。ログに出ないからわからないけど。ログに出せよ。わかんねーんだから。


「ここあちゃんなにか見えるー?」

「最大レーダーで探ってるけどなにも出てこないな。そっちはどうだ」

「最大センサーで地面探ってるけど足跡1つ出てこないね。あっちの方って、凄い曖昧な方向指示だったし見つけるの大変そうだ」


 たまに盛大にコケて大笑いされましたが、いいんです。あとでぶちのめすから。

 ただ、顔はコーティングできないから泥だらけだよぉ。私も化粧勉強するかなあ、無限ポーチあるけどアンドロイド組が化粧しないからミカさんだけが使ってる。化粧はミカさんに教えてもらってさ。


 どうでも良いことを考えながら無限のキャンティーンから水を取り出し目だけ洗う。はー、泥だらけのぐっちゃぐっちゃはキツい!


 センサーに切り替えたここあちゃんがなにかを発見。


「なにを見たの?」

「山の中に入っていくコボルト集団と、それを守るウルフコボルト。撤退だな」

「だね。ここだけじゃないでしょう」


 素直に戻って報告。


「うーん、巣にウルフコボルトですか。周辺にも巣があると見て良いでしょうね。ウルフコボルトはオオカミが立ったモンスター。そのパワー、そのスタミナ、パワー、その敏捷力はとても高く、パワーアーマーがあっても死ぬ相手ですねえ」

「領主に救援要請ですよね。村の側までコボルトが来ているなんて」

「そうですね、討伐しないとここ以外の農村にも被害が及ぶ可能性があります」


 事情を話して村を離れ、街道を行く。ぐっちゃぐっちゃの道だけど、フィーに頑張ってもらうしかない。8輪駆動でも動かないんじゃフィーが歩くしかないよね。「りた「だめ」えーん。 。゚(゚´ω‘゚)゚。 」



「昨日今日と雨降りかあ。これじゃ乾かないですね。ぬかるみがさらに深くなりそう」

「誰も通らないからフィーの鞍に乗っていなくても良いのが利点だな」

「フィーも雨の中歩きたくないよぉ。雨宿りさせてあげたい」

「試練だ。鞭を打て」


 体高210センチメートルのフィーも、深さ40センチまで広がったぬかるみには対抗できず、街道にある休息所で休むことになったよ。

 乾くまでは夜間しか歩けないね。


「夜間でも40センチもあるんじゃ固まりきらないでしょうねえ」

「つまりこの休息所から動けないってことですか。立て付けが悪くて風が入ってくる、凄い寒い所ですよここ」

「見張り以外は亜空間に入っちゃえばいいだろ馬鹿が」

「なんだとこらやんのか」

「なめんなよおら」

「休息所は壊さないでくださいね。資材がないし、板は現状の寸胴鍋で作り出せる長さじゃないです」


 ぼこすかぼこすか。

 おらー肉弾戦だ!

 ボクだって右腕はかなりの強さなんだ!

 近接格闘の修行してないんじゃ、なあ!

 ぐ、うう


「勝った」

「次は、覚え、てろよ」

「右ボディーブローからの左ボディストレートだ、苦しくて動けなかろう」

「息を、カット、苦し、すぎる」


 ほどほどのところでルカさんがヒーリング。ミド・ケアで楽になったみたいだ。


「さて、愛し合いも終わったしここで休む準備して良いかしら。焚き火を起こしてフィーには巨大オオカミくらいのサイズになってここで寝てもらうわ。見張りの人と交差で身を守るようにね」


 キャンプの準備をする。


 まずは火起こしかな。いや、まずは石油ファンヒーターだ。無限電源と石油ファンヒーターを持ち出しスイッチを付ける。数分で暖かい空気に包まれる休息所。


「やっぱすげーなこの技術。最新型アンドロイドでもこれはできない。所長の能力はすごすぎる」

「そういえば3000歳を超えているのに最新型なんだよね、なんで?」

「今更聞くのか。それくらいの時代に製造が禁止されたんだ。あまりにも人間よりも高性能すぎるってな。人間はサイボーグになれば良いのになあ」

「サイボーグにならないと追いつけないんじゃ、人は怖がるかもしれないわねえ」


 ミカさんの気持ちはわかるかもしれない。追いつけないほどすごい存在は恐怖の対象になるかもしれない。


「でも今でも日本銀河帝国ならアンドロイド作ってるはずだよ。多目的や戦闘用じゃない、一般アンドロイドとして」

「面倒なことは機械に任せるのは、産業革命から変わってないかもしれませんねえ」

「へ、産業革命ってなんですか?」

「お前みたいな馬鹿にはわからない話」

「なんだとや……らない。さすがにファンヒーター壊したくない」

「我慢ができる子は良い子ね、よしよし」


 でへへ、ミカさんから撫でられた。最近のミカさんは色っぽいからな。撫でられると嬉しい。良いだろここあ。

 ぐぬぬ、というここあの顔を見て満足した私は火起こしに挑むのであった。

 調理用に必要なんだよね。無限コンロは普通のコンロサイズなので、この狭い休息所に置くのはちょっと大きいかなー……。

 あ、フィーの中にある無限コンロ使えばいっか。虫除けのためにいぶす程度で燃やそう。虫や一般生物は火の香り嫌うからね。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る